もう、何も考えられなかった
ただひたすらに体を突き動かす
もちろんその間何度も怪我をした
人間なら死んでいてもおかしくない
だけど、頸を落とされない限り死なない
突然、死角から空を切る音がした
腕を斬り落とされてしまった
すぐに再生する
左腕の肘から下は袖が無い状態だ
私は、鬼舞辻の胴体を狙う
炭治郎曰く、脳と心臓がそこらにあるらしい
呼吸を駆使し、"透き通る世界"に何とか入り込む
脳をひとつ破壊できたようだ
鬼舞辻の血飛沫を浴びる
その瞬間、体の力が全て抜け落ちた
炭治郎は、ひたすらヒノカミ神楽を繋げている
今炭治郎を止めるわけにはいかない
そろそろ柱の面々も戻ってきてもらわないと困る
せめて、今動ける柱
炭治郎にとっての切り札である私が何とかしないと
私は、今回上弦の鬼を倒していない
有一郎や無一郎、そして玄弥
彼らは、間違いなく武功を立てた、名誉ある死かもしれない
けど私は?
ただの無駄死にだ
役に立たないと……
せめて、こいつに致命傷を負わせなければ
そう思ってからは早かった
立ち上がり、懐から御札を取り出した
色褪せ、くしゃくしゃになっているけど
間違いなく、"色"が見える
"色"は消えていない
まだ使える……!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。