りかside
朝、五時に目が覚める。
目覚まし時計はセットしていない。
いつも五時に起きてるから、習慣づいてるのだ。
わたしは起きると、ランニングウエアに着替えた。
お年玉を貯めて買ったんだ。
小声で呟くと、外へ走り出した。
朝の新鮮な空気が入ってきて、清々しい。
だからわたしは朝が好き。
いつものルートを走る。
六時に帰って来れるルートだ。
体力作りのために始めたランニング。
毎日欠かさずにやっている。
戻ってきた。
家の方へ行こうとして、慌てて松野家へ向かう。
危ない危ない。
みんなを起こさないように、小声で呟く。
え?
チョロ松は今起きてきたみたいだった。
顔を背けて、チョロ松が言った。
チョロ松が目にとめたのは、わたしの付けている髪ゴム。
一応二人と区別するために、わたしはポニーテール、あなたはおさげにしてるんだ。
昨日はみんなをびっくりさせたくて、おろしてたんだ。
昔、わたし達三つ子は、よく間違えられた。
わたしはそれが嫌で仕方なかった。
わたしはわたし一人だから。
多分、二人も一緒の気持ちだったはず。
そんな時、チョロ松がこのオレンジ色の髪ゴムをくれたんだ。
とっても嬉しくて、ずっと付けている。
顔を俯かせる。
そんなことをだべりながら、あたし達はみんなを起こしていった。
…チョロ松は怒号を響かせながら。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。