実弥目線────
鬼舞辻に串刺しにされたまま、頸をやられた
あなたの小さな悲鳴の後
カシャン────
乾いた音で、あなたの折れた刀が手から滑り落ちた
それと同時に、体からくたっと力が抜けた
ちらりと見えたあいつの顔────
瞳は濁り、何も映していない
鬼舞辻は、そのまま手に着いている口で、あなたを食べ始めた
血が落ち、骨が砕ける音だけが響く
残ったのは、血塗れの刀と御札だけだ
無惨目線────
ついに手に入れた……!
青い彼岸花を!!
これで私は……!
バクン
『引っかかったね』
『私は、いつ克服するかなんて言ってないんだけどね』
『このままじゃ、あんたは死なないでしょ?
つまり生まれ変わらないでしょ』
『青い彼岸花は、あんたを早く殺して早く来世が来て、それからだよ』
『少なくとも、今世では克服できない』
鬼舞辻は、あなたのおかげでだいぶ弱っていた
だから、怪我をした状態でも持ちこたえられたのだ
だけど………
いくら弱っていると言っても、相手は最強の鬼
先程の傷の影響もあり、致命傷を負う者もいた
最後は、何とか鬼舞辻を抑え込むことに成功した
そう、長い長い夜が明けたのだった────
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!