リンゴ飴の屋台の前に行けば、艶々と光を反射する飴に目を奪われた
『わッ! 艶々! 美味しそう! う~ん、色んなのがあるなぁ…ていうか、飴細工じゃないの珍しい』
店主「よォ嬢ちゃん…
おっ、そこの兄ちゃんは恋人かい?
お似合いだねェほら、葡萄飴 まけてあげるよ!
それと、飴細工も売っちゃいるが試しに果物もやったら好評だったんだ。だから色んなヤツを売ってんのさ」
実弥「こ…ッ!」
『恋人…ッあ、有難うおっちゃん! 美味しく食べるね!』
おっちゃんの手から葡萄が二個棒に刺さった飴を受け取る
半額になった金額を払って屋台を離れた
『あのおっちゃん気前がいいなぁ~~、んふふ、恋人って言われちゃったね』
実弥「ああ…てかよォもう五時過ぎだってのにそこそこ暗いなァ」
そう言って実弥は星が明るい空を見上げる
『確かに…星が見える、アッ月も!』
実弥「……そうだなァ、月が綺麗だァ」
『うん! 実弥と見れて良かった!』
実弥「…そうかァ (伝わってねぇ…でも…)」
私は葡萄飴の一つをかじって口の中に入れる
『ふぁねみも一つ食べる??』
実弥「あァ? お前食ってんだろうがよォ」
『一個口に入れた』
実弥はジッと私の手にある葡萄飴を見つめて、フゥと息を吐いた後私の手から葡萄飴を取った
実弥「貰っとく (間接…)」
『うんうん! 私はコレ食べ終わったらイカ焼きが食べたい!!』
実弥「おい、あなたお前本当はイカ焼きが早く食べたいだけだろォ」
『バレた? いいじゃん、実弥も買いなよ、イカ焼き』
実弥「俺はお前の一口貰えば充分だァ、てか肉つくぞォ」
『なんだと…! 大丈夫、動いてるから』
カランコロンと下駄を鳴らして通りを歩く
『あっ!! 待って…ココ、イカ焼き無くない?!』
キョロキョロと辺りを見回すがイカ焼きは売られていない
実弥「飴食ってる間には一回りしたけどな」
『不覚ッ! くそぅ、イカ焼きが無いなんて…! 』
実弥「おぉいアレ見ろォ」
実弥が指さしたその先には
“焼き鳥”の文字
実弥「…あなた、食うだろォ」
『うん!! 実弥も食べよう!!』
実弥は私の手を握って、焼き鳥の屋台に向かって行った
『(手…)』
・
『…実弥~~? 実弥~~?』
焼き鳥を買った後、座って食べようってなって
近くの神社の後ろの方の椅子に座ったはいいんだけど…
半分くらい食べ終わった後に、実弥が
実弥「ちょっとソコで焼き鳥食ってろォ」
ってどこかへ行っちゃったんだよね~
『アッ、焼き鳥おいし! 塩が一番かなぁ』
実弥の分も残しながら食べていると声をかけられた
男①「姉ちゃん、今一人? 俺らと回らない?」
男②「どうせ一人で暇なんでしょ? 俺らがイイトコ連れてってあげるよ」
『いえ、私は待っている人が居るのでお引き取り願います』
私がそう断っても中々引き下がってくれない
『しつこいです、早くどっか行ってくれませんかね、貴方方なんて眼中にもありません』
男②「アァ?! ちょっと誘ったくらいで調子乗りやがって!! 」
男①「男の俺らに叶うとでも思ってんのか?!」
『気絶させて差し上げま…』
実弥「俺の女に何手ェ出してんだァ?」
男共の後ろから現れた実弥に男共はチッと舌打ちを残して去っていった
実弥「大丈夫だったかァ?」
『うん、実弥が来てくれたから助かった! それにしてもウザかったなぁ、顔面殴っても良かったと思う』
実弥「ハハッ、俺らが殴ったら死んじまうだろうがよォ」
『いや加減しようよ』
実弥「ンなもん必要ねぇだろ」
『んもーー、てか実弥どこ行ってたの?』
実弥「あぁ、それはなァ…」
そう言って取り出したのは、綺麗な装飾品が付いた簪
『えっ』
実弥「…コレお前に」
『私に…?』
実弥「…おうよォ…俺…」
実弥から簪を受け取る
実弥「……あなた、好きだ」
『…えっ?! 私?!』
あまりの衝撃に目を見開く
実弥は恥ずかしそうにしながらも私の目を見つめる
『……う、嬉しい、凄い嬉しい!』
実弥「…ちゃんと聞いとけよォ」
『う、ん、』
実弥「…俺と付き合ってください」
『!!』
その瞬間、ドドンッ と花火が上がった
ギュッと貰った簪を握りしめる
『……勿論! …私も実弥が、好き!』
実弥「! …そうかァ」
『うんっ! …私の事幸せにしてよね!!』
実弥「あァ、絶対幸せにしてやんよォ」
花火が夜空に咲いたとき、二人の想いも花を咲かせた __,
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。