第80話

漆拾捌
2,345
2021/01/12 11:10
ずっと、疑問に思っていた




お館様が、何故私を助けたのか




特に産屋敷家と関係の見られない小さな神社




そこに住む処刑寸前の少女を




それは、継国家の血をひいているから




調べていてわかったのは、炭治郎の耳飾り




あれは、継国縁壱本人の物だということ




ヒノカミ神楽……もとい、日の呼吸も同じくだ




だったら………私にも日の呼吸が使えないかな




あの耳飾り、細胞の奥底に眠る記憶




何かが呼び覚まされるような感覚────




その耳飾りと、見慣れた緑と黒の市松模様




突如、目の前に現れたのだ


あなた

たん……じろ…………

竈門炭治郎
竈門炭治郎
遅くなってすみません
右目が潰れ、跡形もなくなった顔をした炭治郎




鬼舞辻が私に伸ばした腕を斬り落としたのだ


鬼舞辻無惨
鬼舞辻無惨
………また貴様か
竈門炭治郎
竈門炭治郎
雨椿さん、手当に戻ってください!
あなた

……大丈夫

あなた

だって、鬼だから

竈門炭治郎
竈門炭治郎
えっ……………?治って……る……
あなた

私は、あんたを許さない。
皆を………こんな目に遭わせて…

あなた

母さんも雫砺さんも殺してや……
のうのうと生きているあんたが憎い

先程の攻撃で、他の柱は全員大怪我だ




腕や足が既に斬られてしまった人がほとんどだ




自然と怒りが湧く




血液が沸騰するような感覚が、じわじわと指先まで広がってゆく




鼓動が早くなり、呼吸がまだらになる




心臓が痛いほど脈打つ




憎い、嫌い、いらない………




負の感情が腹の奥底から湧き、溜まっていく




酸欠になったのだろうか…………視界がだんだん狭まる









炭治郎目線────
竈門炭治郎
竈門炭治郎
……雨椿さん…………?
あなた

…………………

……駄目だ…匂いが分からない




下を向いたまま、雨椿さんは動かない




無惨はもちろん、それを逃さない




彼女の頸元に、鋭い管の先の刃が刺さろうとする


竈門炭治郎
竈門炭治郎
雨椿さん!!!
シュパッ!




何かが空を切る音




先程の管が、空を舞う




ゆらりと顔をあげた雨椿さんの表情




憎しみに支配され、冷めた目




そして………




背筋が凍るような、鮮血のような瞳に




縦に伸びた瞳孔が見えた




爪も、小刀のように鋭く伸びていた


竈門炭治郎
竈門炭治郎
雨椿さん……!!
駄目だ!!目を覚ましてくださっ…!
あなた

…………殺ス…殺シテヤル……!!

ああ………我を失ってしまっている……




鬼化には、体力がかなり消耗されるらしい




今の状態の雨椿さんじゃ………!


竈門炭治郎
竈門炭治郎
どうしたらっ……

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