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第1話

残響
君から話がしたいとメッセージが来た。
浮つく心と反対にどこか察してしまった。タイミングだろうか。文字の並びから君の神妙な顔が見えてしまった。
君から電話を誘われたのはこれが初めてだった。
俺は二つ返事で了解した。時間を指定され、それまで動画を見たり本を読んだりしていた。なぜかあまり内容が入ってこない。寝る体勢を用意して部屋を暗くしたりもした。遅刻防止のために十分早めた時計が余計に針を遅く感じさせる。それでも時間はやって来た。
『今、大丈夫?』
また同じような返事をした。
手元の端末に彼女の名前と電話のマークが映し出される。そういえば信号の青は青と呼ぶのに緑だなと思った。その色と同じ進行を意味する部分をタップする。毎日、使用しているのにこの正しい使い方は久しぶりだった。
「もしもし?」
彼女の声だけがまっすぐと俺の中へ入ってきた。周りの雑音は聞こえない。そこから感じるいつもと違う空気を受け止めたくなくて俺はふざけた敬語を使った。
「聞いて欲しいことがあるの」
頭の中で次の台詞が予想できる。こんなことなら好きな恋愛に関する漫画やアニメ、映画と出会わなければよかった。言わないでくれと言えばよかったのだろうか。そんなこと、できるわけがない。
「別れたい」
遠くの彼女の空間と俺の近くの空間の両者に沈黙が広がる。まだ雑音が聞こえない。
俺は黙っていた。俺の言葉でこの事態を打開する策が浮かばなかった。いつもは言葉巧みに躱すことが得意なのに。
俺は問いかけた。どうしてか聞かせて欲しいと。訳を聞いたのに何一つ頭に残らなかった。相手の発言から間違っているところを探すのが得意なのに。
彼女の言葉は俺を通り過ぎていく。そして彼女も通り過ぎていってしまう。
そこからは無様だ。
泣いた。
嫌だと言った。
でも、ダメだった。
彼女も心苦しいようだった。
なんで、君がそんな風なの。
そうか。俺がそうさせているんだ。
やめだ。
俺が一番望んでいたのは彼女の笑顔や幸せだ。
やめだ。
俺が傷つける側では意味がない。
やめだ。
せめて彼女の記憶に素敵に残りたい。
俺は彼女の要望を承認した。
「じゃあね」
正真正銘、別れの挨拶だ。
彼女から電話を切ったのは初めてだった。
閉め忘れたカーテンから電灯の青白い光が差し込んだ。いつか彼女を照らしていた光だ。その光が何もない空虚を照らし出す。
涙が流れた。
どうしようもない心の位置を探そうとして目が泳ぐ。涙の海を目が泳ぐ。悲惨な津波だ。もう元に戻りはしない。諦めで瞼を閉じる。映画ならここでエンドロールだ。現実にそんなものはない。
彼女と共有する必要のなくなった時間が動き始めた。
彼女がもう待つことはない待ち合わせ場所を1人で通り過ぎる。彼女と歩いた道を1人で歩く。彼女の笑顔を思い出して鼻の奥がツンとした。
いつも通りを装いながら学校に行くと楽しそうな周りの奴らがいた。
何も知らないそいつらの声は


全部雑音に聞こえた。