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第1話

練習しなきゃ…。
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2020/09/07 06:22
今は4月。
吹部では、新入部員を20人迎え、新たに活動を始めたところだ。

2ヵ月前、アンサンブルコンテストが終わり、部員たちは先生から自由曲を紹介された。
まみ先生
はいっ、みんな、アンコンお疲れ様でした!
早速ですが、自由曲配ります。
今から初見でいくよ~
いつも元気いっぱいで明るいまみ先生は、みんなの人気者。
みんなが馴れ馴れしい態度になっちゃうのも仕方ないのかな。
川岸 香奈(かわぎし かな)
え~、まみちゃんマジで初見?
杉野 恋(すぎの れん)
うわ~、絶対ムズいじゃん~!
鍵谷 健(かぎたに けん)
うるせーよ。
こんくらい楽勝だろ。
杉野 恋(すぎの れん)
は?何よ、ちょっと才能あるからって~!
ムカつくわ!
鍵谷 健(かぎたに けん)
勝手にムカついてろ。
健は、いつも冷たい。
そんな言い方しなくてもいいのに、って思う。
まみ先生
はーい!そこまで!
できなくてもいいから、とにかく音出して~!
先生が指揮棒を上げて、私たちは楽器を構えた。
うん、なんか楽しそうじゃん、この曲。


大きく息を吸い込むと、私はメロディを奏でた。

最初からsoloかぁ。
いいじゃんこのメロディ♪

ん?アルト…?

アルトサックスのsoloがメロディに加わってきた。
しかも、私が苦手な健。
いつも冷たくて、毒舌な健。

せっかくのsoloなのに…
嘘でしょ、、

そっか、ここはフルートとアルトの掛け合いになってるんだ。

曲自体はいいけど…

健とsoliとか…

あ、やば。
いろいろ考えてたから、♭落としちゃった。

気になって健の方を見たら、こっちを睨んでいる。
はぁ、ごめんなさい…


最後までなんとか通って、先生が指揮棒を下ろす。
まみ先生
はい、まぁ、最初はこんなもんかな。
どう?いいでしょこの曲!
杉野 恋(すぎの れん)
めっちゃいい~!
これ、最初のフルートとアルトの掛け合い、めっちゃ気に入ったわー!
川岸 香奈(かわぎし かな)
それ思った!
しかも2人とも初見であれすごくない?
やっぱり、曲の感じは私もすごく好きなんだけどね…

健とsoliとかキツすぎだよ。

やだやだやだやだ~~
内田 桜音(うちだ おと)
え、これほんとにやるんで_
鍵谷 健(かぎたに けん)
桜音、♭落としてたけどな。
初見できてるって言えねーだろ。笑
うわ~、ほんとにムカつく!!
なんなの!?

私が先生に質問しようとしたのに!
まみ先生
まぁ、落ち着いて。
桜音、なんか聞こうとした?
さすが先生!
健とは違って優しい~!
内田 桜音(うちだ おと)
あの!
これほんとにやるんですか?
まみ先生
あれ?気に入らなかった?
内田 桜音(うちだ おと)
いえ、気に入ったんですけど…
soliのところが……
まみ先生
soliが嫌なら、香奈と相談して変わってもいいけど、どうする?
内田 桜音(うちだ おと)
あ、違くて、soliはやりたいんですけど…
あ、私、何自分勝手なこと言ってるんだろ。
健は嫌だけどsoliはやりたいとか、わがままだよね…
鍵谷 健(かぎたに けん)
何自分勝手なことばっか言ってんだよ。
どうせ、俺が嫌とかそんなんだろ?
でも、やっぱりsoliはやりたいですとか、どんだけわがままなんだよ。
内田 桜音(うちだ おと)
…!!
あーーもー最悪!!
自覚したもん!

なんなの?分かってるもん!

はぁ…

私は心の中で大きくため息をついた。
まみ先生
あ…じゃあ、いいかな?
桜音、soliよろしくね!
内田 桜音(うちだ おと)
は、はい…
すみませんでした…
その日の練習が終わり、私は香奈に横から話しかけられた。
川岸 香奈(かわぎし かな)
よかった~。
うち、soliとか無理だし!笑
桜音、頑張ってよ~?
内田 桜音(うちだ おと)
ありがと。
健と掛け合いとは思わなかったよ…笑
川岸 香奈(かわぎし かな)
桜音、健嫌いだしね。
ま、うちは応援することしかできんわ。
内田 桜音(うちだ おと)
まぁ、そんくらい我慢しないと、全国目指せないよね。
わがまま言うな私!
川岸 香奈(かわぎし かな)
そうそう!
頑張ろーよ。うちら結構練習頑張ってると思うし?笑
内田 桜音(うちだ おと)
自画自賛。笑
私たちは、高校で吹部に入って、同じフルートパートになってから仲良くなった。

クラスも同じだから、行動するときはだいたいいつも一緒。
自由曲が決まり、私たちは、それより前から練習していた課題曲に加えて、自由曲の練習も本格的に始めた。

新入部員も迎えて、コンクールに対する意気込みは充分なくらいだけど、健とのsoliはまだ、2人での練習ができていない。

そろそろ、練習しなきゃ…。

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