第7話

⚖️:six
335
2023/06/09 09:12







マイ
 ……頂きます。 







   土色に変色し始めた女に手を合わせ、

   マイはその場を後にした。


   手を合わせる際には「頂きます」と、

   言葉を添えて。










   いつも最期にはこれを言うのだ。

   最低限の礼だから。









   別にこの女に敬意を払うとか、

   側からそんな気は無いのだけれど。



















   それから3日後。

   マイは都内の一等地に佇む、

   一軒のビルの前で足を止めた。








   今日は先日の依頼を「 清算 」する日だからだ。








女性
 どちら様でしょうか? 







   押したインターフォンから女性の声が聞こえる。

   受付なのだろう。






   マイは偽名を名乗り、

   社長に用があるとだけ伝えた。






女性
 少々お待ち下さい。 






   その言葉の後、

   目の前のドアは音を立てて開いた。


   案内板を見ると、

   社長室はこのビルの5階にあるとの事だった。











   __コンコン








   社長室のドアを叩く。

   いかにも高そうなドアの奥から、

   低めの声がした。









   「 入っても構わないよ、
   話は受付の者から聞いているからね 」









   その言葉を聞き、

   マイは社長室へと踏み入れた。










女性
 え、何この子? 





女性
 トシちゃ〜ん、一体どうしたのぉ? 








   そこには社長を名乗る男と、
 
   二人の女がいた。

   露出の高い服を着て、足を男に

   組ませるようにして座っている。




   見ているだけで気持ち悪くなる。

   むせ返るような強い香水の匂いに

   耐えながらマイは「 ガイドライン 」

   に沿って話し始めた。









マイ
 先日は弊社のご利用、
 誠にありがとうございました。 
 「 矢崎やざき 俊哉としや 」様。 







   そう言ってマイはバッグの中から

   冷凍された「 もの商品 」を取り出した。


   それを床に放り投げ、再び問う。











   「 ゴトン 」と鈍い音がして女たちが

   「 キャアッ 」と悲鳴を次々に上げた。

   立ち上がった女に視界をはばまれ、

   矢崎は困惑した。






   何が起こっているのだろうか、と。








マイ
 ご確認をお願い致します。 





マイ
 これが貴方が依頼された

「 橋本はしもと 真波まなみ 」

 様で合っていますでしょうか?







   その瞬間、重力に逆らえなくなった

   「 商品 」が向きを変えた。

   上向きだった首が、

   ゆっくりと下へ向き始める。









   力が抜けてしまった女たちは座り込んで、

   阻まれていた矢崎の視界は急に開ける。










   向きを変えた橋本 真波の生首と

   目が合った矢崎からは、

   先程の笑みなど、とうに消えていた。













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