第2話

売れるスモーキー・クォーツ
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2019/02/18 14:12
ホヌ
ホヌ
ラナさん、おはようございます。
ラナ
ラナ
……おはよう。
ホヌ
ホヌ
朝食できてますよ。
早く、起きてください。
ラナ
ラナ
ふわぁ〜……。
ここはオアシス。憩いの場。砂漠を旅してきた商人たちは、ここオアシスで旅の疲れを癒す。
服を着替えると、共同スペースからいいにおいがしてきた。
ラナ
ラナ
これはもしかして……
ホヌ
ホヌ
じゃーん!
ラナ
ラナ
やった〜くるみパイだ〜〜〜!!
ラナ
ラナ
おいし〜〜〜〜!
メラルド
メラルド
キュルル〜〜
ホヌ
ホヌ
本当に、ラナさんってくるみパイが好きですよね。
ラナ
ラナ
ぱふんしゅきしゃよ
ホヌ
ホヌ
もう、食べ終わってから話してください。
ほっぺがメラルドみたいに膨らんでますよ。
昨夜の戦闘から逃げだして、オアシスに着いたころには日が昇りかけていた。
よく、ホヌは朝から料理ができたものだ。

そう思って聞いてみると、
ホヌ
ホヌ
おとといの作り置きですよ。
だって。
ラナ
ラナ
(さすが、ホヌ。主婦の鏡。)
褒めてあげたかったけど、胸にしまっておくことにした。ただでさえ、童顔を気にしているのだ。これに加え、「主婦」なんて言ったら、彼のコンプレッックスはさらに増えてしまう。
ラナ
ラナ
あっ、メラルド!
わたしのくるみパイ取ったでしょ!?
メラルド
メラルド
きゅるるる〜?
ラナ
ラナ
とぼけないでよ!
わたしのパイ、1個足りないもん!
メラルド
メラルド
きゅるん
ラナ
ラナ
もぉ〜〜〜
ホヌ
ホヌ
はいはい、2人もケンカしない。
ラナさん、食べ終わったらお皿を片付けて、歯を磨いてきてくださいね。
ラナ
ラナ
(お母さん……)
ラナは言われたとおり、食器を片付けた。



朝の支度も終わり、早速、街へ出かける。旅人専用の貸しコテージが並ぶ界隈を抜け、バザールの広がる人通りの多いところへ出た。店を出す許可を役人からもらい、ラナとホヌは路上の一角に布を広げる。

ラナたちの扱うマジックストーン。それは、世界中で普及している生活必需品であり、おしゃれのための装飾品でもあった。ある石は、灯りとして夜に使われ、またある石は、身を守るための護身用具として使用される。マジックストーンの能力を発動させるときには通常、指輪の台座にはめ込み、台座の横に付いているつまみをひねって石にヒビを入れる。そうすると、石内部に秘められた魔力が放たれ、効力を発揮するのだ。

ラナたちの売っているマジックストーンは、ほとんどラナが採石したものだった。広く普及している石から、珍しいものまで。店を開いてからお客さんがやってくるまでに、それほど時間はかからなかった。
街人
まぁ、きれいなストーンね……。
街人
おおぅ!
これは大粒……。
相当な魔力を秘めていそうじゃわい……。
街人
やけどに効くマジックストーンはありませんか?
ホヌ
ホヌ
そちらのローズクォーツは、恋愛のお守りですよ。
ホヌ
ホヌ
ええ、おじいさん、お目が高い!
ラピスラズリなら、ドラゴンに乗らなくてもひとっ飛び!
ホヌ
ホヌ
やけどには、トパーズがぴったりです。
ラナ
ラナ
(ホヌって本当に商売上手だな……。)
ホヌ
ホヌ
あちらにあるスモーキー・クォーツ、さきほど大活躍したんですよ。
ホヌ
ホヌ
僕たちマジックストーンを売り歩いて、旅をしているんですけど、
ホヌ
ホヌ
昨夜、死の沼地で野宿していたら、いきなり盗賊に襲われたんです。
ホヌ
ホヌ
そこで、うちの主人が使用したのが、このトルマリンとスモーキー・クォーツ!
ホヌ
ホヌ
トルマリンで相手を感電させ、スモーキー・クォーツでどろん!!
ホヌ
ホヌ
そうして僕らはドラゴンに乗って、今朝方このオアシスにたどりついたってわけです。
街人
おお〜〜〜!
ホヌ
ホヌ
いまなら、トルマリンとスモーキー・クォーツ、おまけに指輪の台座もつけてお値段なんと、800ガレ!!
街人
わたしにそのトルマリンちょうだい!
街人
わたしにも!!
街人
わしも、買うぞ!
少年、まだ子供なのにやり手じゃのう!
ホヌ
ホヌ
…………☺️💢
ラナ
ラナ
(ああ、童顔に触れないであげて……😭)
商売上手な青年、、ホヌのおかげで、本日の売り上げ目標は達成した。

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