イツキはそう1人の少女の前で言った。
涙の跡が残る少女は赤く色付いた
瞳でイツキを見上げる。
自分に何かを求められている様な気がした。
助けを求めているのだろうか。
親や兄弟の身を案じているのだろうか。
何にせよ、自分には関係の無い事だ。
__これだから子供は嫌いなのだ。
弱くて、脆くて、誰かに頼っていないと
生きて行けないから。
失った時に何も出来る術が無いから。
まるで、「 あの時 」の自分の様だ。
無力な自分を恨んでいた幼少期と。
驚いた事に、その言葉を最後に
少女は泣くのを止めた。
目が見開かれていた。
溢れていたものを手で乱暴に拭い取る。
泣き腫らした瞳、擦れて赤くなった頬。
その顔には小さな決心が滲んでいた。
少女の中で何かが変わったのだと、イツキは確信した。
齢6で両親を亡くし、
泣き腫らしていた少女はもう居ない。
彼女は決意したのだ、
1人で生きて行くと、イツキに従うと。
__何があったとしても。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。