ずっと、疑問に思っていた
お館様が、何故私を助けたのか
特に産屋敷家と関係の見られない小さな神社
そこに住む処刑寸前の少女を
それは、継国家の血をひいているから
調べていてわかったのは、炭治郎の耳飾り
あれは、継国縁壱本人の物だということ
ヒノカミ神楽……もとい、日の呼吸も同じくだ
だったら………私にも日の呼吸が使えないかな
あの耳飾り、細胞の奥底に眠る記憶
何かが呼び覚まされるような感覚────
その耳飾りと、見慣れた緑と黒の市松模様
突如、目の前に現れたのだ
右目が潰れ、跡形もなくなった顔をした炭治郎
鬼舞辻が私に伸ばした腕を斬り落としたのだ
先程の攻撃で、他の柱は全員大怪我だ
腕や足が既に斬られてしまった人がほとんどだ
自然と怒りが湧く
血液が沸騰するような感覚が、じわじわと指先まで広がってゆく
鼓動が早くなり、呼吸がまだらになる
心臓が痛いほど脈打つ
憎い、嫌い、いらない………
負の感情が腹の奥底から湧き、溜まっていく
酸欠になったのだろうか…………視界がだんだん狭まる
炭治郎目線────
……駄目だ…匂いが分からない
下を向いたまま、雨椿さんは動かない
無惨はもちろん、それを逃さない
彼女の頸元に、鋭い管の先の刃が刺さろうとする
シュパッ!
何かが空を切る音
先程の管が、空を舞う
ゆらりと顔をあげた雨椿さんの表情
憎しみに支配され、冷めた目
そして………
背筋が凍るような、鮮血のような瞳に
縦に伸びた瞳孔が見えた
爪も、小刀のように鋭く伸びていた
ああ………我を失ってしまっている……
鬼化には、体力がかなり消耗されるらしい
今の状態の雨椿さんじゃ………!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!