目黒side
【冷酷王子】最近俺についたあだ名。もちろん裏でだけね、表ではちゃんとジャニーズのアイドルやらせてもらってますよ。
だって皆みんなイケメンですねとか言ってさ、ベタベタ触ってきたりして気持ち悪い。俺は全然興味なんてないのに。
少し近くにいられると、それがスタッフだろうが女優だろうがなんだろうが関係なく写真を撮られてしまう時代。
プライベートなんてほとんど無くて、週刊誌の人を探すのがとても上手くなってしまった今日この頃だ。
それでも今の仕事は好きだ。元々ダンスも好きだったし人の前に立つことは好きだったから、俺には合ってる職業だと思う。
ただこんなにも女の人が苦手だと感じてしまったのは、この仕事に就いたからだとも思う。仕方ないけど、ゾワゾワして仕方ない。
外見だけしか見ない奴らが気持ち悪くて、でも外見で売ってる手前何も言えない。そんな俺の中での葛藤があって、俺はこんな態度をとるしか無くなった。
メンバーは俺の事を昔から分かってくれてるから笑って出迎えてくれる。メンバーとの楽屋だけが、今では俺が俺でいれる場所になった。
ここ最近仕事を辞めようかと考えているが、それを相談しようとは思ってない。皆やっと手にしたデビューだしさ。
そんな事ないもんと言いながらラウールは俺に抱きついて、ちゃんと帰らないでよと言いながら撮影現場へと向かった。
終わったらそのまま帰っちゃおうかなと思っていたが、ラウールが俺を帰してくれるとは思っていない。
行くからねと手を引かれて仕方なく、3人にお疲れ様でしたと伝えて外に出た。ご飯に行くと思ったけどただ散歩する時間が流れる。
一応変装はしてるけど、2人とも高身長だから直ぐにバレるわな。ラウールくんじゃんとかめめだーと、本当に声が聞こえてくる。
ちょっと道逸れようかって言われて手を引かれ、そのまま何も考えずに歩くとだだっ広い公園に着いていた。
夕日が落ちてきていてなんかすごく綺麗。こんな時間だからもう子供を連れた人たちも帰っていて、人はあまりいない。
なんか綺麗だねって言いながらラウールは携帯で写真を撮っている。確かに、すごい綺麗だしずっと見ていたいって思わされるわ。
そう言われて、やっぱり皆にはバレちゃってたんだろうなって。心配させただろうけど、言わない優しさも感じてたから。
ラウールはやったーってまた俺に抱きついてきて、僕の相談事は無いから安心してねって言いながら先を歩いていく。
末っ子のくせに1番身長大きくなっちゃってさ。めちゃくちゃ可愛いから別にいいけど、マジで隣歩きたくないくらいスタイルお化けなんだよな。
そんな事を思ってるとも知らずに、ラウールはずかずかと公園の中に入っていく。中には池もあって、夕日が水に映し出されていて綺麗。
俺も携帯で写真を撮ってみるけど、なんか上手くいかないな。近くに花とかも沢山咲いてて、撮ってみるけどいまいち。
元々写真なんて撮らないし、撮られるほうが多いから考えてもなかったのかもしれないな。仕方ないかもしれないけど。
そうして池の周りをゆっくり散歩していると、ガチのカメラマンが持っているようなカメラを持って池や花を撮ってる男の人。
俺はバレたくない一心で被っていた帽子を深く被り直した。でもラウールはその人のカメラを覗き込んで、すごーいって話しかけちゃってるし。
おいって注意したんだけど、その人はそうやろーって言いながらラウールに普通に笑顔。見てええよって言われて、すみませんと言いながらその人のカメラを覗かせてもらった。
確かにめちゃくちゃ綺麗に撮れてるわ。カメラだからってのもあるんだろうけど、この人の技術の問題なんだろうな。
関西弁を話す人は俺の目を見ても何も態度を変えてこなかった。なんかそれが凄く気持ちがいいって言うか、凄く嬉しかった。
ラウールはその人に携帯での撮り方を教わってて、俺もその人の取り方講座を聞かせてもらって撮ってみたり。
そのお兄さんが俺の携帯で撮ってくれたりした。その人が撮ってくれた写真は、俺のなんか比べ物にならないくらい綺麗だった。
普段写真とかちゃんと見てなかったけど、カメラいいかもって思わさせられる。カメラに興味持ちましたって言ったら、嬉しいなって凄く可愛い笑顔を向けてきてくれた。
そのお兄さんは風景専門のカメラマンをしているらしく、インスタグラムをしているらしくてそのアカウントを教えてくれた。
カメラの事聞きたかったらDMしてもええからなって言って、その人は仕事があるといって行ってしまった。
思いがけずひとつ物に興味を示せた俺は、なんだかやる気が出てきた気がする。ラウールにありがとうと言いながら、俺は目の前の風景よりも撮って貰った写真を眺めていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!