第14話

オバケの失恋
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2026/07/27 09:00 更新
 阿部くんが泣いているところを初めて見た。

いつも明るく振る舞って、
太陽みたいな存在だと思っていた。

だけど、彼にも抱えている苦悩や
辛い過去があったんだ。

私は阿部くんの近くを浮遊するマリア様に視線を移した。

大羽 圭子
大羽 圭子
マリア様……
勝手に言っちゃって
ごめんなさい
マリア様
マリア様
いいのよ
大羽 圭子
大羽 圭子
今ここで阿部くんに
伝えたいことはない?
マリア様
マリア様
え?
大羽 圭子
大羽 圭子
だってこの前
「大ちゃんは何度話しかけても
届かない」って言ってたから……
大羽 圭子
大羽 圭子
マリア様も阿部くんに
伝えたいことが
あるのかなって思って。
お節介だったかな?
そう言うと、マリア様は小さく笑って私の方へと
ふわりと飛んでくる。

そして小さく耳打ちした。
マリア様
マリア様
じゃあこう伝えてくれる……?
大羽 圭子
大羽 圭子
阿部くん
阿部 大吾
阿部 大吾
……?
大羽 圭子
大羽 圭子
マリアさんから伝言です
もう私に囚われないで……
マリア様
マリア様
ずっとそばにいるから
新しい恋をしてほしいの
そのミサンガが切れるまでは
近くで見守っているわ

一言一句違わず伝えると、
阿部くんは少し目を見開いた。

そしてぷっ!と小さく吹き出すように笑う。

阿部 大吾
阿部 大吾
まさか幽霊から告白されて、
ずっと片思いしてた人に
フラれるなんてな……!
いつもの眩しい笑顔で笑う阿部くん。

そして阿部くんはキョロキョロとなにやら空中を見渡し、大声をあげた。

阿部 大吾
阿部 大吾
真理亜!そこにいるのか?
お前が勝手に死んだせいで
俺はずっと恋愛はできないし
今後もするつもりもない!
阿部 大吾
阿部 大吾
それに、俺の初恋は
お前だけのものだから!

阿部くんはマリア様のいる方向とは、全く別の方向へそう叫んだ。

マリア様
マリア様
……大ちゃんのバカ!
私はこっちよ!

マリア様はそう言ってポカポカと阿部くんを叩く。
だけど、なぜかとても嬉しそうだった。

阿部 大吾
阿部 大吾
うわ、俺今めっちゃ
恥ずかしいこと言ってなかった!?
それに大羽さんの前で……
本当ひどいよな、俺!

我に返ったのか、阿部くんは顔を真っ赤にして
あたふたとしている。

マリア様はそれを見て、大ちゃんらしいと笑っていた。

阿部 大吾
阿部 大吾
そう言えば
さっき神社の前で会った人から
和菓子貰ったんだ
よかったら大羽さんも

阿部くんは小さな紙袋を私に差し出した。

大羽 圭子
大羽 圭子
え!?いいよそんな!
阿部 大吾
阿部 大吾
でも、お礼がしたくて……
貰い物で悪いんだけど
大羽 圭子
大羽 圭子
ううん、ありがとう

紙袋を受け取ると、阿部くんは笑顔で手を振って
マリア様と一緒に長い階段を下りていった。

その足取りは、どこかスッキリとして軽く見えた。
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
終わったか?
大羽 圭子
大羽 圭子
うわああ!
急に現れないでよびっくりした!
っていうか、ずっとどこにいたの?
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
流石に空気読んで
ちょっと離れた場所に
隠れてたんだよ
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
身体も貸して
空気も読んだんだから
感謝くらいしろよな〜
てかさっさと身体返せ!
大羽 圭子
大羽 圭子
待って!……これ
もしかして苺大福!?

私は鷹宮悠馬を無視して、
紙袋に入っていたものを取り出した。

阿部くんがくれたのは、
私の大好物である幽月堂ゆうげつどうの苺大福だった。

大羽 圭子
大羽 圭子
これ、私の大好物なの!
死んじゃったから
もう食べられないかと思ってた……
これ食べ終わるまでは身体貸して!
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
おいあんた、いい加減に……

しかし、鷹宮悠馬は突然口をつぐんだ。
なぜなら、私が泣いていたからだ。

大羽 圭子
大羽 圭子
うっ、ぐす……

両親がいつも、私のために買ってきてくれたこの苺大福は私にとっては特別なもの。

一口頬ばると優しい甘みがじんわりと沁みた。
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
お、おい……
俺の顔で泣くなって……!
そりゃ失恋は辛いだろうけどさ
大羽 圭子
大羽 圭子
え、なんのこと?
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
はあ?
失恋が悲しくて
泣いてんじゃねーの?
大羽 圭子
大羽 圭子
ああ、ごめん
あまりにも苺大福がおいしくて
大羽 圭子
大羽 圭子
失恋は悲しいけど
そもそも私が出る幕はなかったし
推しが幸せならOKです!

そう言って元気よく親指を立てると、
鷹宮悠馬は激怒した。

鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
心配した俺がバカみたいじゃねーか!
早く身体返せーー!!

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