(どどどど、どうしよう……)
私が働く昼間のカフェ。
お客さんには、
何も変わらない日常に見えてるはず。
でも、働いている私は
内心ずっと焦っていた。
それはもう、とてつもなく。
寂しさをこじらせて、
千空の部屋から飛び出したのは数日前。
追いかけてきてくれなかったことも
連絡が来なかったことも、
どこかで期待してしまってた分だけ、
余計に堪えた。
けど、
冷静になってみれば……
(……いや、何あの態度。
千空の言葉を借りれば"非合理的"ってやつ……)
千空の嫌う行動、まっしぐらじゃん。
ほんと何やってんの、私。
数日、連絡は一切とってない。
LINEのトークを何度も開いては閉じて、
" ごめん "の一言すら送れずに、
ただ時間ばかりが過ぎてった。
(……あー、なんか……考えすぎて、
頭も痛いし、ぼーっとしてきた……)
目の前のマグカップの縁も、
歪んで見える。
……ん?歪んで?
「……うん、37.8度。今日はもう帰ろうね」
「す、すみません……忙しいのに……」
「こういうのは仕方ないよ。
ゆっくり休んで、
また"いつものあなたちゃん"で帰っておいで」
店長に優しく言われて、
私は仕事を早退した。
病院で薬をもらって、家に帰る途中。
熱のせいなのか、
それとも気持ちのせいなのか。
胸のあたりがずっと苦しくて、
なんだか涙が出そうになった。
❁⃘*.゚ ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ❁⃘*.゚
*side 千空
「……か、帰るね」
ただ、それだけ言って
あなたは出て行った。
パタン、とドアが閉まる音。
そのあとの静けさ。
残されたのは、
俺と、言いようのない胸のざわつき。
喧嘩ってほどでもない。
強い口調で言い合ったわけでもねぇ。
ひどいことを言った記憶もない。
ただ、最後のあの一言。
「……なんかさ、私たちって、
"邪魔しない程度"に会ってる感じだよね」
(いや、そんなこと思ってねぇし)
邪魔とかどうとか思ったことは一度もない。
そもそも何がきっかけだった?
最近会えてなかったからか?
……他に変化はねぇ。
消去法で、それしかねぇか。
それに、思い返せば
付き合いはじめたばかりの頃。
" 会う時間を作る "って発想が
俺にまだなかった時、
あなたは同じように様子を変えて
突然帰ろうとしたことがあった。
……感情と思考でいっぱいになったとき、
あいつは黙って
その場から"逃げる"選択をする癖がある。
(……まさか、あれと同じか?)
追いかけるべきか?
いや、もしかしたらあれは
冷静になる時間が欲しいってことかもしれない。
だとすれば、今無理に踏み込めば
余計にあなたを追い詰めてしまう可能性もある。
(……まぁ、時間が経てば戻るだろ)
そのうち、
"おはよー" とか "仕事終わった〜" とか、
いつもみたいにLINEが来るはず。
……だが、それは来なかった。
次の日も。
その次の日も。
(あー……なんか、ミスったかこれ)
仕事の合間。
頭をかきながらスマホを手に取る。
トーク画面を開いて、文字を打っては消す。
" 悪かった "
" 元気か? "
" 大丈夫か? "
どれも違ぇな……
「……クソ、めんどくせぇ」
" 起きてるか? "
結局送ったのは、
どうとでも取れる一文だった。
けれど、
それすら次の日になっても未読のまま。
(つーか……生きてんのか、あいつ)
冗談じゃなく、
少しだけマジで思った。
前までだったら、
1日どころか数時間で
" ごめん寝てた! "とかなんとな
LINEが飛んできてたのに。
……いちいちこんなことで気を揉むなんて、
あなたと出会う前は考えたこともなかった。
(ただの連絡ひとつに振り回されてんのは
バカみてぇだな……)
……生存確認、しに行くか
机の上の仕事をざっとまとめて片づける。
最低限の作業だけ残して、データを保存。
クロムに今日はもう出る、と告げて
俺はラボを後にした。
❁⃘*.゚ ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ❁⃘*.゚
あなたが前にも帰ろうとしたのは
19話のことですね🙂↕️
千空的にはあなたを思って追いかけなかったという選択ミス。
付き合って数ヶ月、乙女心がまだわからない千空先生なのでした。

この小説とは関係ないけど、プロフィールのところに
ヒロアカって書かれてて勝手に嬉しくなったのは
私です🫶🏻











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!