私はペンダントに人差し指だけ、弱く押し当てた。
良く見てみると、とても綺麗な青色。
窓の隙間から漏れる月明かりに反射していた。
なら、涙で濡れている私の心は…汚い青色だろうか?
そう言いながら、カチャッと出窓を開けた。
夜の風が気持ち良くて…ちょっぴり冷たくて。
頬を伝っている涙を乾かしているみたいだ。
後ろ髪を縛っていた、物を手の上に乗せた。
水色の…短めのリボン。
これも家族からの貰い物だ。
私はそれを、折り畳んで机の上に置いた。
何処にいますか?
7年前…消えた時から、何をしていますか?
お母様は…元気ですか?
ずっと、分からないままですか?
また会えたりしないんですか?
あの人達を思い出すと、いつも暗い考えになる。
表に出さないように 他人に悟られないように。
そんな事をしても意味が無いのは分かってる。
私は…変わっていないから。
色々な事に挑戦してみても、自分は自分じゃないと感じる。
身内の人間が誰もいないとか…そう言うのじゃない。
私は本当の自分に、自信がないからだ。
友達や家にいる人達からの…目が嫌だったから。
どんなに努力しても、嘘の自分を作っても。
捉え方なんて簡単に変わるはずなかった。
陰口を叩かれて、噂されて終わりだった。
『 死んじゃえば良いのに 』
クラスで私が言われても、皆反対しなかった。
命が無くなっても…誰も悲しまない。
けれど…お兄ちゃんだけは違った。
私が相談しても、なにも言わずに慰めてくれた。
心からそう思ってるかは分からないけれど、嬉しかったから。
でも私は2人の姿が消えてから、慰められるのが嫌いになった。
信じきってたけれど…嘘なんじゃないかって。
それをお父様に話したら、「 偽り 」の事を教えてくれた。
ノアお兄ちゃんは私を、雄一大切にしてくれた人。
忘れようとしても忘れられない訳だなぁ…。
突然声がしたので、思わず振り返った。
声の主はリヴァイさんだ。
銀色の鍵を握って扉の前に立っている。
パチパチと瞬きをしている私を差し置いて、数歩前に歩いてきた。
頭の中が混乱状態の私に、リヴァイさんの手がスッと伸びてくる。
顔に指先が触れたかと思ったら、涙をゆっくりと拭ってくれた。
多分だけれど…目に指が入らないように気を付けてくれている。
夜風に当たっていた頬は、とても冷たい。
リヴァイさんの指が…それ以上に暖かくて、優しいから。
反論する気力も無くて、私はただ
話されているのを聞く事しか出来なかった。
だけれど、そんな中でも分かる事があった。
リヴァイさんの声と姿を見ると…安心する事。
どんなに苦しくても、1人でいても
心がちょっとずつ、落ち着いていくからだ。
溜め息をつきながら…少し呆れ顔で言う
リヴァイさんの言葉は、私の心を溶かしていく。
また溢れ出てくる感情を押さえ込んで、自分の手で涙を拭いた。
呆れ顔がほんの少し、笑顔に近付いた。
自然と私も気分が明るくなるような顔だ。
私が声を振り絞って謝ると、何も言わずに窓の鍵を閉めた。
冷たい空気が流れ込まなくなると、暖かく感じる。
…やっぱり、弱いままなんだなぁ。
泣き止んだばかりなのに、溢れてくる。
またリヴァイさんに…馬鹿って言われちゃうよ…。
私が答える前に、ぐるっと部屋を見渡した。
机の上に置かれたリボンを見て納得したようだ。
息を小さく吐いた音が聞こえると、考え込むように黙ってしまった。
首を少し傾げながらも泣き止めずにいて、本当に情けない。
少しだけ、輝いて見える瞳で見つめられてドキッと心臓が跳ねた。
私の顔を見て確信したのか…どうかは分からないけれど。
何かを伝えようとしているのは、感じ取れた。
リヴァイさんに何を言われるんだろうか…?
気になって見つめ返すと、ゆっくりと喋り始めた。
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次回に続くё
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。