第8話

8話_少女
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2021/02/23 10:11
翌朝。
私、結昂、龍弥、そして泗芫くん。
4人で教室に入ると、博多はとっくに来ていて、
座って机に力なく体重を預け、項垂れていた。
「どうしたんだ?博多。そんな元気無いの、珍しいな。」

「幻聴聞こえた、ヤベーな俺…」

「幻聴たあ失礼だな!」
そう言ってすぱんっ、と博多の頭を叩く泗芫くん。
頭を叩かれた博多は、「いて…」と元気無く呟く呟いたけど、すぐに上半身を起こして泗芫くんを見た。
「…ホンモノ?」

「それ以外何があるんだよ。」
にっと笑う泗芫くんを、博多はすぐに抱きしめた。
「お前何処ドコ行ってたんだよ、馬鹿が」

「馬鹿はお前だよバーカ。
電話掛けたのにスルーばっかしやがって。」

「それは…マジで悪い」

「別に良いけど」
笑う泗芫くんと、泣く博多。
2人の感動の再会だった。
号泣している博多を見て、クラスの皆が驚いたのは言うまでも無いんだけど…まあ、それはまた別のお話。
その日の休み時間、博多と泗芫はずっと話していた。
教室から出て、2人で廊下の隅っこで。
「そういえば泗芫。
カレハさんに捕まった後、お前どうなってたんだ?」
ふと気になった博多は首を傾げた。
それに泗芫は苦笑し答える。
「覚えて無いんだよ、捕まった後のこと。
それ以外は覚えてるんだけどな〜」

「そっか。」
それだけ言うと博多はまた話し始めた。
でな、と笑顔で楽しそうに昨日、一昨日のテレビの話やゲームをクリアした自慢話をペラペラと喋っていく。

泗芫も楽しそうに頷いて、話を聞いていた。
心の中で、謝罪しながら。
(ごめんな。嘘ついて…)
きっといつか話すから。
話して良いのか、分からないけれど。
否、それより前に博多なら知ってしまうかもしれない。
それでも__
学校内にチャイムが響き渡ると、2人は急いで教室に戻った。

今日は一緒に帰ろうな、と約束しながら。
「…………。」
西校舎4階、とある廊下。
そこには、少女がいた。
中学生の様だが、背は少し高い方で、今そこに通った男子と同じくらいだろう。
その男子に、ふわりと優しく微笑む。

男子はそんな少女に気がづかなかったのか、スタスタと歩いて行った。
少女はそんな事気にも止めなかったかの様に、笑みを崩し何とも言えぬ顔になると窓の外を見る。

その視線の先には東校舎__2年E組の教室が有った。
カレハさんから話を聞いていた、あなたと結昂の姿が目に入ると少し目を細める。
少し視線をズラした所にいた生徒の1人を見て、今度は目を見開いた。
見つけた…

少女は微かにそう呟いた。
カレハさんから聞いていた事など忘れてしまう程に、彼女はその人に釘付けになっていた。

窓から入る風が彼女の黒く長い髪を撫でつける。
その美しい顔には、不気味な笑みが浮かんでいた。

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