第5話

4 後編 曲がり角がくれたもの
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2019/03/12 13:05
((時系列的には2人が再び会うちょっと前からになっています))



You side.




近づいてきた…あの曲がり角…


流石にいないよね…なんて思っていたけど


あなた「え…嘘…」


なんかきょろきょろしている昨日と変わらないマスク&眼鏡姿の彼がいた。


か、可愛い…


…変な思いを仕舞い込み、こちらには気づいていないっぽいので声をかけてみることにした。


あなた「…あの!


来てくれた、んですか…?」


そういうと彼は頬を掻きながら


レトルト「うん…まぁ明日もって言うてくれたし…」


ううぅ…朝からこんなの最高すぎるよ…


でも平常心…平常心…


あなた「覚えててくれたんですね…なんか、嬉しいです」


私の言葉になにかあったのか、一瞬びっくりしたような顔(目)をする彼。


レトルト「まぁ…ね」







…………







気まずい沈黙が辺りを支配する。


私はこういう沈黙が大嫌いだった。何を言えばいいのか分からないし、相手にも迷惑な時間だから。


なにか言わねば…


レトルト「あのs」
あなた「そうi」


やっちゃったあああああああああああああぁぁぁ!!?

ああぁぁぁせっかくレトさんが話しかけてくれたのになにしてんのわたしぃぃぃぃいぃぃ!?


またしても自分のコミュニケーション能力を恨む。






レトルト「…先、ええよ?」


唐突にそんな声がとんできた。


きっと彼なりの優しさなんだろうな…

申し訳ないなぁ…と思いつつ、私の中に生まれつつある変な感情を心の奥底に仕舞いこんで、私は思ったことを口にした。


あなた「なんか…すみません……えっと…その、また来てくださったっていうのはすんごく、嬉しいんですけど…ただの1人の視聴者、なのに…私なんかとお話して大丈夫なんですか…?」


ただの質問なのに、私の声はふるえていた。


きっと彼は気づきもしないことだけど。


そんな自虐に心の中で自嘲していたら思いもよらない言葉が返ってきた。


レトルト「確かにほかの視聴者さんに申し訳ないかもしれない。でも、俺と話したからってあなたちゃんが悪いわけやないし、罪悪感も責任感も、負わなくてええんやで…?」


彼がなにを言っているのか、一瞬理解できなかった。

ただわかるのは、彼が心配してくれているというのと、名前を覚えてて貰えたことがどうしようもなく嬉しかったということだった。


あなた「レトさんが…あっ…レトルトさんがそう言ってくれるなら私も安心です…」


私もちゃんとした返事がしたかったがこれが限界だった。


しかも今まで馴れ馴れしく「レトさん」呼びをしていた。失礼極まりない…というか慌てて訂正したのがもっと失礼だということにも気づいてしまった。


しかし彼は私の気持ちなんてお構い無しに言う。


レトルト「俺のことは気にせんでええから!それと、レトさんって呼んでもらってええよ。俺も…さっきは勝手にあなたちゃんって呼んじゃったけど嫌なら言ってな?」


こんな自己否定にまみれている私でもわかる、優しい言葉。












きっと同じ言葉を他の人に言われても優しい、なんて思わないんだろうな。








彼が言ってくれるから、優しいって思えるんだ。
























…なにを考えているんだろう私は…




こんなこと、思っちゃいけない…










と、とりあえず、お礼しないと…




あなた「あ、ありがとうございます…!ふふっ…笑 私はちゃん付けで呼んでもらって嬉しかったですよ」


嬉しい…?


そんなこと、思ってもいなかっ…た…?














…いや、本当は思ってた。でも絶対に口にはしていけない言葉なのは分かっていたし、彼にも迷惑だということはもっと分かりきっていた…のに


あなた「…あ…そろそろ行かないと…」


気がつくと私は逃げようとしていた。


レトルト「え、もうそんな時間なん」


彼の声には驚きと困惑が混じっている。







きっと迷惑だ。考えては、思ってはいけない。





"彼"は憧れであるだけだ…



あなた「っ…すみません…今日は大学休めないので……」


言っちゃダメだ。こんなこと、これ以上彼と関係を持とうとしちゃ、


あなた「あ、あのっ…また明日、時間あったらでいいので…少しだけお話、しませんか…?」


レトルト「んえ…?」


必死に止めていた。止めていたけど、でも




自分の想いを、止められなかった…



きっと今、レトさんは困惑している。


私は自分のことしか考えられないようなやつなんだ…。



途端、彼は咳き込んだ。




あなた「え!?だ、大丈夫ですか!?」


私が問題発言をしたばっかりに咳き込んでしまったのだろうか…??


