幸彦と大祓は手渡された資料を一通り眺めた。
約一ヶ月前から不定期に起こる失踪事件。すでに被害者は四人も出ている。
一人目。一ヶ月前の二月十四日。渋谷へカップルで出かけていた浅山雪(23)と住野直(24)は、過度なキスを公然の場でしていたとして、公然リア充罪で一般人が現行犯逮捕。
罰金を支払い調書をとった後、住野の家に二人で帰ったが、その後浅山氏の行方がわからなくなっている。
二人目。二月二十二日、原宿にカップルで出かけていた松井千紗(18)と伊賀智也(17)は、周囲の人々の通報で公然リア充罪で逮捕。
その後弁明を行なっていたが、二十三時頃に折れ、調書を取り罰金を支払った。
伊賀氏の警察署を出てからの行方がわからなくなっている。
三人目。二月二十六日、これまた渋谷にカップルで赴いていた伊藤真矢(15)と島村洸(16)は巡回警察官によって公然リア充罪で現行犯逮捕。
調書罰金をスムーズに済ませ二時間足らずで署を後にしたが、その後伊藤氏の行方がわからない。
四人目。三月十四日、立川にカップルで出かけていた成田俊哉(21)と牧村愛(20)は交番前で公然わいせつ罪抵触、公然リア充罪で現行犯逮捕。
調書、罰金徴収までに一日以上かかり、翌日朝八時に署を出るも、その後の成田氏の行方が不明。
癪に触ったか、大祓は“関与”を訂正すると庄司の方に向き直った。
庄司は最後のあたりを聴こえないくらいの声で半ば独り言のように話した。
自分が捜索しているわけではないとはいえ、身内の話だ。自分との話と同じ重みがあるのだろう。
捜査一課なんていう花形部署に居れば、ことさらである。
捜査本部が立てられないのも納得がいく。情報が少なすぎる。
二人は資料を閉じた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。