第13話

⚖️:eleven
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2023/06/09 13:33












イツキ
 死に絶えた者のことは忘れろ。 








   イツキはそう1人の少女の前で言った。

   涙の跡が残る少女は赤く色付いた

   瞳でイツキを見上げる。









   自分に何かを求められている様な気がした。

   助けを求めているのだろうか。

   親や兄弟の身を案じているのだろうか。





   

   何にせよ、自分には関係の無い事だ。















   __これだから子供は嫌いなのだ。

   弱くて、脆くて、誰かに頼っていないと

   生きて行けないから。












   失った時に何も出来る術が無いから。

   まるで、「 あの時 」の自分の様だ。















   無力な自分を恨んでいた幼少期と。











イツキ
 お前の死んだ父母は、兄弟は、 
 今のお前に何が出来得る? 
 何も出来ないだろう?

イツキ
 世の中は生きている者の為に出来ている。 
 死んだ奴はそこで終わりだ。 

イツキ
 亡き者に縋っても何の得にもならない。 
 忘れろ、お前は1人なんだ。 






   驚いた事に、その言葉を最後に

   少女は泣くのを止めた。

   目が見開かれていた。

  

   溢れていたものを手で乱暴に拭い取る。







 
   泣き腫らした瞳、擦れて赤くなった頬。

   その顔には小さな決心が滲んでいた。

   少女の中で何かが変わったのだと、イツキは確信した。










イツキ
 良い子だ、俺が育ててやる。 
 生きて行く術を、この世の不条理さも全て。 






   齢6で両親を亡くし、

   泣き腫らしていた少女はもう居ない。

   彼女は決意したのだ、










   1人で生きて行くと、イツキに従うと。







   __何があったとしても。











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