第6話

6話_鬼ごっこ ⑶
931
2021/02/03 10:01
「……よし、カレハさんはいない…」
龍弥が確認すると、私達は廊下を静かに走って1番近い階段を駆け上がった。

それが最速で教室につける方法でもある。

でも…
「ねえ、龍弥、何で職員室に行かないの?
先生とか、人がいるかもしれないじゃん」

「もう行ったんだよ、悪戯放送が流れたと思って。」
でも誰もいなかった、と龍弥は続けた。
「俺の考えだと、この学校は別の次元か何かなんだ。
カレハさんは放送すると共にそこに俺達を飛ばした、
多分だけどな」
そう説明する龍弥に気を取られていた。
「見つけたー!!」
楽しそうな女の子の声が聞こえて振り向く。
階段の下には、長い白髪に金の目、
そして小さな身体にこの学校の物ではない制服を身に纏ってまとっていた。
「走れ!!」
龍弥の慌てた声と共に、3人で走りだす。
後ろから笑い声が聞こえてきて、正直かなり怖い。
「捕まえ__」
カレハさんが言いかけたところで私達は…

教室に滑り込んだ。
「ギリギリ、セーフ…!」
結昂が息を切らしながら言う。
すると教室の扉がぴしゃりと閉まり、

カレハさんはいつのまにか教室の中にいて
教卓の前に立っていた。
「おめでとう、凄いね!
まさか逃げ切られちゃうなんて思わなかった!」
カレハさんが笑顔で拍手する。
ホントに逃げ切ったんだ…

そう思うと緊張が解けて、かくっと膝が折れ座り込んでしまう。
結昂がよしよしと私の頭を撫でた。
「…と・こ・ろ・で、
最近皆アタシの噂知ってるんでしょ?」
そう言いながら笑顔は崩さずに私達の方に近づいてくるカレハさん。
「何が知りたい?
1人1個だけ、アタシが教えてあげちゃうよ!」
それを聞くと龍弥はすぐに言った。
「泗芫、泗芫は何処どこだ?」
カレハさんはうーん、と唸り
顎に人差し指を当てる。
「泗芫くんって1番最近のお友達だよね…
もしかして帰してほしくて来たの?」

「当たり前だろ」
なら、
カレハさんがそう言うと龍弥は少しだけ身構えた。

カレハさんはニッコリと笑って言う。
「良いよ!帰してあげる!」

「!?ほ、ホント…か?」

「アタシ、嘘つかない!
元の世界に帰ったら、泗芫くんが捕まった玄関前に行ってみて」
ふわりと微笑んでカレハさんは言った。
龍弥は嬉しそうに頷く。
「次は私」
結昂が1歩前に出る。
そして迷う事無く口を開いた。
「『有亡中学校最後の不思議』について教えて」
有亡中学校最後の不思議……?
それを聞くとカレハさんは驚いた顔をした。
その後真剣な顔をして少し悩むと結昂に向き直る。
「それは〜…簡単に教えたらアタシアレだからなー…」

「駄目なわけ?
何でも教えてくれるんでしょう?」
結昂が少しカレハさんを責める。
またうんうんと悩むと、
カレハさんは良い事を思いついた様な顔でぽん、と小さな手を叩いた。
「有亡中学校の、他の不思議全部解いたら教えてあげる!」
それを聞くと結昂は面倒くさそうに小さな溜息をついた。
私には話がさっぱり分からない。
それを悟ったのか、結昂は私の肩を叩いて
「私があなたに知ってもらいたかった事はまだ知れないって事。」

「……え…」
何それぇええ!?
「で、私1人じゃ残りの有亡中学校の不思議解けないと思うからさ……
あなた、手伝ってくれない…?」
苦笑しながら言う結昂。
「え、
……えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?」
私の大声に耳を塞ぐ龍弥と結昂。

結局引き受けてしまったのだが、何故かと言われるとそれは親友だから、と言うしか無かった。

プリ小説オーディオドラマ