庄司は胸ポケットから数枚の写真を取り出して机に並べた。二月十四日に起きた事件から、最新の三月十四日、計四つの事件の防犯カメラの写真だ。
たしかに、どの写真にも黒いパーカーの男が写っている。だが、黒いパーカーをきてやや背が高い、ということしかわからない。顔はフードで隠れていてよく見えない。
「天下の捜一も割合役に立たないんですね」と大祓は言おうとしたが、今後の関係も考えてぐいっと胃の中に押し込むことにした。
幸彦は珍しく眉間に皺を寄せて手を頭にやった。かすかにうーん、という声も聞こえる。
先ほどまで回転チェアに座ってコーヒーを啜っていた課長も、どこかへ行ってしまった。チラリと個人行動表を見ると、「十六時三十分 三ツ矢 公安部定期会議」と書かれていた。
つまるところ一度やったことをもう一度やるとそういうことなのだが、何もやらないよりはマシなので、二人は素直に従うことにした。
正直明日の捜査に期待はできない。そもそもこの事件の解決自体に期待を持てない。
見切り発車で未来の見えない探検である。
犯人の意図も測りかねる。
一体どういう気持ちで俺たちに任せたのだろう、と思い、幸彦は今は空席のデスクを見つめた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。