どのくらい眠っていたのだろう。
日はとっくに落ちて おり、枕元の 目覚まし時計を見れば 午前2時を指している。
中庭に出ると約束した 3時は とうに通り過ぎ、上からは 寝音が 聞こえてくる。
取り敢えず 莉犬に謝ろうと思い、向かいのベッドの2階を覗き込んだところ、莉犬の姿が見当たらない。
驚き後ろを振り返り、ころんに説明を求める 。
俺の言葉を止めたのは 俺の目の前に広がった光景だった。
莉犬が ころんをまるで 抱き枕にでもするように 抱きしめ、 ころんが 窮屈そうに 寝返りを打っている。
可愛い。まるで自分の子供を見ているかのような気持ちになった俺は、少し息苦しそうにする ころんの頭を撫でる。
少しだけにへっと笑ったように見えた ころんは、 むくむくと寝返りを打ち、 莉犬に 近づき , まるで 団子のように丸くなった。
そんなほんわかした様子を見て、 ふっと笑いを零し 小さな 窓に視線を移す。
今日も月が美しく光り輝いている。
刑務所だからか、辺りに建物は少なく ,よく星が見える。
難攻不落の 刑務所。
政府最後の砦とも呼ばれる セキュリティシステムに 至る所に 設置された防犯カメラ。
俺に与えられた刑期は 1年半 。
大人の 男 2人を 殺した俺だが、正当防衛だったと認められ、 刑期は 軽くなった。
あと一年半待てば、 愛する娘達と 彼女に会える。
1年半なんて、あっという間だろう。
こんないい仲間に囲まれながら、いつか,出所した時に 飲みにでも行けたらいいな。
そんなことを考えながら、 もう一度布団に潜った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!