―書庫―
私が連れていかれたのは、古い書類が置いてある書庫だった。
こんな所もあるんだな…。
年毎に1つの資料にまとめてあるみたいだ。
リヴァイさんが言った、845年と書かれている物を手に取った。
順に見ていくと、本棚には糸で綴じてある本が全般だ。
けれど…どれを見ても、冊子の様な薄い本は無かった。
どうぞ、と言ってリヴァイさんに手渡した。
リヴァイさんは木製の椅子に座って、静かに頁をめくった。
内容が気になりつつも、どうすれば良いか分からず突っ立っていた。
本棚に並んでいる書物を見ているとリヴァイさんが、
資料を読んでいたはずの目を此方に向けていた。
何をすればいいのか分からなかったとは言えないし…。
まあ、相槌でも打っておけば良いかなと思い
首を横に少しだけ振りながら、問いに答えた。
ほんの少し、眉間に皺を寄せながら
何も言わずにゆっくりと視線を戻した。
1度ぐらいは自分で話し掛けた方が良いのだろうか。
私は物音がしない部屋の中で、今まで以上に勇気を出して聞いてみた。
よし、話し掛ける事が出来た。
心の中でそっと自分を褒めながら返事を待った。
視線を此方に向けずにリヴァイさんは答えてくれた。
やっばり、口調と比べて優しい人なのかもな…
本当は嬉しいのだけれど。
お父様がいた頃の事が載っているのを見るのもそうだし…。
リヴァイさんが言ってくれたのも、ちょっとだけ嬉しかった。
長椅子に1人が入れるくらいの間を空けて、内容を黙読した。
「ヘヴン・ラインヴァイスによる、
ウォール・マリア/シガンシナ計画」…?
こう書かれるのが、仕方無いと思ってしまう。
それ程…疑われてしまうような事をしていたのかもしれないし。
私はお父様が絶対正しいなんて、断言出来ないのだから…。
悲しい…と思っているのが顔に出ていたのか、
リヴァイさんが独り言のように語り始めた。
そこで一旦、息をつくと…
懐かしいものを見るような悲しいものを見るような目で、私の様子を伺っていた。
何か…後悔しているような顔だった。
空気が段々と重くなっていくのを感じ取って、私は声を掛けた。
自然と出た言葉がそれだった。
2年間…ずっと、側で見てきた「つもり」だった。
涙を流している所も笑っている所も…、楽しそうに話している所も。
お父様が偽りの自分を私に見せていたのかもしれない。
私の為だと思っていたんだろう。
けれど…そこから溢れ出すものは、『 偽り 』だって。
小さな私に…貴方が教えてくれた事じゃないか。
私は、正しかったのだろうか。
頼り続けて信じ続けて…自分を作り続けて。
馬鹿らしくなってきて、笑いたくなってきた。
なのに、それなのに…笑えなかった。
その代わりと言っているように…頬を何かが濡らした。
久し振りの感覚だ、何年振りだろうな。
こんな事を言ってしまうと、心が無い人間と思われるかな。
顔はきっとぐちゃぐちゃだろう。
人の前で泣くなんて、本当に馬鹿らしい。
「…ちっ。」
目の前が、瞬間的に暗くなった。
涙で歪んでいるから…状況を掴めない。
それなのに、、、落ち着く。
何なんだろう。この程好い暖かさは…。
眠くなってしまうような、包み込んでくれるような。
ずっと、包まれていたいと思ってしまうような。
そんな…感覚だ。
次回に続くё
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。