第8話

久しぶりの合奏
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2018/04/20 10:09
最近は、先生の会議の関係で、何日も合奏練習ができていなかった。

今日は、久しぶりの合奏練習。


どうしよう…最近、健とsoli練習してなかった…


個人練習はたくさんしていたものの、重要なところを忘れていた。

私たちは、合わせるのが課題だった…
まみ先生
はい!
じゃあ、久しぶりに合わせてみよう!
課題曲からいきま~す!
「はい!」

みんなが元気良く返事をする。

みんなの、「全国に行きたい」っていう気持ちが、強まっているように感じる。
私たちは、課題曲にマーチを選んだ。

きっと、今年はほとんどの学校がこの曲を選ぶだろう。

マーチのフルートは、大抵、連符とトリルで始まる。

とにかく、指をまわすことを考えて吹いた。

その後、クラリネットがテーマを奏で始める。
そこに、フルートも加わっていく。

そこまで難易度は高くないので、合わせることを意識した。

まぁ、そこそこの演奏にはなっている。

でも、全国に行けるレベルには、まだまだ全く到達できていない。
まみ先生
うん、OK。
みんなが頑張って練習してるのが、すごくよく分かります。
ただ、全国に行くとなると、まだまだっていうのはみんなも分かるよね。
とにかく練習しかないから、みんな、この調子で頑張ろう!
「はい!」

みんなの返事が部室中に響く。

優しいながらも、最近は少し厳しいまみ先生。
それは、まみ先生が自分たちのためにしてくれていることだと、みんなは分かっている。

だから、みんな頑張れる。

優しさから来る厳しさを、高校生の私たちが理解できている。
それだけ、まみ先生に対する信頼が深い、ということだ。
しばらく、課題曲の練習が続いた。

あ~、やだやだ…

自由曲、やらずに終わらないかな…?

このまま課題曲だけで終わっちゃえ…!

やばい、やばいよね…

みんながこんなに本気で頑張ってるのに、soliがちゃんと仕上がってなかったら、さすがに失礼だよね…
まみ先生
桜音?
どうかした?
内田 桜音(うちだ おと)
あ、え、何でも無いです!
まみ先生
本当に?
体調悪かったら言ってね?
内田 桜音(うちだ おと)
あ、すみません。
大丈夫です。
やってしまった。

最近、考え事をしていると、やらなければいけないことに集中できない。
健が、こっちを睨んでいるのが分かった。

見なくても分かる。


ごめん。言い出したの、私なのに。

「全国に行きたい」

そう言ったのは、私だ。

それなら、もっとちゃんとやらなきゃなのに…


私は、健の方を見た。


_健は、私なんて見ていなかった。
あれ?

なんで?

いつもなら、絶対睨むのに。

そっか。

もう、どうでもよくなっちゃったんだね、きっと。


あれ?

なんだろう、これ。


私、睨まれたい訳!?

いや、そんな訳ないよ…笑


でも、どうでもいいなんて思われるのは困る。

soliもあるのに。

それに、ちょっと仲良くなれた気がしてたから。

なにも反応してもらえなくなると、不安になる。

睨まれたい訳じゃないけど、いつも睨んでくる健が睨んでこないから。
結局、その日の練習は課題曲だけで終わった。


家に帰って考える。

健、私に呆れちゃったかな…

もう、soliも吹きたくなくなっちゃったかな…

嫌いなはずの健が、少し遠ざかったように感じただけで、なぜか、悲しい。

もう、なんなんだろう。

私、どうしたの?

どうしちゃったの?

しっかりしてよ。笑

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