第22話

青色のペンダント#18
4,667
2019/04/09 09:51



―書庫―


リヴァイ
リヴァイ
845年の資料を持ってこい



私が連れていかれたのは、古い書類が置いてある書庫だった。

こんな所もあるんだな…。
年毎に1つの資料にまとめてあるみたいだ。


リヴァイさんが言った、845年と書かれている物を手に取った。
順に見ていくと、本棚には糸でじてある本が全般だ。
けれど…どれを見ても、冊子さっしの様な薄い本は無かった。


あなた
あなた
これでしょうか?
リヴァイ
リヴァイ
ん…そうだ




どうぞ、と言ってリヴァイさんに手渡した。

リヴァイさんは木製の椅子に座って、静かにぺーじをめくった。
内容が気になりつつも、どうすれば良いか分からず突っ立っていた。



リヴァイ
リヴァイ
おい、何してる?



本棚に並んでいる書物を見ているとリヴァイさんが、
資料を読んでいたはずの目を此方に向けていた。


何をすればいいのか分からなかったとは言えないし…。

まあ、相槌でも打っておけば良いかなと思い
首を横に少しだけ振りながら、問いに答えた。

あなた
あなた
…いえ、何も


ほんの少し、眉間にしわを寄せながら
何も言わずにゆっくりと視線を戻した。


1度ぐらいは自分で話し掛けた方が良いのだろうか。
私は物音がしない部屋の中で、今まで以上に勇気を出して聞いてみた。


あなた
あなた
それは…5年前の書類ですか


よし、話し掛ける事が出来た。
心の中でそっと自分を褒めながら返事を待った。

視線を此方に向けずにリヴァイさんは答えてくれた。
やっばり、口調と比べて優しい人なのかもな…


リヴァイ
リヴァイ
あぁ…見るか?
あなた
あなた
…はい



本当は嬉しいのだけれど。

お父様がいた頃の事が載っているのを見るのもそうだし…。
リヴァイさんが言ってくれたのも、ちょっとだけ嬉しかった。



長椅子に1人が入れるくらいの間を空けて、内容を黙読した。


「ヘヴン・ラインヴァイスによる、
ウォール・マリア/シガンシナ計画」…?



こう書かれるのが、仕方無いと思ってしまう。

それ程…疑われてしまうような事をしていたのかもしれないし。
私はお父様が絶対正しいなんて、断言出来ないのだから…。



悲しい…と思っているのが顔に出ていたのか、
リヴァイさんが独り言のように語り始めた。


リヴァイ
リヴァイ
お前の父親は、最後まで正体が謎のままだった。
突然倒れる事もあれば…寝ぼけてんのか知らねぇが
廊下に立って外を眺めてる時もあった。
リヴァイ
リヴァイ
…だが、壁外に行った時は必ずと
言って良いくらいあいつらを削がなかった。
何でだろうな、班の奴らが周りで喰われていってんのに。


そこで一旦、息をつくと…

懐かしいものを見るような悲しいものを見るような目で、私の様子を伺っていた。


何か…後悔しているような顔だった。
空気が段々と重くなっていくのを感じ取って、私は声を掛けた。


あなた
あなた
…私の知らない、お父様もいるんですね



自然と出た言葉がそれだった。

2年間…ずっと、側で見てきた「つもり」だった。
涙を流している所も笑っている所も…、楽しそうに話している所も。



お父様が偽りの自分を私に見せていたのかもしれない。
ひとの為だと思っていたんだろう。
けれど…そこから溢れ出すものは、『 偽り 』だって。


小さな私に…貴方が教えてくれた事じゃないか。

あなた
あなた
…人の為、と言っても
それの裏にあるのは、自分の欲望だって
あなた
あなた
私に、言って…ました


私は、正しかったのだろうか。

頼り続けて信じ続けて…自分を作り続けて。




馬鹿らしくなってきて、笑いたくなってきた。

なのに、それなのに…笑えなかった。
その代わりと言っているように…頬を何かが濡らした。


久し振りの感覚だ、何年振りだろうな。

こんな事を言ってしまうと、心が無い人間と思われるかな。


顔はきっとぐちゃぐちゃだろう。
人の前で泣くなんて、本当に馬鹿らしい。









「…ちっ。」






目の前が、瞬間的に暗くなった。

涙で歪んでいるから…状況を掴めない。
それなのに、、、落ち着く。


何なんだろう。この程好い暖かさは…。
眠くなってしまうような、包み込んでくれるような。
ずっと、包まれていたいと思ってしまうような。

そんな…感覚だ。






次回に続くё

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