私達は、立体起動装置をつけて
木と木を乗り継いで行く、訓練をしていた。
初めてにしては良いだろうと
キース教官に褒められて、密かに嬉しく思っていると
突然後ろから頭に手を置かれた。
私に用がある人なんているのだろうか…。
リヴァイさんだった。
朝から来てくれると思ってなくて
少し驚いたが…手を置く必要なんて、あったのか?
考えていると、周りからの視線があるのに気づいた。
兵士長…か。何だろう?
リヴァイさん特有の役職なのだろうか。
そう考えても、人類最強の意味が分からない。
リヴァイさんにしか出来ない、物があるのだろうか。
小さく溜め息をしながら
私の頭をかき回した。
撫でる、っていうかかき回すの方が
合っていると思うぐらいに。
リヴァイさんといると、
理解出来ない事が多い…。
私が静かだからだろうか?
言葉の意味が良く分からなくて、リヴァイさんに
わしゃわしゃとされていた。
中々、理解出来ないでいると
奥からハンジさんも小走りで
此方に向かってきた。
私と会うのが、楽しみだったのだろうか…。
…それは考えすぎかな。
私とリヴァイさんを引き剥がすように
腕を引っ張りながら、ハンジさんが質問した。
これでも一応、訓練中だから離して欲しいのだが…
それを2人に言ったら、何を言われるか怖くなって、
その場で固まっていた。
言い争っているリヴァイさんと
ハンジさんにお辞儀をしてから
立体起動装置の訓練に戻った。
喧嘩、終わると良いけどな…。
何も無かった様に、訓練の仕方を
教えてくれるミカサさんを
素直に優しい、と思えた。
無事に合格ラインを突破した私は、
104期生の皆に囲まれていた。
まあ…大方予想はついているけど。
エレンさんの言い方に圧倒され、
何も言えなくなった私の代わりに
それを見ていたリヴァイさんが
平然とした顔で言った。
どうしてそんなに、普通に
答えれるのだろうか…。
何を、と答える前に
眉を寄せながらリヴァイさんが言った。
あながち、間違ってはいないけど。
壁の外でリヴァイさんに会っていなかったら、
死んでいたかもしれないから、反論は出来ない。
でも…もう少し言い方って言うものが
あるのでは無いだろうか?
口パクで、ハンジさんが
「ご め ん ね」と言っているのが分かった。
謝るのは貴女では無いけど、
気持ちは受け取っておこう。
とりあえず、
私を庇って(?)くれたのだと
思い、苦笑いで返した。
それに今私が此所で反対しても
この話は終わらないと思うし。
ジャンさんがエレンさんを煽ると、
負けず嫌いなのであろうエレンさんは
ジャンさんを凄い目で睨んでいた。
リヴァイさんがいるから抵抗しないのか。
なら…リヴァイさんの事を尊敬してるって事だな。
無言で立ち去っていくリヴァイさんと、
手を振りながら帰っていくハンジさんが
見えなくなると、安心したような
寂しいような…気がした。
格闘術か、柔道は少し
やった事があるけど…
こんな所で生かせるのだろうか…。
出来るのかと心配になりながら、
ミカサさんの説明を聞いた。
近接格闘術って、
ナイフとかの刃物も使うんだっけ。
本で読んだ事を使う日が
来るなんて思わなかった。
意味が無いなら真剣に
やらなくても良いのだろうか?
それもそれで駄目な気がするが…。
技のやり方だけ覚えておけば、良いのかな。
…リヴァイさんと一緒にいれば、か。
私は隣にいれるのだろうか?
此処まで尊敬されて、名前を知られて
いるなら、いつかいられなくなる。
そんな事分かってるけど…
私を守ってくれる、そんな優しい人じゃない。
私の肩をとんっと叩いて
エレンさんは、ペアを組みに行ってしまった。
リヴァイさんの事を、私より知っているの
だと思う。当たり前のことだけれど。
関わってきた上で、注意をしてくれたのか。
ただ、思った事を言ったのか。
私には…分からない。
ミカサさんは、一言だけ言うと
すたすたとエレンさんを追って先に行ってしまった。
呼び捨てで良いって、そんな簡単に出来るのか。
…友達だと、思って良いのかな。
その会話を、リヴァイさんが
聞いていたなんて思わず
私もミカサさん…、ミカサを
駆け足で追った。
次回に続くё
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!