第8話

プチストーリー『春とあっちゃん』
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2019/10/18 07:49
僕の名前は、冬島ふゆじま はる

運動が苦手で、星を眺めるのが好きで

ごく普通の男子高校生なんだけど・・・
男子生徒
男子生徒
春ちゃん、おはよ〜
冬島 春
冬島 春
おっ、おはよう西田君
男子生徒
男子生徒
は〜、今日も春ちゃんは、可愛いな
俺の癒しだよ
冬島 春
冬島 春
いっ、癒し?
たまに、僕の事を、癒しの存在とか
可愛いとか言ってくる人がいるけど

それは、つまり、僕があんまり男らしく
ないって事なんだよね・・・
冬島 春
冬島 春
それじゃあ、あっちゃん先生に
好きになってもらえないよ・・・
僕には、高校入学当時から、お世話に
なってる先生がいる。

根元ねもと あつし先生っていって、国語の先生。

2年生になった現在は、僕のクラスの担任の
先生になってくれた。

僕は、あっちゃん先生が好きだ。
好きになった理由・・・それは
今から1年前の桜の咲く季節の日のことだった。
桐ヶ谷  宙
桐ヶ谷 宙
おーい、はる〜、全校集会だから
先に体育館行ってるぞ!
冬島 春
冬島 春
わっ!まって、まって!そー君、僕も
一緒に行くから
幼馴染のそー君と、走りながら
体育館に向かった。

全校集会が、終わって、その日は
お昼下校になった。

まだ、1年生だった僕は、寮に帰る
道を間違えて、草が生茂る、庭のような
場所に出た・・・
冬島 春
冬島 春
あれっ?こっちじゃ・・・なかったっけ?
僕が、歩いていると、突然腕を
誰かに掴まれた!!
冬島 春
冬島 春
わっ!
男子生徒
男子生徒
おい・・・1年坊主が、なんで、
俺たちの縄張りに入ってきてんだよ!?
怖そうな見た目の上級生が、ゾロゾロと
僕を囲む・・・

これは、逃げられない・・・怖い、怖い
冬島 春
冬島 春
ゴメンなさい!すぐ、ここから
出ますから
僕が、謝っても、ぜんぜん許してくれない。

僕は、クルっと方向を変え、猛ダッシュ
した。
男子生徒
男子生徒
コラッ!逃げんな
ドサッと、背中を、押さえられ、
身動きが取れず、地面に転がる僕。
男子生徒
男子生徒
ただで、すむと思うなよ・・・
冬島 春
冬島 春
うっ・・・
僕が、もうダメだと思い、目をギュッと
つぶった瞬間、パンパンと手をたたく

音がした・・・誰?
男子生徒
男子生徒
ゲッ・・・せんこうが来た
根元 淳先生
根元 淳先生
せんこうじゃなくて、先生だろ?
根元 淳先生
根元 淳先生
な〜に、下級生いじめちゃってんの
根元 淳先生
根元 淳先生
ほらっ、お前たち、そんなこと
してると、通知表に書いちゃうぞ?
男子生徒
男子生徒
ケッ、ふざけやがって!
先生?らしき人に、そう言われて
僕を、囲んでいた上級生たちは、

パラパラと散らばり、どこかに
行ってしまった。
根元 淳先生
根元 淳先生
おい、大丈夫か?
先生が、僕の前に手を差し出す。
根元 淳先生
根元 淳先生
あいつら、ちょっと、血の気が
多い連中でさ、たまにこうして
根元 淳先生
根元 淳先生
見回りしないと、なにしでかすか
わかんねえわけよ
僕は、先生の手を握り、立ち上がった。
冬島 春
冬島 春
た・・・助けてくださって
ありがとうございます・・・
まだ、さっきの恐怖が残っていて
体が震える。
根元 淳先生
根元 淳先生
お前、新入生か?
冬島 春
冬島 春
えっと、はい。今年から、この
高校に通ってる1年の冬島 春です。
先生は、うなずくと、優しく
僕の頭をなでた。
根元 淳先生
根元 淳先生
怖かったな。
根元 淳先生
根元 淳先生
俺は、この学校勤めて、まだ1年しか
たってねえけど、まあ新米教師として
がんばってる
根元 淳先生
根元 淳先生
俺の名前、覚えてる?さっき
挨拶スピーチしたけど
冬島 春
冬島 春
名前?
名前というか、こんな先生いたんだ?
程度の僕には、答えられない質問だった。
根元 淳先生
根元 淳先生
お前、ちゃんと俺のスピーチ聞いてたの
かよ?緊張して、頑張ったのに
先生は、ハアと、ため息をつくと
僕の前にしゃがみ、「背中にのれ」って

