朝の事から、振り返ってみた訳だが
幼児化した体は戻るとして、意識は戻るのだろうか?
もし…今のままだったりしたら、どうするか。
ハンジにもう一度、確認する必要が出てくるな…。
あなたをベットに寝かせ、
エルヴィンの部屋に戻ろうとした。
服を掴んだまま、離そうとしない。
無理矢理手を掴むなんて、俺に出来るはずが無い。
諦めて、ベットの端に座った。
この状態だとあなたが、起きるまで我慢するしか…。
俺はそのまま、寝ているあなたの
邪魔にならない様に横になった。
気が付くと、寝てしまっていたのは言うまでも無い。
―翌朝―
案の定、あなたの隣で寝てしまった。
朝になったら戻ると言っていたが…
幼児化したままの事に気付き
まだ、すやすやと眠っているあなたを見つめた。
改めて見ると、小さかった時も髪は長めで
大人しそうなのに…たまに抜けている所があったり。
成長しても変わらない場所はあるんだな。
少しの間、じーっと観察していると
湯気のようなものがあなたを包み込んだ。
視界がはっきりしてくると、
元の姿に戻っているあなたがいた。
数秒間、理解できなくてその場で固まっていた。
名前を呼びながら無意識にあなたの髪に、
手を伸ばしていた。自分でもしている事が分からない。
すると…閉じていた瞼がゆっくりと開いた。
あなたは、ゆらゆらとしながら上半身を起こした。
目を動かしながらきょろきょろと、辺りを見回していた。
ぐるっと一周して、俺と目が合った。
首を少しだけ傾けながら、目をぱちぱちさせている。
何故焦ったりしないんだ?何かあったのだろうか…。
固まっているのが気になったのか、
小さな声で控え目に問い掛けてきた。
どんな時でも、俺を心配してくれる
元のあなたに戻っていた。
頭の上に?を浮かべているあなたの顔を見つめながら、
綺麗なさらさらの、髪の毛をそっと撫でた。
あなたは少しだけ微笑んで、
懐かしいものを見るように
自分の頭に乗っている手を見つめていた。
理解できなくて、あなたを見ると
笑っているのに涙を浮かべていた。
泣いているのにどうしてそんな…、
俺が好きな顔をする?
にこっとしているあなたは、
昨日までの笑顔にそっくりだった。
あなたは、やっぱり似合うんだな。
そんな事を考えながらも、笑い返すと
満足そうに撫でられていた。
溜め息をつきながら言うと、
幸せそうに頷いた。
この時間が、ずっと続きますように___。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。