第6話

魔除けはソーダライト
ホヌ
ホヌ
ラナさん、ケガはないですか?
ラナ
ラナ
うん、ありがとう。
大丈夫。
ホヌ
ホヌ
……なにか変なこと、されてないですか?
ラナ
ラナ
変なことって……?
ああ、腕をつかまれたけど、大したことないわよ。
ホヌ
ホヌ
あ、良かった……
良くないけど……痣にならないといいけど……。
ホヌ
ホヌ
ラナさん。
手、冷たいです。
ホヌ
ホヌ
今日はもう帰りましょう。
メラルドも見つかったことですし……。
メラルド
メラルド
キュル!
ラナ
ラナ
もう、メラルド。
どこ行ってたのよ。
メラルド
メラルド
キュルキュル!
ホヌ
ホヌ
あ、そうそう。
メラルド、マジックストーンを見つけたみたいです。
メラルド
メラルド
キュル!
ラナ
ラナ
わぁ、メラルド、えら〜い!
ホヌ
ホヌ
ソーダライトですね。
魔除けのお守り。
今のラナさんにぴったりだ。
暗い洞窟から出たときの、目の眩しさったらもう!
しばらく、薄眼を開けてたたずみ、日差しに慣れてきてから、待たせていたドラゴンに乗った。
ホヌ
ホヌ
さすがにあいつ、ドラゴンは傷付けてないですね。ドラゴンの傷害は重罪ですから。
ホヌ
ホヌ
ラナさん、ちゃんとつかまっていてくださいね。出発します。
ラナ
ラナ
(なんだかホヌがいつもより、優しい気がする。多分、わたしたちの会話は聞かれていないだろうけど……。本当のことを打ち明けられないのがつらい。)
貸しコテージに戻ってからも、なんとなく気まずい雰囲気が漂っていた。
そんな主人たちの気分なんてそっちのけで、メラルドは呑気に眠っている。
ホヌ
ホヌ
ラナさん。
遅くまで作業、お疲れ様です。はい、ホットココアですよ。体が温まります。
ラナ
ラナ
ありがとう。
ホヌ
ホヌ
今晩は特に冷えこみますね。
星がいつもより澄んで見えます。
ラナ
ラナ
そうね。
砂漠の夜は寒いから。
ホヌ
ホヌ
さっきのソーダライトですか?
ラナ
ラナ
ううん、ムーンストーンよ。
ホヌ
ホヌ
そっか、ごめんなさい。暗くて見間違えちゃいました。
ホヌ
ホヌ
ムーンストーンにキスしながらお願いごとをすると、願いが叶うっていいますよね。
ホヌ
ホヌ
ラナさんは何か願いごとをしたんですか?
ラナ
ラナ
うん、昔ね。
ラナ
ラナ
わたしの生まれた村は、マジックストーンの産出地として有名な村だったの。鉱夫たちは皆優秀で、わたしの父は特にマジックストーンを見分けるプロだった。わたしもよく、父親にくっついてマジックストーン探しを手伝ったわ。
ラナ
ラナ
だけど、あるとき国の軍隊がやってきて、村を乗っとられてしまったの。軍資金が必要だったみたい。村人や商人を介して石を買うよりも、国が直接採ったほうが安上がりだからね。村人は新しい仕事を探して、次々と村を出ていったわ。
ラナ
ラナ
でも、石なんて採ったこともない軍人が、マジックストーンを見つけられるはずもないでしょ。わたしの父とわたしがマジックストーンの採掘をさせられるようになって……。しかも、生活用に使われるあまりお金にならないような石じゃなくて、戦争に使えそうな攻撃力の高い石を見つけるよう、命じられた。
ホヌ
ホヌ
そんな……。
ラナ
ラナ
父とわたしは何度も逃げようとした。でも、その度につかまって……。わたしたちが逃げないよう、国側がある条件を持ちだしてきた。
ホヌ
ホヌ
それは、王子と結婚するという条件ですね。
ラナ
ラナ
ホヌ、あなた聞いていたのね。
ホヌ
ホヌ
はい。
盗み聞きするつもりじゃなかったのですが、申し訳ありません。
ラナ
ラナ
そう。
いいのよ、べつに。
あなたには本当のことを話したかったから。
ラナ
ラナ
王族って本当に、頭のおかしな人たちばかりね。わたしが王子との結婚に喜ぶと思っていたんだから……。でも、それも反乱でなくなった。わたしと父は国の混乱に乗じて、逃げだしたのよ。
ラナ
ラナ
父は、さきに逃げだしていたわたしの母が隠れ住んでいた国へ行って、わたしはマジックストーンの商人として世界中を旅していたってわけ。そんな旅の途中にホヌ、あなたと出会ったのよ。
ホヌ
ホヌ
ふふっ……。
本当に感謝しかありません。
ラナ
ラナ
あの頃のホヌは廃れた目をしていたわ。自分以外全部敵だというようなね。でも、あなた本当に優しくて、穏やかな目になったわね。
ホヌ
ホヌ
ラナさんのおかげです。
ラナ
ラナ
ありがとう。
わたしもあなたが助手で頼もしく思う。
ラナ
ラナ
それでね、わたしが父と別れて旅をするようになって、ムーンストーンにお願いをしたの。このままずっと、誰に命じられることもなく、マジックストーンを売る商人として生きていけますように、って。
ホヌ
ホヌ
そのお願いごと、これからも叶い続けるといいですね。
ラナ
ラナ
そうね。
ホヌ、明日このオアシスを発ちましょう。行き先は敵の手の届かない、遠くの国よ。
ホヌ
ホヌ
はい。