言ってきた。
冬島 春
冬島 春
いや、そんな・・・
根元 淳先生
根元 淳先生
お前、背中押さえられた時、
両膝すりむいて、血がすごく出てるんですけど?
冬島 春
冬島 春
えっ?血・・・
膝を見ると、確かにかなり、深く
すりむいたようで、血が流れていた
冬島 春
冬島 春
怖くて、痛みもわかんなくなっちゃって
たかもです・・・
血が止まらない・・・だんだん
痛みも感じるようになってきた。
根元 淳先生
根元 淳先生
ハア、お前は、俺の言う事
きかないんだなあ
冬島 春
冬島 春
えっ?
ガバッと、先生にかつがれた!

フワッと僕を持ち上げ、歩き出す。
冬島 春
冬島 春
なななっ!なにするんですか!?
根元 淳先生
根元 淳先生
何って、背中にのれって言ってんのに
乗らねえから、強制連行してる
冬島 春
冬島 春
強制連行!?
根元 淳先生
根元 淳先生
保健室で、止血しないとな
冬島 春
冬島 春
ヤダヤダ!僕、自分で、歩けます
バタバタと、足を動かし、抵抗する
根元 淳先生
根元 淳先生
こらっ、暴れるなバカ
ズキーーーン
冬島 春
冬島 春
っ痛たあああ
根元 淳先生
根元 淳先生
ほら、俺の言うとおり、おとなしく
してれば、いいものを・・・
先生に、かつがれ・・・恥ずかしさ
で、いっぱいになる。
桐ヶ谷  宙
桐ヶ谷 宙
あれっ?あっちゃん、春・・・
2人で、何してんだ?
冬島 春
冬島 春
えっ?
みっ・・・見られたあああ

こんな恥ずかしい格好・・・そー君に
見られたああ

もう、嫌だ!この先生キライっ
根元 淳先生
根元 淳先生
何をしているでしょう?
先生は、ニヤッと笑う
桐ヶ谷  宙
桐ヶ谷 宙
わかんねえけど、あっちゃん、
春に変なことだけは、すんなよ?
桐ヶ谷  宙
桐ヶ谷 宙
それじゃあ、俺行くから・・・
冬島 春
冬島 春
違う!そー君・・・僕たちは
変なことなんて、してないよ!?
今の状況で、この言葉は
あまりにも説得力が、なさすぎる・・・
冬島 春
冬島 春
先生・・・重くない?
根元 淳先生
根元 淳先生
重くは、ないけど・・・
保健室に、着き、僕を下ろしてくれた
先生。

僕は、椅子に座り、先生が、バンソーコーを
持ってきてくれるのを、待つ。
冬島 春
冬島 春
保健室の先生、いないですね
根元 淳先生
根元 淳先生
・・・
ギュッと、二の腕を、先生に
掴まれる
冬島 春
冬島 春
先生?
根元 淳先生
根元 淳先生
お前、ちゃんと、飯は食べてるか?
ちょっと痩せすぎだぞ?腕、ひょろいし
冬島 春
冬島 春
えっと・・・野菜とか嫌いで
そのせいで、あんまり体重増えなくて
先生は、僕の膝を消毒しながら
話す
根元 淳先生
根元 淳先生
いいか、健康に大切なのは、
睡眠、そして食事だ
根元 淳先生
根元 淳先生
好き嫌いばかりしてると、いつまでも
チビのままだぞ
冬島 春
冬島 春
チッ・・・
冬島 春
冬島 春
チビじゃないです・・・
この先生は、遠慮というものを、
知らないのではないか、とさえ思う。
冬島 春
冬島 春
じゃあ、先生は、好き嫌いないんですね?
根元 淳先生
根元 淳先生
ああ、俺は、なんでも食べる。
だから、デカくなれた。
謎の決めポーズを、決めながら、
先生はドヤ顔を、する。

