第85話

最終話
3,223
2021/01/17 04:32
不死川実弥
不死川実弥
ぅ………
目を覚ます




そこは見慣れた天井




………蝶屋敷だ




体の動きにくさから、そこらに包帯が巻かれているのだろう




起き上がると、窓から陽が差しているのが見える



不死川実弥
不死川実弥
(…………終わったのか……)
大きすぎる犠牲を出して────




気がつけば、泣いていた




はたはたと、目からこぼれ落ちる




"ありがとう"────




あなたの最期の言葉が蘇る




幼い頃と同じ笑顔で、あいつは行ってしまった




いや…………死んだ……のか…………




玄弥も………有一郎も……無一郎も………




悲鳴嶼さんも……甘露寺も……伊黒も………




あなたも………


不死川実弥
不死川実弥
くそっ………んでっ……だよ………
栗花落カナヲ
栗花落カナヲ
あのっ………不死川…さん……
不死川実弥
不死川実弥
っ…………栗花落か……
栗花落カナヲ
栗花落カナヲ
これ………
栗花落が差し出してきたのは、何かを包んだ布




大人の腕の半分程の長さだ




受け取ると、何やら重い




布を開くと…………


不死川実弥
不死川実弥
っ………………あいつの……
栗花落カナヲ
栗花落カナヲ
血で汚れてるけど……刀と御札です
栗花落カナヲ
栗花落カナヲ
終わった後、回収しました…………
不死川さんに……渡そうと思って
いつかの金盞花の飾りも、ちゃんとついている




折れて錆びているが、白い刀身が分かる


不死川実弥
不死川実弥
…………ああ……ありがとなァ
数ヶ月後────


俺は、冨岡と墓地に来ていた




一般隊士から歴代の産屋敷家当主が眠る墓地




もちろん、柱の面々も眠っている




あなたは、血液しか残らなかったが




遺体の代わりに、あの御札を墓に入れた




陽の光のような色の金盞花を片手に持っていた


冨岡義勇
冨岡義勇
…………不死川
不死川実弥
不死川実弥
あ?
冨岡義勇
冨岡義勇
俺は向こうの墓石の手入れをして来る
不死川実弥
不死川実弥
はっ!?おい……!
不死川実弥
不死川実弥
(行っちまったぞあいつ………
んでまた勝手なこ……と…………)
ふと見ると、あなたの墓の前だった




あいつ……それに気づいて………




冨岡に気ィ使われるとか………




と、以前の自分なら思っていただろう




今は素直に、感謝の言葉が出てくる




金盞花を添え、手を合わせる


不死川実弥
不死川実弥
最近来れなくて悪ぃな。
どうせお前のことだ……"遅い"ってむくれてんだろ
不死川実弥
不死川実弥
………あとな、鬼殺隊は解散したぞ。
鬼がいなくなった証拠だ
不死川実弥
不死川実弥
最期まで、お前は間違いなく"柱"だった。
お前がいなけりゃ、死者はもっと多かった
不死川実弥
不死川実弥
………俺は、あと三年か四年したらそっち行ってやるからな
不死川実弥
不死川実弥
次会ったら…………絶対に伝えるからな…
不死川実弥
不死川実弥
……じゃあな
立ち上がると、風がふわりと吹く




あなたの墓の後ろにあるしだれ柳が揺れる




そう、あなたの屋敷の庭にあった木……




"えにし"だ




カサカサと音が聞こえる




その音の奥で、あなたの声が聞こえた気がした




"すぐこっち来たら、話聞いてやらないよ?"




そう、くすくす笑うあなたが目に浮かんだ


不死川実弥
不死川実弥
………ふっ……
不死川実弥
不死川実弥
分かってらァ
背を向けて、歩き出す




冨岡と合流して、他の柱やお館様の所も行かねえと




もう、背中には"殺"の文字は無かった────



















あなた

『……分かってるなら、いいよ』

あなた

『またね……実弥………
私、何十年でも待ってるから』











最後まで見ていただき、ありがとうございました


以上で、大正編は完結致しました。


大正編……ということは、現代編も予定しています!


もう少し先になりますが、現代編もどうぞお楽しみにください!


それから最後の挿絵なのですが……


私が考えて調べまくって描いたので、色んな意味を込めてあります


気になる方はコメント欄へ!


それから現代編の題名もどんなのがいいか……


アイデアがありましたらまた教えてください


感想なんかもお待ちしています!


以上、作者のまりあでした!

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