ゆっくり傾く視界を他所に、バァンバァン!とけたたましい銃声が響いた。
実弥と玄弥が後ろから襲う鬼を斬る。
倒れてる私を置いて帰ろうとするか普通??
やべえよこの兄弟…
なんて冗談を抜かしているが、頭がガンガンと痛む。
そう言うと玄弥は、私の身体を持ち上げて姫抱きをした。
ガッチリした腕に、私がすっぽりと収まっている。
走ってきてくれたからなのか、心なしか玄弥の体温が高い気がする。
ふと、ふわりと玄弥の匂いが香る。
気付いたら既に私は眠りに落ちていた。
(no side)
スリ、と実弥が優しくあなたの目元を撫でる。
玄弥の腕の中で眠るあなたは、何だか苦しそうで。
2人とさほど変わらない背丈のあなたは、なぜだか凄く小さく見えた。
そよりと風が二人の頬を撫で付けて行く。
玄弥は辛そうな顔を見て、自身の腕の中で眠るあなたをギュッと抱きしめ一歩踏み出し始める。
その二人の前を歩くのは、不器用だけど誰よりも優しい男の背中が二人を心配していた。
「「─── 秘かに貴女を想い続けるさ」」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!