第8話

>>>6
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2020/12/06 13:40
部屋の中が少しづつ明るくなっていく。
遠くで鐘のなる音がする。
この刑務所に時計は無いから、鐘の音で時間の分別をつける。
6回なったから今は6時。太陽も少しづつ登り始め、俺が寝ていたベッドには窓から差し込む眩しい光が沢山の筋を作っている。

起きようかな、とふと思ったとき、腕の中でなにかが動くのを感じた。

やばい!と思い腕の中を除けば俺の胸に顔を埋めるころちゃんの姿が。
莉犬(N418)
あれ……ころちゃんごめん…笑
昨日はさとみくんがずーっと爆睡してて、起こすのも申し訳ないな、なんて話して2人だけで中庭に 出ていった。

ころちゃんのお友達達も歓迎してくれてなかなか楽しい時間を過ごしたんだ。

帰ってきてもさとみくんは爆睡していて、俺らはころちゃんのベッドで色んなお話をしてたんだ。

好きな食べ物とか、趣味とか。
ころちゃんは 元々はIT企業で働くサラリーマンだったらしくて、広告作りとか サイト制作とかが好きだったんだって。

趣味は本を読むことって聞いた時は流石にびっくりしたね,あのころちゃんが本!?と思って笑

楽しかったなぁ…と思い出の余韻に浸っていたというのに、鍵が開く音がして、正直身構えた。
ジェル(看守)
おっはようございまぁすっジェルでぇ~すっ✨
莉犬(N418)
嗚呼なんだジェルくんか…おはよぉお
ジェル(看守)
ん、莉犬おはよ。起きるの早いなぁ、俺まだ眠いわぁw
このペラペラと1人で話し続けるオレンジの人はジェル。

俺らの刑務所はA棟とB棟とで分かれてるんだけど,この人は俺らB棟の副看守長らしい。

昨日中庭で会って一緒に話してたんだけど、割と面白かったんだよねw
だからちょっと仲良くなったんだぁ笑
莉犬(N418)
俺も眠い~…無理ぃぃ~…寝る
ジェル(看守)
こら!朝ご飯なんやからはよ起きなさい笑
莉犬(N418)
ご飯なら起きる!✨
朝ご飯と聞いて飛び起きた拍子にころちゃんの手を踏んでしまった。
ころちゃんの声が下から聞こえる。
ころん(U057)
ギィッたぁぁ!?
莉犬(N418)
ごめんころちゃん(´;ω;`)!!!!!!
ころん(U057)
いッたぁぁぁ!!!!何どーいう朝の起こし方それ!?何僕過眠症でもないんだからもうちょっと優しくしてくれる!?天然記念物なんだけど僕
真顔で面白いことを早口で言うころちゃんに思わず吹き出して笑ってしまうと、「笑ってんじゃねーよ!」と言いながら俺のおでこにデコピンをしてくる。

そんなこと言いながら自分だって笑ってるくせに、という不服を申し立てるようにデコピンを仕返す。

するとそのまま揉み合いになり2段ベッドの2階で暴れ回る。
莉犬(N418)
くすぐったいよwwころちゃんwきゃはははww
ころん(U057)
おらおらぁww
こしょぐられて布団で暴れ回っていると、落下防止の柵の向こうからボサボサのさとみくんの頭が覗く。
さとみ(N417)
お朝から元気だなおめえらは…笑
ほら、朝飯だってよ、早く行くぞ
莉犬(N418)
はぁ~いっ!!
ころん(U057)
うぃーっすさとみくんおはよ、寝癖ついてるから直しちゃいなw
とか何とか言いながら枕元に置いてある鏡をさとみくんに渡す。
するとさとみくんは
さとみ(N417)
ん有難ころん
と言い、わちゃわちゃと頭を直し始める。

その間に俺は鏡の隣に伏せて置いてあった写真立てを立てて見る。
その写真立ての中には楽しそうに笑ってピースする女の子と、その隣で気恥しそうに笑うころちゃんの姿が。

どこかで見た事のある姿に何処か引っかかったが 誰だったかは思い出せず、まぁいいか、と思いながら二段ベッドから下りる。

その時俺は気づいていなかった。
ころちゃんがその様子を 鋭い目で見つめていたことなんて。

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