第81話

漆拾玖
2,587
2021/01/13 12:26
もう、何も考えられなかった




ただひたすらに体を突き動かす




もちろんその間何度も怪我をした




人間なら死んでいてもおかしくない




だけど、頸を落とされない限り死なない




突然、死角から空を切る音がした




腕を斬り落とされてしまった


竈門炭治郎
竈門炭治郎
雨椿さん!!
あなた

腕斬っても意味ねえっての

すぐに再生する




左腕の肘から下は袖が無い状態だ




私は、鬼舞辻の胴体を狙う




炭治郎曰く、脳と心臓がそこらにあるらしい




呼吸を駆使し、"透き通る世界"に何とか入り込む




脳をひとつ破壊できたようだ




鬼舞辻の血飛沫を浴びる




その瞬間、体の力が全て抜け落ちた


あなた

はぁっ……はぁっ……

鬼舞辻無惨
鬼舞辻無惨
っ…………?
あなた

(爪が………片方戻ってる……?)

あなた

(まさか鬼化が解けた……?
よりによって今………!?何で…!)

鬼舞辻無惨
鬼舞辻無惨
………なるほど、珠代の薬か
あなた

珠代……さん…の………?

鬼舞辻無惨
鬼舞辻無惨
私の体には珠代の薬が混じった。
人間に戻る薬……私は克服したが、お前は無理だったようだ
あなた

ゾワッ

あなた

(あ………これは…死んだかも……)

雫砺(しずれ)
雫砺(しずれ)
『本当に死ぬと思った時だけね』
あなた

(……まだ残ってる……最後の手札)

炭治郎は、ひたすらヒノカミ神楽を繋げている




今炭治郎を止めるわけにはいかない




そろそろ柱の面々も戻ってきてもらわないと困る




せめて、今動ける柱




炭治郎にとっての切り札である私が何とかしないと




私は、今回上弦の鬼を倒していない




有一郎や無一郎、そして玄弥




彼らは、間違いなく武功を立てた、名誉ある死かもしれない




けど私は?




ただの無駄死にだ




役に立たないと……




せめて、こいつに致命傷を負わせなければ




そう思ってからは早かった




立ち上がり、懐から御札を取り出した




色褪せ、くしゃくしゃになっているけど




間違いなく、"色"が見える




"色"は消えていない




まだ使える……!


あなた

(こいつは、私を母さんに重ねている…………だから、隙を突くなら一騎討ちがいい)

あなた

(ごめん、実弥………
先に逝くことになった)

あなた

千の刻刻みし御霊ぞ

それを呼び覚ませ、吹き返せ

青き彼岸花ぞ、陽受けさらなる開花の時を迎えよ

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