「澤藤、春歌!おめでとう!最優秀賞だよ!」
帰り道。
興奮が収まらない里歩は何度もそう言った。
「おめでとう、二人とも!」
「先生も来てたんだ。」
「当たり前でしょ?教え子なんだから。でも、思ったより観客席埋まってて上で見てたけど。」
「三河もありがとう。」
「こちらこそ。」
前昼休みの時間に澤藤は言っていた。
「俺将来、音楽科の大学に進むんだ。小さい頃からの夢を叶えるんだ!」
「夢?」
「音楽界を変える。もっと自由に思い通りに楽しく弾きたい。」
澤藤は可能性が無限大だと感じていた。
そしてその夢を叶えられると信じていた。
何年かかっても。
可能性が消えることは絶対にない。
あとは自分次第だから。
絶対諦めない。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!