第8話

アメジストは生きる
ホヌ
ホヌ
………
ホヌ
ホヌ
………
ホヌ
ホヌ
………………
メラルド
メラルド
キュル?
ホヌ
ホヌ
……なんだ、メラルド。いたのか。
ホヌ
ホヌ
主人のもとを離れちゃだめじゃないか。
メラルド
メラルド
キュルル?
ホヌ
ホヌ
ははは……僕も主人を守れなかったダメな従者だね。
ホヌ
ホヌ
従者失格だ。
メラルド
メラルド
キュルルルル?
ホヌ
ホヌ
ああ、そうだよ。僕は主人の言いつけどおり、マジックストーンは守ったさ。ほらね。こんなに大量の商品が僕の足元にある。ひとつも盗まれることなくね。
メラルド
メラルド
キュル?
ホヌ
ホヌ
でも、ダメなんだよ。ぽっかりと心に穴が空いたみたいだ。
ホヌ
ホヌ
こんな気分、初めてだ。
ホヌ
ホヌ
僕は物心つくまえからもう、ずっと1人だった。孤独だったんだ。自分の身を守るために、自分が生き残るために必死だったんだ。
ホヌ
ホヌ
なのに、こんな気持ちになるなんて……。
ホヌ
ホヌ
全部、あの人のせいだ。
ホヌ
ホヌ
あの人のせいなんだよ。
メラルド
メラルド
キュル!
ただただ広い砂丘が広がるなか、青年と砂漠リスが1匹。


ホヌはもう、空虚な目をしていなかった。
ホヌ
ホヌ
メラルド、たしかラナさんは何かしらのマジックストーンをいつも身に付けているはずだ。においをたどれる?
メラルド
メラルド
キュル!
ホヌ
ホヌ
よし、じゃあ僕の肩にしっかりつかまっていてね。
高く飛ぶにはラピスラズリ。
ホヌがラピスラズリを指輪に装着すると、足の裏にロケットの噴射口ができたかのように、宙高く飛んだ。
メラルド
メラルド
キュル!
ホヌ
ホヌ
あっちだね?
果てしなく続く砂漠地帯。同じような景色がただただ、ひたすらに続く。
ホヌ
ホヌ
(大型ドラゴンに乗っていたけど、あの大人数じゃそんなに速く飛べないはずだ。)
メラルド
メラルド
キュル!!
ホヌ
ホヌ
わぁ、海だ……。
ホヌ
ホヌ
パライバ・トルマリンみたいな、きれいな色をしているね。
メラルド
メラルド
キュルキュル!
ホヌ
ホヌ
あっ、あっちの崖にドラゴンがいるね。見つからないよう、降りてみよう。
ホヌは岩陰に降りたち、デストリアスたちのようすを伺った。
デストリアス
デストリアス
ラナ、そんなにわがままを言わないでくれ。
ラナ
ラナ
死んでやる!
ラナ
ラナ
あんたたちが欲しがっているマジックストーンは、採掘禁止の強力な石でしょ!わたしは戦争の片棒を担ぐようなまねはしたくない!無理矢理手伝わされるんだったら、この崖から落ちて死んでやる!
デストリアス
デストリアス
そう自暴自棄になるな。
デストリアス
デストリアス
もし、君が死んでしまったら、俺はあの青年を見つけだし、君が大切にしていたマジックストーンを奪わなきゃいけなくなるんだぞ。
デストリアス
デストリアス
さっきは残された従者が哀れで、くれてやったけどね。あのマジックストーンにだって、相当な価値があるだろう。闇商人に売れば、それなりの金になる。
ラナ
ラナ
あの中には、歴史的価値のあるものも含まれているのよ……!それを、闇商人に売るなんて許さないんだから。
デストリアス
デストリアス
そうしないためにも、君は生きて俺に着いてこなければならない。
デストリアス
デストリアス
理解してくれたかな?
ラナ
ラナ
…………。
盗賊
ぐわぁ……!!
デストリアス
デストリアス
ん?
なんだ?
盗賊
うっ……!
デストリアス
デストリアス
どうして、俺の従者が倒れているんだ?
ホヌ
ホヌ
僕が眠らせたからだよ。この、アメジストでね。
ラナ
ラナ
ホヌ!!
デストリアス
デストリアス
貴様っ……、どうやってここへ……?
ホヌ
ホヌ
マジックストーンを使いました。
ホヌ
ホヌ
あなたは大した価値がないと思っているみたいですけど、とっても役に立つんですよ。
ホヌ
ホヌ
なんてったって、僕の主人が集めたものですからね。
デストリアス
デストリアス
主人、主人ってうるさいなぁ……!
タイガーアイ
タイガーアイ
俺っち、警備隊を呼んでくるよ!
ホヌ
ホヌ
頼みます!
デストリアス
デストリアス
あいつ、縄で縛っておいたはずなのに……!
ホヌ
ホヌ
僕がさきほど、こっそりほどいておきました。
デストリアス
デストリアス
くっそ……、どいつもこいつもちょろちょろと……!
ホヌ
ホヌ
移動手段のドラゴンも、行っちゃいましたね。
ホヌ
ホヌ
さて、どうします?
デストリアス
デストリアス
くっ……!
ラナ
ラナ
!!
ホヌ
ホヌ
!!
デストリアス
デストリアス
主人を助けたかったら、マジックストーンをよこせ!
袋ごと全部だ!
ホヌ
ホヌ
さっきまで、あんなに庶民のものだってばかにしていたのに。呆れてしまいますね。
ホヌ
ホヌ
おまけに許婚であるはずのラナさんを人質にとるなんて……。ひどい人です。
デストリアス
デストリアス
うるさい!
さっさとその石をよこせ!
ラナ
ラナ
ホヌ、わたしは大丈夫だから。石を持って、ここから立ち去りなさい。
ラナ
ラナ
これは命令です。
ラナ
ラナ
そのマジックストーンにどれだけの価値があるか、2年間一緒に旅をしてきたあなたならわかるでしょう?
ホヌ
ホヌ
はい、わかります。
ラナ
ラナ
そうよね。
じゃあ、ここから……。
ホヌ
ホヌ
嫌です。
デストリアス
デストリアス
なかなか聞き分けのいい従者のようだ。
ホヌは麻袋をデストリアスの足元に置き、代わりに解放されたラナを引き寄せた。
ホヌ
ホヌ
ラナさん、早くここから逃げましょう。
ラナ
ラナ
ホヌ、でも、石が……!
ホヌ
ホヌ
いいから早く!
デストリアス
デストリアス
わっ!
突然の出来事だった。
足元の崖が崩れ、デストリアスと麻袋、そしてラナが真っ逆さまに海へと落ちていったのだ。
ホヌ
ホヌ
ラナさん……!!
ホヌも主人を追って、海へとダイブした。