相合傘をしながら2人で歩く通学路。
いつもと同じ景色なはずなのに、
それは、全くの別物に見えた。
まるで、カメラアプリのフィルターがかかって
いるように。
『 あのさ、 』
無言の2人きりの空間になんとなく
嫌気がさして、声を上げると
はい、と弱そうに彼は返事をした。
『 なんで私の名前知ってたの? 』
高橋「 っえ? 」
『 だって、名前。教えたこと、ないよね? 』
『 はじめまして、だよね? 』
高橋「 違ッい、ます … 」
『 え、? 』
高橋「 入学式の日、、話した。 」
『 入学式 … ? 』
高橋「 友達、おらんくて。校舎広すぎるし、
迷子になってて。その時、美澄さんが
助けてくれて、。 」
『 っあー! 』
確かにあの時、廊下でキョロキョロ
してる人がいて、気になって声をかけた。
でも、その時声をかけたのは
髪で目が隠れてて、マスクと眼鏡を
付けてる明らか陰キャみたいな子だった。
それに比べて今の彼は、
綺麗にセットしてある髪、
眼鏡もマスクも付けていないから
しっかり見える綺麗な切れ長の目。
『 なんで、? 』
高橋「 え? 」
『 なんで、こんなに変われたの? 』
高橋「 美澄さんの、ため … 」
『 わたしの、ため? 』
高橋「 俺、美澄さんにあの時一目惚れした。
だから、美澄さんの横に胸張って並べる
ような男になりたくて、! 」
『 そっか … 』
嬉しかった。
一目惚れなんて信じてない。
それでも、言葉に表せないくらい嬉しかった。
気づいたら、彼を知りたいと思っていた。
きっとわたしも、彼に最初から
惚れていたのかもしれない。
そう思わせてくれる程、彼の真っ直ぐすぎる
瞳に見つめられて、心が高鳴っていた。
『 わたしと、友達になりませんか? 』
そう、口に出さずにはいられなかった。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。