文化祭2日目の前夜・・・・
カリ・・・カリ・・・・
僕、天馬 海星は、
一君との、文化祭を、スムーズに
回る計画を、1人熱心に立てていた。
僕が、扉の方を、振り替えると
ため息をつきながら、におうだちしてる
雅久が、顔をしかめた。
僕は、再び、ノートに一君と
回るデートプランを、考える事にした。
静かに、僕に近づく雅久・・・
サラリと、僕の前髪に、触れる。
雅久が、少しかがみながら、僕の
顔を、ジッと見る。
サッ、サッ・・・
慌てて、前髪を、元に戻して
顔を隠した僕・・・・
僕は、他人にこの顔を見られるのが
嫌いだ・・・そう、僕は、自分の
この顔が、大っ嫌い・・・
そう・・・
僕が、自分の顔を、隠し始めたのは、
子供の頃に一君に
言われた、ある一言が原因だった・・・・
さかのぼる事・・・・10年ほど前・・・
これが、まだ子供だった時の
僕・・・・そして
この子が、僕の大好きな一君。
この、いかにも元気のいい奴は、
雅久・・・・
そう、この頃、僕のライバルは、
兄さんだった。
なにかと、僕と一君の仲を
邪魔する迷惑な存在で、僕は、そのせいで
いつも、一君を独り占め
できなかった・・・
僕と、一君、ついでのに雅久の、
家は、隣同士だったため、すぐに
出入りできるせいで、高校生になった
現在も、たびたび、いや毎日雅久に
僕の部屋は、不法侵入されている。
ガチャ・・・・
毛布に、くるまっていた兄さんが、
むくりと起き上がる。
雅久の、デカイ声が部屋中に
響き、僕は、思わずため息をつく。
その時、僕と兄さんの前に
割り込んできた奴がいた。
そう、雅久だ・・・
兄さんの次に、僕にとって邪魔な存在。
ここぞというときに、邪魔されるのは、
コイツのせいだと、僕は思っている。
僕は、わがままだったと思う・・・
末っ子なんて、そんなものだよ・・・
でも、どうせなら・・・僕が、先に
生まれたかった・・・そしたら
一君の、横にいたのは僕だった
はずなんだもん・・・・
コポポポポ・・・・
ジュースを、注ぎながら
僕は、ハアと深いため息をつく。
明るい笑みを浮かべながら
僕を、見つめる雅久・・・
僕とは、まるで考えてる事も
違うんだろうな・・・良いなぁ
次の、ジュースをコップに
注ぎながら、雅久に話しかける。
そうだ、多分・・・自分でも
わかってた・・・
兄さんや、雅久の事を邪魔扱い
してる僕は、わがままで・・・
そして、自己中・・・こんな僕は
一君になんか、好きになんて
なってもらえない・・・
気が付けば、目から大量の涙が
こぼれてきていた・・・
よしよしと、僕の頭をなでて
くれる雅久。
全然、嬉しくないはずなのに・・・
雅久の優しさが伝わってきて・・・
すごく安心できた・・・
僕を、なでながら
心配そうな、顔をして、雅久が、
僕に問いかける・・・
雅久は、何か、思いついたように
兄さんたちのいる部屋へと、走って
行った・・・
そして、数分後・・・
雅久が、一君、ついでに兄さん
を、連れて僕の前に戻ってきた。
まだ、一君に、告白する
勇気さえなかった僕は、一気に
顔が、赤くなり恥ずかしさで
心臓が、ドクドクと音をたてた。
助けを、求めるように
兄さんの、方を見たが・・・
兄さんには、まったくわかって
いなく、首を横に傾げるだけだった。
そう、口を開きかけたとき
先に、言葉を発したのは、一君
の、方だった・・・
一君は、かすかに微笑んだけど、
それっきりうんとも、すんとも
言わなかった・・・たぶん
あの時からだ。童顔だった自分の顔を
隠しはじめたのは・・・
まだ、自分から好きだという前に
振られてしまった僕は、心が
トゲトゲで、覆われたような気持ちになった。
そして・・・長い長いトラウマを
思い出していた、僕は、ユサユサと
雅久に、揺さぶられて再び
現実に戻った。
本当に、コイツだけは、僕に
かまってくるんだから・・・
僕は、たいして愛想も良くない
猫被りなのに・・・
リュックから、コンビニの
肉まんを取り出す・・・
カプッ・・・
僕は、雅久の持ってる肉まんを
かじった。
そして、もぐもぐと食べた。
固まる、雅久・・・
雅久は、ニイと、笑うと
すました顔で答える。
ガシャっ・・・
ビックリして、思わず机の上に
置いていた、ペンやノートを
床に落としてしまった・・・・
そして、僕の心臓は、一君に
告白しようとしてた時より、うるさい音を、
たてていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。