宙君は、「オホン」と
咳払いをして、話を始めた。
最後の方が、棒読みになっていた
事は、置いといて・・・
宙君は、意外に気にするタイプだった。
知らなかった。
さっきまで「気にしてないです」と
言ってたのは、本当は、嘘で
かなり、傷ついてるようだ。
本当に申し訳ないよ。
こんな事言って、ますます空気が
悪くなる・・・・
俺は、バカか・・バカだな。
いちいち、宙君の言葉が
グサグサと、心臓に刺さる・・・
逃げ場は、ない・・・言うしかないよね
急に、立ち上がった宙君は
かなり、驚いた表情をしている
宙君に、気持ち悪がられると
思った。
しかし、宙君は、「あわわ」と
騒いでいるだけで、俺への見方を変えるとか
そういう事は、してこなかった。
宙君の、顔がボンっと、赤くなる。
クルッと、宙君は、俺の方向に
体を向けると、俺の首元の方を
グイッと、引っ張った。
そして、宙君が、俺に
優しくキスをした。
チュっ
へなへなと、体の力が抜ける。
頭で?のマークで溢れている。
宙君は、耳まで赤くして
フイッと、横を向いた。
その言葉を聞いて、俺は嬉しくなる。
宙君に、そんな事を言われるなんて
変な感じだ・・・説明できないけど
宙君は、俺に手を差し出してきた。
俺は、「よろしく」と
手を握り返した。
俺と宙君は、現在食堂で、
夜ご飯を食べていた。
ズズズと、ラーメンをすすりながら
宙君が、首を傾げる。
よくわからないけど、まあ
俺は、今幸せかも・・・
でも、宙君からは、「好き」って、
まだ言ってもらえてないな・・・
そんな事は、よくばりなのだろうか。
浮かれてるのは、俺だけだよね
ヤバイ、ガン見してたとか、
よくないよね・・・
食器を片付け終わった一希が、
俺たちを見つけて、かまいに来た。
ガシガシと、一希に頭をなでられ
と、抵抗する。
宙君が、ツーンとすました顔で
答える。
夜・・・
俺は、自分のベッドでマリンちゃんの
フィギュアに「おやすみ」と、言って
布団を被る。
しかし、すぐに宙君にキスされた事を
思い出して、なかなか眠れない。
思い出すと、すぐに体が熱くなり
心臓がうるさくなる・・・・
たぶん、宙君も、こんな感じだったのかな。
静かに、自分のうるさい心臓を
おさえながら、俺は、眠った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!