ひとしきり泣いた後、私は涙をぬぐって教室へ戻った。
そこに華澄ちゃん達はおらず、いるのは音葉ちゃんと、あと少しの生徒のみ。
皆きっと外に行っているんだろう。
私にとっては好都合だ。涙の跡を大勢に気づかれずにすむし、他の人の目を気にせず音葉ちゃんに話しかけられるから。
音葉ちゃんは驚いたような表情をしていた。
そりゃそうだ。急に「友達になってくれる?」なんて聞かれたんだから。
友達じゃなかった?なんて笑いながら聞いてくる彼女。
今までの関係は私にとって“偽物の友達“だ。
だって他の人に縛られて、周りの目を気にして。
そんなの、本当の友達じゃない。
だから今からは“本当の友達“。
偽ること、気にすることなんてなにもない。
そんな友達。
音葉ちゃんは不思議そうに聞いてくる。
今まで気持ち悪いと言われてきたんだろう。
でも、優しい音葉ちゃんは気持ち悪くなんてない。
私は笑って、そう答えた。
それを聞いて彼女もニコッと笑ってくれる。
その笑顔を見て、自分に正直になれてよかったな。
改めてそう思った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。