~ぺけたんside~
モトキが作ってくれたお粥は美味しかった。
誰かの手料理を食べたのはいつぶりだろうか。
夢の中で彼女との日々がでてきた。
彼女は料理があまり上手ではなく、俺が作っていた。
主夫だなんて話してた頃が懐かしく感じる。
…今はもう、
起きるとすでに外は薄暗かった。
家の中はやけにしーんとしていて、どこにもモトキの姿がない。
きっと帰ったのだろう。
それが一番、彼にうつさなくて安全。
なのに、
突然寂しさが込み上げてきた。
自分は今1人なのだと実感して、また頭が痛くなってきた。
咳もでて苦しい。
誰も寄り添ってくれない。
ガチャッ
モトキが玄関から入ってきた。
手にはレジ袋をさげている。
よく見れば、鞄が置いてあった。
ブレザーも残っていた。
安心した途端にまた涙がでてきた。
モトキの胸の中はすごく心地が良かった。
熱が少し上がってしまい、夕飯ができるまでまた寝ることにした。
今度は大丈夫!モトキはうちにいる!
しばらくして、
美味しそうな匂いと共にモトキが起こしに来た。
いつにも増して美味しそうな料理だ。
お粥だけでなく、ちゃんとおかずもあって、量もちょうど良かった。
なんて良い奴なのだろう。
モトキと結婚した人はきっと幸せ者だろうな。
ふと、幼稚園の頃を思い出した。
『結婚しよう』と俺がモトキに言った。
懐かしいな。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。