レトルト「だ、大丈夫…ちょっと咳き込んだだけやよ。明日ね、もちろんええよ。」


私の思考とは裏腹に、彼はまた明日も話してくれると言ってくれた。




考えてはいけない想いが溢れてきてしまう。




それを必死に堪えて、答える



あなた「大丈夫そうじゃないですけど…無理はしないでくださいね…?」


レトルト「うん。ありがとう」


少し関西訛りのある、ただの「ありがとう」という言葉がこんなにも嬉しい言葉だとは思っていなかった。















そして、今までずっと無視して、気づかないふりをしていた想いに気づいた。























…私はきっと、レトさんのことが、好き…なんだ















言えるわけないし、ありえない恋なのは分かっている。


でも…私はもう少しだけ、この幸せな時間を楽しみたいと思った。



あなた「…それじゃ、今日も動画…楽しみに待ってます…!」



また明日、会える。それだけで、今日はテンションが上がった。


だから今日も投稿されるであろう動画と明日のこの時間帯を楽しみにしながら大学へ行こうとした。




レトルト「あっ、やっぱ待って!」


彼が私を呼び止める。


あなた「…?」


忘れ物でもしたのかな、と思った。




レトルト「あのさ…」






すると彼はマスクと眼鏡を外した。




細くて透き通るような瞳と、普通なら絶対にありえない、その柔らかな口元を見せた彼は。



















頬を赤く染めながら、言った。














































レトルト「俺、あなたちゃんのこと、好きやわ」





















昨日とは違って肌寒い風が通り、不安を煽る。






だが、私の返答は1つに決まっていた。










あなた「私も、レトさんのことが…好き、です…………



……付き合って、くれませんか…?」







驚いたような表情を浮かべた彼は、その後ふわっと笑って


レトルト「…あり、がとう」


はっきりと、そう言ってくれた。


その言葉1つで、辺りが春になったかと思うくらい、風も、私の心も、暖かく感じた。














Rt side.




あなた「私も、レトさんのことが…好き、です………



……付き合って、くれませんか…?」







俺の自己満足でしかない言葉に、彼女はそう言った。




もちろん答えは1つしかない訳で。



レトルト「あり、がとう」



ちゃんと伝えたくって、はっきり言ったつもりだったが、聞こえていただろうか。


すると彼女は、笑った。


きっと届いたんだな、と、改めて思う。



彼女が笑うと、俺の心も雨が上がったように明るくなる。



俺も、作り笑いなんかじゃない笑みを自然に浮かべていた。













あなた「んあ、大学…」


現実に引き戻される。


想いを伝えたからと言って、変わることのない日常はお互いにある。


レトルト「時間余計にとらせてごめんな、早く行っといで、あなた。」


すらっと、普通に名前で呼べた。


あなた「…っ…あ、ありがとう、ございます…行ってき、ます」


俺の突然の下の名前呼びに同様したらしい彼女は慌ててそう言って駆け出した。


レトルト「おう、気ぃつけてな〜」






………







レトルト「俺も、今日の動画は頑張んなきゃやな…あなたも楽しみって言ってくれたし…」



なんてぶつぶつ言いながら帰ったのはきっと照れ隠しで。



玄関の前、ふと空を見上げると、そこには透き通るような青空が広がっていて。



レトルト「神様、ありがとうな」




誰にというわけでもなく、しかし精一杯の感謝を込めて、俺は空に向かって言った。










…マスクと眼鏡を自分でとっていたと気がつくのは家に帰ってすぐのことだった。















そらら
そらら
はい、どうもこんにちは!そららです



いやぁなんて言ったらいいんでしょうかね…こんなに4話に時間かけるなんて想像もしてなかったので…((おい


でもなんとかお互いの気持ちを告白できたんじゃないかなあ…と思ってます(無理やりでしたが)


前回で「次回Kyさんだします」とかほざいてた野郎がいましたが…今回は余裕がなさそうでしたのでこれからしっかり登場してもらいます…!!(すみませんでしたぁ…orz)


…そろそろ桜空あなたちゃんのアイコンがほしいなあと思っている自分がいるのですがいかんせんそういう技術は持ち合わせていないので誰か表紙共々かいてくださる方がいらっしゃいましたらお願いします…!!


私のスペースも長いですねすみません(殴)

それでは、今回も読んでいただきありがとうございました!!

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