第21話

息苦しい家族
980
2026/09/14 09:00 更新
 
 私たち一行は、鷹宮悠馬の実家に無事到着した。
閑静な住宅街の一角に、綺麗な一軒家が立っている。

鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
ここが実家なんだけど

ピンポーン。

実家なのにまるで他人の家のように
インターホンを鳴らした。
母親
はい
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
俺だけど、悠馬
母親
あー、はいはい
ちょっと待って今開けるから

ガチャリとドアを開けて出てきたのは、
どうやら母親だろう。

母親
いきなり帰省なんて、
どういう風の吹き回し?
「おかえり」の一言もないことに、
なぜだか無性に腹が立つ。
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
事前に連絡はしただろ。
こっちが阿部で、この人がシゲさん。
二人とも俺の友達だから
阿部 大吾
阿部 大吾
こんにちわー!
いつも悠馬くんには
お世話になってます!
シゲさん
シゲさん
邪魔するよ
母親
そう……。
上がってちょうだい

まじまじと阿部くんとシゲさんを見た彼女は、
少し顔を歪めて家の中へと案内した。

父親
……帰ったのか
斗真
お兄ちゃんおかえり
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
父さん…と、斗真
ただいま

リビングでは父親と弟がテレビゲームを楽しんでいた。

久しぶりに帰った兄には目もくれず、
テレビ画面に夢中になっている。

そのまま特に会話もなく、
私たちは鷹宮悠馬の部屋に向かった。

鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
俺のもの、
勝手に捨てんなって
言ったのに……

そう言って、悲しげに笑う。

どうやらこの部屋にあるのは弟の荷物ばかりで、
鷹宮悠馬が使っていた家具はほとんど何も残っていないらしい。
母親
そういえば悠馬、見てちょうだい!
このトロフィー!
斗真がロボットコンテストで
優勝したのよ!
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
へー、すごいじゃん
母親
せっかく帰ってきたんだし
今日は悠馬が晩ご飯作りなさいね!
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
はぁ……わかったよ
呆れたように返事を返し、
キッチンへと消えていく鷹宮悠馬。

私たちは何も言えず、そんな姿を呆然と見送ることしかできなかった。

シゲさん
シゲさん
なんともおかしな家族だねえ
阿部 大吾
阿部 大吾
鷹宮……



———そして夕飯時。

 鷹宮一家と、阿部くんとシゲさんは夕飯を囲んでいた。

阿部 大吾
阿部 大吾
小さい頃の鷹宮の話とかって
聞いてもいいですか?
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
おいやめろって……
母親
そうね、まあその辺の子と
同じじゃない?
父親
そうか?色々問題を起こして
手のかかる子どもだったじゃないか
シゲさん
シゲさん
そう言うことを
聞いてるんじゃないよ
もっと楽しい話はないのかい?
キャンプに行ったとか、
誕生日の話とか……
母親
……何かあったかしら
父親
……さあな
シゲさんが助け舟を出したが、
両親はそれ以降黙り込んでしまった。

私はその光景に徐々に怒りが湧き上がってくる。

大羽 圭子
大羽 圭子
実の息子に対して
どうしてこんな態度なの!?
親として最低だよ!
マリア様
マリア様
まぁまぁ
圭子ちゃん落ち着いて!

そんな冷え切った場の空気に耐えかねて、シゲさんが本題を切り出す。

シゲさん
シゲさん
ワシらがここに来たのは
とあるぬいぐるみを探していてねぇ。
あんたたちがお焚き上げに
持ってったときいたんだが……
父親
ぬいぐるみ?
ああ、あの不気味なやつか
母親
あれなら近所の
常火ノ宮(とこひのみや)神社で焼いたはずよ。
もうこの世にないわ
シゲさん
シゲさん
だったら、神社の場所を
教えてくれるかい?
母親
まぁ、はい
……いいですけど

目当ての場所について聞き出すことができた。
しかし、母親は訝しげに眉を寄せる。

母親
悠馬、また変なモノを
家に持ち込んだりしたら
許さないわよ!
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
わかってるって……
父親
さっきからなんだその態度は!
少しは家族に感謝でもしろ!

私はなんだかとても腹が立って、
いても立ってもいられなくなってしまう。

大羽 圭子
大羽 圭子
ああもう!むかつく!
鷹宮悠馬が何をしたって言うのよ!
私はわざとテレビの電源をぽちぽちと押してポルターガイストを起こした。

突然テレビがついたり消えたりしはじめ、
母親が悲鳴をあげた。

母親
な、何よこれ!?
悠馬、あんたの仕業なの!?
父親
さっさと電源を切れ!
リモコンはどこだ!

慌てふためく両親を見て、
鷹宮悠馬はぷっと小さく吹き出した。

鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
やめろばか!

小さく私にそう言いながらも、
ケラケラと楽しそうに笑っている。

それはこの家に帰ってきてから、初めての笑顔だった。




———そしてその夜。

 客間で布団を敷いて雑魚寝をする一行。

もちろん、自分の部屋が物置になっていた鷹宮悠馬も
阿部くんとシゲさんに並んで眠ることになった。

シゲさんは豪快にイビキをかき始め、
阿部くんもすぐに寝息を立てはじめた。

マリア様も阿部くんの上で目を閉じて浮遊している。


だけど鷹宮悠馬はなかなか眠れないのか、
何度も寝返りを打っている。

大羽 圭子
大羽 圭子
寝れないの?
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
……うん
大羽 圭子
大羽 圭子
もしよかったらなんでも聞くよ?
大羽 圭子
大羽 圭子
もう死んだ相手にだったら
気楽に話せるんじゃないかな
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
……そうだな
鷹宮悠馬はごろんと寝返りを打って、
静かに話し始めた。

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