「外」という単語に反応したようだ。
少し目を輝かしながら、あなたはハンジの方を振り向いた。
まあ…研究の実験体にさえしないなら、良いと思うが。
エルヴィンの返事を聞くと
今度は、俺の方にぱたぱたと駆け寄ってきた。
これで断ったらどうなるんだろうか。
…そんな事を考えても、出来ないがな。
あなたは目元を三日月の形にしながら、喜んでいた。
あああああああああ、可愛い。(?)
…遊びに行く、と言っても何処に行くのだろう。
ハンジはにっこりとしながら、あなたと話している。
ちょっとした鼻歌を歌いながらあなたは
俺を扉まで、引っ張っていく。
やはり、ハンジはにやにやとしながらその後ろを歩いている。
何か企んでいるのは分かるんだが…
あなたが小さくなった事から頭が追い付かない。
自問自答を繰り返しながら、兵舎から街へと向かった。
…
あなたは、目をぱちぱちさせながら
ハンジと俺の間に挟まれながら言った。
小規模だが祭りをやっているらしい。
それが余程楽しいのか、スキップしながら歩いている。
指を差しているのは、
紫色の実がついている果物だった。
元の世界にあったのか味までハンジに説明している。
前話していたが、物が溢れている世界から
来たのに、どうして此処まで喜ぶんだろうか…。
驚いているハンジを見るのが
嬉しいのか、にこにこと喋り続けている。
投っておいたら何処かに行ってしまいそうなくらい元気に。
さりげなく、
二人でいる時間を作ろうとしているな…
呆れているとあなたが、首を傾げて言った。
名前を呼ばれ、はっとした。
何で俺が出てくるんだろうか。
頭の中を?で一杯にしながらにこっとしている
あなたの顔を見た。
褒められているのかどうか分からないが、
俺の行動を良く見ているのだろう。
頭の回転が、幼児化しても良いのは
羨ましいと思う。
「常に、気を配って」
今のあなたにはそれが無い。
純粋で、素直な事が言葉にして言えているから。
いつもそうだったら…と、どうしても思ってしまう。
ハンジは、
頬を膨らませながら口を閉じた。
俺はそれを確認してあなたに少し問い掛けた。
何故、そんな事を思ったのか知りたかったからだ。
あなたはちょっとだけ俯いて、
俺の問いに答えようとしていた。
それを見たハンジが、とんっと肩を叩いた。
確かにそうだ。何か考えがあって言ったなら
悩む仕草は見せないだろう。
それに気付いた俺は、疑問に思った事を言うのを辞めた。
あなたは頷きながら、歩き始めた。
まだ納得いかないような顔だったが
直ぐに、普段の笑顔に戻った。
何か言いたげだったか…言わせる様な事は出来ない。
気にしないようにして、2人の後を追った。
…
それからは、
普通に街を散歩しながら帰った。
いつにも増して、あなたは笑っていたが
少し静かな時があったりした。
やっぱり…何か隠している、のだろうか?
話していると、脚に重みを感じた。
あなたが俺に寄っ掛かっている。
一日中慣れない体で歩き回っていれば
いくら兵士でも、疲れるのだろう。
此所で眠られたら困るので、仕方なく…
またあなたを抱き上げた。
あなたの頬っぺたをぷにぷにと
触っているのが、どうしてか
気に食わなくなってハンジから遠ざけた。
俺達の会話を聞いていた
エルヴィンが、小さく笑みを溢した。
そんなにやり取りが、面白いのだろうか…。
にっこりと、微笑んだエルヴィンは
とても優しい眼差しだった。
微笑ましい光景を見るように。
目を細めて笑っていた。
寝息を立てて眠っている
あなたは、幸せそうに見えた。
まだ…戻って欲しくないような、元のこいつに会いたいような。
頭にどちらも押し寄せてきて、そろそろパンクしそうだ。
夕日が沈んだ、星が見え始めている
空が見える廊下を歩いていく。
この時間帯は…いつも部屋にいるからな。
足音だけが響いて、心が落ち着く。
1日で起こった事が多過ぎて、
頭を整理する時間は、なかったから丁度良い。
1つずつ遡ってみる事にした。
部屋に、着くまで。
次回に続くё
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!