第11話

この過去は?
18
2021/06/16 13:36
ゆっくりと沈んでいく。
ここは、海?
周りを見渡しても灰色に染まっている。
まるで、私のこころみたい。
しかも、息できるし。
魚はいないんだな。
····喋れないな。
いや、喋れないんじゃない。この空間が静かすぎて喋っていけない気がしてるんだ。
なんだかこの空間が心地よい。
「何も考えなくていい。」そう言われているみたいで。
ゆっくりとまばたきをしていく。
気がつくと目の前に砂嵐のモニターがあった。
時空を割って出ているのか?
少し遠いところにあるので、手を伸ばしてみた。
きっと届かないのだろう。
けど、もし届くのならば····
そう思っていると画面になにか映った。
これは···私の過去?
両親が宗教にどっぷりハマっていたこと。
その宗教の偉い人に売られたこと。
それが嫌でとっさに逃げたこと。
夜なんてあのときは汚くて、怖くて、吐き気がした。
そのまま警察に見つかって私みたいな子が集まるところに連れてかれて····
“今の”両親に出会った。
その時は特に人間不信で、よく家を飛び出し路地裏で座っていた。
路地裏は、向こうの世界との境目みたいで暗くてこちらのほうが落ち着いた。
今でも夜の路地裏は、好きでよく行く。
ある日は辛くて、路地裏で拾った包丁を握って行き止まりの方まで行って自分に振るった。
だが、あの方に防がれた。
気配は感じなくて、気づいたら目の前に制服を着て、立っていた。
弾かれた包丁が床につき、音がなる瞬間、胸ぐらを掴まれた。
「死のうとしたらだめだ!」
その時ハッとした。
私は何をしていたんだろうと、ぺたんと床に座り込み己のやったことの怖さに泣き叫んでしまった。
少し慌てた表情したあの方は、とっさに私を包み込み、「大丈夫だよ。怖かったね。なにかあったならいってみな?」と言った。
みんなはなんてことないと思うが、私はその言葉に救われた。
私が長々と話し続けようとすると、「ここだとつらいよね。」とあるバーに連れて行かれた。
少し怖かったが、あの方は優しく相談に乗ってくれた。
最後まで聞いて、あの方はこう言った。
「私のところに来ないかい?」
聞いた瞬間、不安が心に渦を巻いたが“行く”としか頭に浮かばなかった。
その日から私は親を信じ、友達ができ、家を出ることもなくなった
そして帰ってくると、ランドセルを投げ捨ていつものお仕事グッズを持って走り抜けた。
    “けど、それで良かったのかな。”
そんな言葉が頭を過ると、モニターから自分が出てきた。
そう、「夜の私」だ。
「まだ迷ってんの?」
迷ってなんて····ない!
つかもうとしてきた手を振り払い、戦闘態勢に入った。
「迷ってないならさー、やることわかってんじゃないの?」
分かってるよ。そんなもの。
あの方は、命の恩人。だから、役に立たないと。
「なーら、殺そうよ。」
だれを?
「鈴木 綾乃を。」
ギリッ
本気できれた気がした。
拳が当たるときに明るくなった。
ピピピ
楓
ん、
楓
夢ー?
ピッ
楓
今日は日曜日か。ナイトパーフェクトも今日はお休みだな。
楓
しかも、今日って····
楓
綾乃と遊ぶ日!?
楓
やば!?何時集合だっけ?!
楓
七時、まだよゆーだ。
楓
ふー。
はっと昨日のことを思い出す。
楓
あ、行きたくねー。
楓
····とりあえず用意するか。
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鈴木綾乃
鈴木綾乃
えっと、間に合ったなー。
鈴木綾乃
鈴木綾乃
結構まだ時間あるなー。
鈴木綾乃
鈴木綾乃
····
鈴木綾乃
鈴木綾乃
なんでお前出てくんの?
カラス
カラス
お出かけなんて面白そうだろ!
鈴木綾乃
鈴木綾乃
まあ、ね。
楓
ふー、あ、ごめんまった?
鈴木綾乃
鈴木綾乃
い、いや全然
楓
そっかー
カラス
カラス
よっ、
楓
え?
続く

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