第15話

⚖️:thirteen
219
2023/06/09 13:43







 悔しかったらお前が抗え。 



 コイツらに期待するな。
 置かれた場所を嘆くな、自分で何とかしろ。 








   「……ッッ」

   一人の少年の前で男はそう言う。








   男の持つ銃の口からは、煙が立っていた。

   少年の名はイツキ。











   将来、マイと出会うであろう男だ。

   この時のイツキには今のような冷静さはなく、

   その瞳からは止めどなく涙が零れ落ちていった。









 世の不条理さと親の無力さを恨むんだな。 





   男はそう言って外へと出て行った。

   「お前は男だろ?」

   そう言い、イツキの頭を人撫でしてから。






   ガチャとドアの閉まる音がして、

   部屋にはイツキだけが残される。




   自由になったイツキは、

   両親の元へすぐさま駆け寄った。












   「母さんッ、とお、さん…!」







   先程まで親であった物体に走る、

   触れた部分の冷たさにゾッ とした。







   それから全く、正気は感じられなかった。

   死んでる…幼いイツキでも理解するのは容易い事。











   以前、両親は小さな酒屋を経営していた。

   父が料理を作り、

   母がそれを客の元へと運ぶ。







   小さい店ながらも、幸せな毎日だった。











   でも、それも簡単に倒産し、借金だけが残る。

   返済の期限に追われ、助けを求めた所が運の尽き。









   やがて、暴力団から命を狙われ、

   挙げ句の果てがこれだ。










   「這い上がってやる…もう誰にも頼らない。」












   惨めに泣いていた少年はもう居ない。

   彼は、世に決別した。









   親の亡骸を残し、イツキは外へ向かった。

   両親を殺したあの男を追って。







   逆襲しようとか、

   敵討ちとかそんな考えは無かった。

   ただ純粋に__。







   己の手で、誰かの幸せを壊してやろう、

   そう子供ながらに願ってしまっていた。











   差し込む朝日はこれからのイツキの

   歩む道を照らしているかの様。












   否___。

   それ程、世の中甘くないと嘲笑している様にも取れる。












   イツキは一人ではなくなった。

   男の元へ辿り着いた時から。
















   仲間が出来た。

   辿り着いた場所で、男は笑った。












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