「あの…そんな急に、言われても……」
「そ、そうだよね!ごめんね!
それじゃあ、信じられないかもしれないけど…」
私は一切の事情を流奈ちゃんに説明した。
流奈ちゃんは表情を変える事無く聞いている。
説明をし終わると、流奈ちゃんは成る程と呟いた。
「それで、私に協力してほしい、というわけですか。」
「そう!
お願いできないかな……?」
「……良いですよ。
丁度暇を持て余していたので。」
それを聞くと龍弥はパッと嬉しそうな顔をして、結昂はさも当然だと言うような表情をしていた。
「ありがとう、流奈ちゃん!」
「…いえ。
それで、私に何を聞きたいのですか?」
「話の流れで分かるでしょ!
天使の死神よ、天使の死神!」
早く教えなさいよ、と結昂が流奈ちゃんを急かす。
龍弥がまあまあと落ち着かせながらちらっと流奈ちゃんを見た。
「……天使の死神。」
そう呟くと、流奈ちゃんは話し始めた。
本を朗読するみたいに、決まった台詞を吐き出すように。
「学校内は基本的に活気で溢れている。
だが、4階西校舎内に1ヶ所だけ、人通りが少なく、1日に2、3人程度しか人が通らない廊下がある。
そこを歩いているとごく稀に、目を疑うような美人の生徒を見かける。
美貌に惑わされその生徒に話しかけると、きっ、と鬼の様な形相で睨まれ、何かを言われながら窓から突き落とされて死んでしまう。
だが、死体が見つかる事は無く、いつも大きな音がした直後に現場に行ってもそこには何も無い。
その女性の美しさから天使と、また、突き落とされ死んでしまうと言う点から死神と。
その2つから、天使の死神と呼ばれている。」
「……なんか…思ってたより怖えな」
もっと可愛いもんかと思ってた、なんて言いながら龍弥が苦笑する。
それを聞いた結昂は溜息をついて、流奈ちゃんに問う。
「突き落とされる人に共通点とかあるの?」
流奈ちゃんは少し考える仕草をした後、たしか、と話す。
「突き落とされるのは男の人だけ、だったと思います。
どんな人が落とされるのかは知らないです…」
「使えないわね…」
「結昂ちゃん??」
まさかの結昂は嫌いな人には態度に出すタイプだったのか……怖い、怖いよ結昂……
そんな結昂を気にする様子も無く流奈ちゃんは、話は終わったとでも言う様に本を読むのに戻った。
*
「結構流奈が情報くれたな」
「たしかに、思った以上の収穫……!!」
1時間目が終わり、休み時間の時に私達3人は集まって話していた。
結昂は紙に先程の話をまとめてくれている。
「男子しか突き落とされない……ねえ
よし、昼休みに龍弥と…ついでに博多と泗芫も連れて行きましょ」
結昂の提案に龍弥が頷く。
そして昼休み。
私、結昂、龍弥、博多、泗芫くんの5人は、4階の西校舎へと向かった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。