前の話
一覧へ
次の話

第4話

4. 彼女と彼
113
2021/09/07 22:00





  相合傘をしながら2人で歩く通学路。


  いつもと同じ景色なはずなのに、


  それは、全くの別物に見えた。


  まるで、カメラアプリのフィルターがかかって


  いるように。




  『 あのさ、 』




  無言の2人きりの空間になんとなく


  嫌気がさして、声を上げると


  はい、と弱そうに彼は返事をした。




  『 なんで私の名前知ってたの? 』


高橋「 っえ? 」


  『 だって、名前。教えたこと、ないよね? 』


  『 はじめまして、だよね? 』


高橋「 違ッい、ます … 」


  『 え、? 』


高橋「 入学式の日、、話した。 」


  『 入学式 … ? 』


高橋「 友達、おらんくて。校舎広すぎるし、
    迷子になってて。その時、美澄さんが
     助けてくれて、。 」


  『 っあー! 』




  確かにあの時、廊下でキョロキョロ


  してる人がいて、気になって声をかけた。


  でも、その時声をかけたのは


  髪で目が隠れてて、マスクと眼鏡を


  付けてる明らか陰キャみたいな子だった。


  それに比べて今の彼は、


  綺麗にセットしてある髪、


  眼鏡もマスクも付けていないから


  しっかり見える綺麗な切れ長の目。




  『 なんで、? 』


高橋「 え? 」


  『 なんで、こんなに変われたの? 』


高橋「 美澄さんの、ため … 」


  『 わたしの、ため? 』


高橋「 俺、美澄さんにあの時一目惚れした。
    だから、美澄さんの横に胸張って並べる
     ような男になりたくて、! 」


  『 そっか … 』




  嬉しかった。


  一目惚れなんて信じてない。


  それでも、言葉に表せないくらい嬉しかった。


  気づいたら、彼を知りたいと思っていた。


  きっとわたしも、彼に最初から


  惚れていたのかもしれない。


  そう思わせてくれる程、彼の真っ直ぐすぎる


  瞳に見つめられて、心が高鳴っていた。




  『 わたしと、友達になりませんか? 』




  そう、口に出さずにはいられなかった。












    next

プリ小説オーディオドラマ