先生の、イジワル・・・
冬島 春
冬島 春
僕だって、すぐに大きくなって
みせるもん
根元 淳先生
根元 淳先生
じゃあ、まず、好き嫌いから
直しましょーね?
根元 淳先生
根元 淳先生
春ちゃん
冬島 春
冬島 春
こ、子供扱いしないでください!!
先生は、バンソーコーを、ペタッと
はり、イジワルそうな笑顔を、

浮かべている。
冬島 春
冬島 春
先生、僕にイジワルなこと、ばかり
言ってくる、ヒドイですよ?
ギッと、先生をにらむ
根元 淳先生
根元 淳先生
イジワルなんか、してねえよ
根元 淳先生
根元 淳先生
そう、これは、イジワルではなく、
愛情表現の笑顔だ
根元 淳先生
根元 淳先生
お前を・・・クスッ、バカになんて
クッ・・・してねえよ?
笑いながら、涙目になっている
冬島 春
冬島 春
もうっ!
ガタンと、立ち上がったひょうしに、
先生のズボンの裾を、ふみ

つまずいて、転んでしまった・・・
カシャン・・・

メガネが弾き飛ぶ音がした・・
冬島 春
冬島 春
イテテテ・・・
根元 敦先生
根元 敦先生
おい、春・・・どけろよ
はやく
どうやら、先生の上に僕は、
倒れて、乗っかっていた・・・

あれっ?
冬島 春
冬島 春
先生・・・けっこうカッコいい顔
してたんですね
僕は、倒れてる先生の顔を、のぞきこんだ

メガネをかけていない、先生は、

なんだか新鮮で、少しカッコいいと
思ってしまう。
根元 敦先生
根元 敦先生
顔が、近いんだよ!
冬島 春
冬島 春
あっ!すみません
僕は、ぴょんと、先生から
おりた。
根元 敦先生
根元 敦先生
あれ?俺のメガネどこいった?
キョロキョロと、辺りを見回している
先生。
根元 敦先生
根元 敦先生
ん?
冬島 春
冬島 春
いたっ!
ゴツンと、頭をぶつけた僕と先生
根元 敦先生
根元 敦先生
悪い、メガネないと、なにも
見えないんだ・・・
冬島 春
冬島 春
そうなんですか・・・
そして、さんざん今まで、僕を
からかっていた先生の、弱点をみつけた

僕は、少し先生に仕返しを、してやろうと
考えた。
冬島 春
冬島 春
今なら・・・
根元 敦先生
根元 敦先生
は?
冬島 春
冬島 春
くらえええ
こちょこちょと、先生の体を
くすぐる
根元 敦先生
根元 敦先生
おい、アハハ、春・・・フフフ
やめろ!
冬島 春
冬島 春
僕のこと、からかった、バツです
根元 敦先生
根元 敦先生
ククク・・・お前、大人を
怒らせたら、怖いんだぞ
先生は、ギュッと目をこらしめ
視界を狭くする
根元 敦先生
根元 敦先生
いいかげんに、しろっ
ガバッと、腰に手を回され
動けなくなる僕・・・
冬島 春
冬島 春
み、見えないんじゃなかったの?
根元 敦先生
根元 敦先生
お前の行動ぐらい、見なくても
わかるんだ
冬島 春
冬島 春
ゴメンなさい
根元 敦先生
根元 敦先生
ったく、今日は、お前のせいで
クタクタだよ
根元 敦先生
根元 敦先生
まあ、少しは楽しかったけどな
根元 敦先生
根元 敦先生
ちゃんと、寮へ帰れよ?
地図渡したからな?
冬島 春
冬島 春
ありがとうございます!
根元 敦先生
根元 敦先生
また、明日な
冬島 春
冬島 春
光がさしこみ、僕を見送りながら
笑う先生の笑顔は、どんなものより

輝いて見えた・・・

その後、先生を見ると、心が
フワフワしたり、ドキドキしたり

そんなんことは、初めてで、どうしていいか
わからなかったけど、そー君に相談して

僕は、あっちゃん先生のことが、好きなんだ
と、気づいた。

僕は、先生にいつか告白したい。
たとえ、先生と両想いになれなくても

この好きになった気持ちは、嘘じゃないから

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