朝早く登校して、少しずつ周りが騒がしくなり始めても私に話しかけてくる人はほとんどいない。
私を遠巻きに見て、コソコソと…。
「あなた、おはよー。」
のんきな姫の声がして、少し安心した。
「おはよ。」
「大丈夫…?」
「何が?笑 あ、今日は遅刻してないよ?」
姫が何を心配してるのかわかってるくせに、笑って誤魔化せば、少しため息をついて姫もそれ以上は何も聞いてこない。
なんだかんだ、それが助かってたりもする。
「女の子って大変なんだな。」
「そうだよ?色々大変なんだから。」
なんて話をすると、いつもの如くざわつく廊下。
ガンッと勢いよく扉が開いて、前の扉から機嫌の悪い颯太がこっちに向かって近づいてくる。
「なんで置いてくんだよ!?」
「一緒に行くとか、約束してないでしょ!?」
「昨日は一緒だっただろ!!」
「それは颯太が行くって聞かなかったからでしょ?
今日は一緒に行くとか言ってない。」
「お前のせいで、遅刻しかけたんだけど!」
「知らないよ!自分のせいでしょ!」
こんな言い合い、適当に流せばいいのに。
イライラしていた私は完全に颯太に八つ当たりするように、立ち上がって大声を出していた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。