第112話

絶妙な関係【我妻 善逸】②
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2022/05/13 13:51

─── 1階 購買 (善逸side)


「な~炭治郎」
「ん?なんだ?」
「あなたさぁ最近元気ない気がするんだよなあ」

パンを買う列に並んでいる時に、ふと思った事を炭治郎に話し始める。

あなたの様子がどこか萎れてる気がするのは多分間違いじゃないだろう。なんで分かるのかって?

そりゃあ伊達にあなたの幼馴染やってませんから!

隣の炭治郎を見やると、凄い顔で俺の方を見ていた。

「なになになに!?何の顔なの!?」
「善逸…本当になんであなたが元気ないのか分からないのか?」
「ええ…う〜ん…う〜ん…あっ!俺があなたの教科書借りパクしてるから…とか?」
「それは早く返してやってくれ…っていやそうじゃなくて。ハァ…あなたは本当可哀想だな…なんで善逸なんだ?」
「ええっ、何が!?炭治郎何が俺なの!?」
「ハァ…」

炭治郎に何度聞いてもずっと「ハァ…可哀想に…」ばっかり言ってて、訳が分からない。

あなたが可哀想?なんで?

強いて言うなら…心当たりが……ある。あるなあ…

「もしかして、毎日丘に連れ回してること…?」
「丘?」
「おまじないがあるんだよ。51日間その丘で日が落ちる空を見続けたら、恋が叶う!ってやつ」

そう言うと、ますます炭治郎の顔が酷いことになってしまった。いや周りドン引きしてるよ…?

炭治郎は俺の肩をグッ…と握って(力が強すぎ)、首を横に振った。

「善逸…今すぐそれをやめろ。本当にやめてやってくれ。あまりにもあなたが可哀想すぎるだろう…」
「うぇ!?そんなに丘ダメ!?ってか炭治郎泣いてる!?そんなに!?」
「もし俺があなただったら…善逸の顔をこう…グッ…と…殴ってしまうかもしれない」
「それ殺意ィ!?俺に殺意感じてんの炭治郎サァン!?」
「感じてるのは俺じゃなくてあなたかもしれないな」

炭治郎が前に出たのと同時に前を見るといつの間にか順番が来ていた。

おばちゃんは楽しそうに炭治郎と会話している。

会計が終わると、次は俺の番だ。

「こんにちは!…キミ、なんだか悩んでる顔してるね?」
「へっ?おおお俺?」
「オバチャンはこういうのに目敏いのさ!分かるよ、その顔は恋の悩みだね?」
「恋…俺が?」
「なるほどねぇ…そういうことかい。ま、頑張んなさいな」

俺はメロンパンの300円をトレーに置き、お礼をつげて購買の列を抜ける。

おばちゃんはそんな俺を見て楽しそうに「悩んだらいつでもおいでよ!」と奥に姿を消した。

「キャッ!!」
「おっと…ごめんね?」
「いっ、いえ…!すみません…!」

1階は他学年で混みあっていて、知らない女の子とぶつかってしまった。

周りを見ると他の人にぶつかってそのまま俺にぶつかったらしい。

やばい、あれ善逸先輩だよね…!?めっちゃかっこよかった…
何ぶつかっちゃってんの、ヤバいよ…!!
しかも隣に炭治郎先輩も居たじゃん、今日アタリすぎるって!

女の子達はパタパタと走っていった。

…それにしても全部会話聞こえてるんだけどな。

俺だって学校だと結構モテてる方だと思うよ?!さっきみたいにコソコソ話してる内容だって聞こえてるし…

「なあ炭治郎」
「なんだ?」
「俺ってさ、別にモテないわけじゃないよね?」
「…そういうのは思っても言わない方がいいと思うぞ」
「炭治郎だからに決まってんだろ」

階段を登る途中、炭治郎は俺を振り返って俺の額を拳で小突いた。

「どうしようが俺は応援するしか出来ないけどさ…あなたの事も、ちゃんと考えてやらないとな」
「…うん?あなた…?」
「はぁ、これだから…そんなことしてるとあなたに彼氏でもできるかもな」
「はァ!!?そんなの許せないんですけどーー!!」

炭治郎はスタスタと俺を置いて行ってしまった。

なにおぅ!!あなたに彼氏なんて出来るわけないじゃん!!

「(自分は彼女欲しがる癖になぁ…)」
「待ってよたんじろぉ~~!!!」

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