第83話

捌拾壱
2,602
2021/01/15 12:07
あなた

全集中 妖ノ呼吸 参ノ型

天狗疾風

大きく刀を振るう




回転技で、こいつの管を一点に掻き集める




必然的に、巻き上げられた管は私の方へ来る




刺さると思われた瞬間だった




目の前に浮かぶ情景




幼い頃の、無垢な思い出だ




走馬灯だろうか────




四歳くらいだろうか




実弥と、何か約束している




陽の差す縁側で、笑顔で指切りをしている




神楽神社の縁側だ……




次は、雫砺さんだ




お面を外した雫砺さんは、とても美人だった




よく同じ布団で寝たっけ………




そしてこれは……?




奈猫だ




突然現れた見知らぬ赤ん坊




何故か、確信を持った




赤ん坊の奈猫を抱く神楽が見えた




どの記憶も、白い光が差し込んでいて、暖かい




そして、どの私も笑っている




いつから忘れたんだっけ




楽しむことを見出すということを────




そして、激痛で現実に引き戻された


あなた

ぁ"ッッッ……

はらりと落ちる紙




先程の斬撃で折れたのであろう刀




管は、私の腹を貫通していた




それに、半分鬼化が残った体では死ねない


竈門炭治郎
竈門炭治郎
雨椿さん!!!!
伊黒小芭内
伊黒小芭内
雨椿!!!!
あなた

くっ…………さっさと………
やんなさいよ…………

鬼舞辻無惨
鬼舞辻無惨
その小さな体でよくここまでやれたものだな
鬼舞辻無惨
鬼舞辻無惨
さあ我が娘よ、私の細胞のひとつとなり、永遠を生きようではないか
不死川実弥
不死川実弥
娘……だと………?
あなた

……さね…………み……

前線に先程復帰したのであろうか




実弥がこちらを呆然と見つめている




………寝てた方が良かったのでは……




どちらにしろ、死ぬ事が確定してある




我ながら冷静だな…と思う


あなた

ごめ……実弥…………わ…たし……
こいつの………実の…娘だっ……た……

喉の奥から、血が滲むのがはっきり分かる




息が苦しくなり咳をする




吐血…………




この量って……普通死んでるな……


不死川実弥
不死川実弥
糞野郎がァァ!!
あなたを離しやがれ塵がァ!!!
あなた

(やめて………作戦が狂う…………
死にたくなくなる………)

鬼舞辻無惨
鬼舞辻無惨
どちらにしろ、こいつは死ぬぞ
不死川実弥
不死川実弥
っ………ざっけんな…!!
不死川実弥
不死川実弥
おいあなた!!俺はっ…………!
あなた

実弥

不死川実弥
不死川実弥
っ!?
あなた

(最後くらい……最期くらいは………笑顔で…)

あなた

ありがとう大好きだったよ

不死川実弥
不死川実弥
あなたーーっ!!
ズシャッ!!




鬼舞辻無惨に頸を潰され、私は死んだ────



















神楽神社────
奈猫(なびょう)
奈猫(なびょう)
っ!?
白之丞(はくのじょう)
白之丞(はくのじょう)
あれ………あなたの気配が……………
夏雨鴉(かうがらす)
夏雨鴉(かうがらす)
……消えた…………
神楽
神楽
……………青い彼岸花は咲いた……か
奈猫(なびょう)
奈猫(なびょう)
……………………
神楽
神楽
……奈猫………
奈猫(なびょう)
奈猫(なびょう)
………先に戻らせてもらう
夏雨鴉(かうがらす)
夏雨鴉(かうがらす)
おい奈猫……!
白之丞(はくのじょう)
白之丞(はくのじょう)
やめなよ夏雨鴉………
白之丞(はくのじょう)
白之丞(はくのじょう)
奈猫、二度も母親を失ったんだから
神楽
神楽
ああ………
奏実と桜樺の娘じゃ…………桜樺が死んだ時、奈猫も死んだのじゃが、わしが魂を引き取り、妖にした…………
夏雨鴉(かうがらす)
夏雨鴉(かうがらす)
だからあんなに………
あいつに会いに言っていたのか
白之丞(はくのじょう)
白之丞(はくのじょう)
桜樺と契約したの、僕と神楽の二人だったもんね
神楽
神楽
奏実と桜樺…………この二人………
神楽
神楽
どこまでも……報われぬのう…………

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