僕の名前は、冬島 春
運動が苦手で、星を眺めるのが好きで
ごく普通の男子高校生なんだけど・・・
たまに、僕の事を、癒しの存在とか
可愛いとか言ってくる人がいるけど
それは、つまり、僕があんまり男らしく
ないって事なんだよね・・・
僕には、高校入学当時から、お世話に
なってる先生がいる。
根元 敦先生っていって、国語の先生。
2年生になった現在は、僕のクラスの担任の
先生になってくれた。
僕は、あっちゃん先生が好きだ。
好きになった理由・・・それは
今から1年前の桜の咲く季節の日のことだった。
幼馴染のそー君と、走りながら
体育館に向かった。
全校集会が、終わって、その日は
お昼下校になった。
まだ、1年生だった僕は、寮に帰る
道を間違えて、草が生茂る、庭のような
場所に出た・・・
僕が、歩いていると、突然腕を
誰かに掴まれた!!
怖そうな見た目の上級生が、ゾロゾロと
僕を囲む・・・
これは、逃げられない・・・怖い、怖い
僕が、謝っても、ぜんぜん許してくれない。
僕は、クルっと方向を変え、猛ダッシュ
した。
ドサッと、背中を、押さえられ、
身動きが取れず、地面に転がる僕。
僕が、もうダメだと思い、目をギュッと
つぶった瞬間、パンパンと手をたたく
音がした・・・誰?
先生?らしき人に、そう言われて
僕を、囲んでいた上級生たちは、
パラパラと散らばり、どこかに
行ってしまった。
先生が、僕の前に手を差し出す。
僕は、先生の手を握り、立ち上がった。
まだ、さっきの恐怖が残っていて
体が震える。
先生は、うなずくと、優しく
僕の頭をなでた。
名前というか、こんな先生いたんだ?
程度の僕には、答えられない質問だった。
先生は、ハアと、ため息をつくと
僕の前にしゃがみ、「背中にのれ」って
言ってきた。
膝を見ると、確かにかなり、深く
すりむいたようで、血が流れていた
血が止まらない・・・だんだん
痛みも感じるようになってきた。
ガバッと、先生にかつがれた!
フワッと僕を持ち上げ、歩き出す。
バタバタと、足を動かし、抵抗する
ズキーーーン
先生に、かつがれ・・・恥ずかしさ
で、いっぱいになる。
みっ・・・見られたあああ
こんな恥ずかしい格好・・・そー君に
見られたああ
もう、嫌だ!この先生キライっ
先生は、ニヤッと笑う
今の状況で、この言葉は
あまりにも説得力が、なさすぎる・・・
保健室に、着き、僕を下ろしてくれた
先生。
僕は、椅子に座り、先生が、バンソーコーを
持ってきてくれるのを、待つ。
ギュッと、二の腕を、先生に
掴まれる
先生は、僕の膝を消毒しながら
話す
この先生は、遠慮というものを、
知らないのではないか、とさえ思う。
謎の決めポーズを、決めながら、
先生はドヤ顔を、する。
先生の、イジワル・・・
先生は、バンソーコーを、ペタッと
はり、イジワルそうな笑顔を、
浮かべている。
ギッと、先生をにらむ
笑いながら、涙目になっている
ガタンと、立ち上がったひょうしに、
先生のズボンの裾を、ふみ
つまずいて、転んでしまった・・・
カシャン・・・
メガネが弾き飛ぶ音がした・・
どうやら、先生の上に僕は、
倒れて、乗っかっていた・・・
あれっ?
僕は、倒れてる先生の顔を、のぞきこんだ
メガネをかけていない、先生は、
なんだか新鮮で、少しカッコいいと
思ってしまう。
僕は、ぴょんと、先生から
おりた。
キョロキョロと、辺りを見回している
先生。
ゴツンと、頭をぶつけた僕と先生
そして、さんざん今まで、僕を
からかっていた先生の、弱点をみつけた
僕は、少し先生に仕返しを、してやろうと
考えた。
こちょこちょと、先生の体を
くすぐる
先生は、ギュッと目をこらしめ
視界を狭くする
ガバッと、腰に手を回され
動けなくなる僕・・・
光がさしこみ、僕を見送りながら
笑う先生の笑顔は、どんなものより
輝いて見えた・・・
その後、先生を見ると、心が
フワフワしたり、ドキドキしたり
そんなんことは、初めてで、どうしていいか
わからなかったけど、そー君に相談して
僕は、あっちゃん先生のことが、好きなんだ
と、気づいた。
僕は、先生にいつか告白したい。
たとえ、先生と両想いになれなくても
この好きになった気持ちは、嘘じゃないから
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!