第8話

阿部大吾という男
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2026/06/15 09:00 更新

 嫌いなアイツの守護霊になってから、初めての土日。

学校は休みだけど、
鷹宮悠馬はバイトをいくつも掛け持ちしていた。

午前は喫茶店、午後はコンビニバイトと
多忙な週末を送っていて、
守護霊の私までそれに付き合わされている。

店長
ちょっと休憩もらってもいいかな?
鷹宮くん一人になっちゃうけど
夜勤のコンビニのバイト中、
少しぽっちゃりとしたおじさん店長が気さくに話しかけてきた。
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
いっすよー
店長
あれ?
いつもなら一人にしないでください
とか言って行かせてくれないじゃん
どうしたの?
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
今日からしばらくは大丈夫なんすよ
そう言って、私が浮かんでいる方向にちらっと
視線を向けた。

そんな風に全幅の信頼をおかれても困るんだけどな。

この前の悪霊は、
阿部くんがいたからなんとかなったわけだし。

大羽 圭子
大羽 圭子
(なりゆきで守護霊になったけど
私一人の力で悪霊から守ることなんて
できるのかな?)
一抹の不安を抱えながら、レジの前に気だるそうに突っ立っている鷹宮悠馬に視線を向けた。
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
そういえばさ、
なんで好きになったわけ?
大羽 圭子
大羽 圭子
え?
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
阿部のことだよ
未練が残るほど、好きだったんだろ
協力するなら聞いておいた方が
いいかな〜って思ってさ
大羽 圭子
大羽 圭子
ああ、阿部くん
そうだな、話すと長くなるんだけど……

私は中学の頃、阿部くんに救われた話をした。

名前をバカにされた私が、今の「オバケ」というあだ名すら好きになってしまったことも。

鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
そんだけ!?
チョロいなあんた
ケラケラと笑うこの失礼な男に、
私は阿部くんの本当の良さを語る。
大羽 圭子
大羽 圭子
好きになったのは
ただのキッカケだよ
その後、阿部くんの人柄に
惚れこんだの!
大羽 圭子
大羽 圭子
阿部くんを
目で追うようになって気づいたんだ
阿部くんは誰にでも
平等に接するってことに
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
……ああ、阿部は
そういうやつだよな
大羽 圭子
大羽 圭子
そうだよ
しかも阿部くん、中学の頃から
部活帰りに神社に通ってるの
雨の日も風の日も欠かさずに
大羽 圭子
大羽 圭子
何かすっごく大事なことを
お願いしてるような切実な姿が、
またかっこよくて……
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
ちょっと待て
ストーカーって
中学からしてたのかよ
普通に犯罪だろ……
この男にドン引きされるなんて、解せない。
大羽 圭子
大羽 圭子
そういうあなたは
どうして阿部くんと
仲良くなったの?
ふと、気になっていたことを聞いてみた。

今年から阿部くんと同じクラスになったくせに、
もう親友みたいに仲良くなっている。  

正直死ぬほど羨ましい。もう死んでるけど。
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
阿部とは偶然隣の席だったんだよ
で、阿部の側にいると
悪霊が寄って来れないことに
気づいたってわけ
大羽 圭子
大羽 圭子
え……じゃあ阿部くんを
虫除けみたいに
利用してたってこと?
最低!
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
人聞き悪いな
まあ、最初はそういう
目的だったんだけどさ
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
一緒にいるうちに
あんたが言ってたように、
俺も阿部の性格に救われたんだ
入学してすぐ学校1の女タラシで有名になった鷹宮悠馬は、男友達ができなかったらしい。
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
だから期待してなかったんだ
俺のことなんて
ただの隣の席のクラスメイト、
くらいにしか思ってないんだろうなって
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
でも、ある日……



——————
———

阿部 大吾
阿部 大吾
明日みんなでカラオケ行くんだけどさ
鷹宮もどう?
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
え、俺……?いいの?
阿部 大吾
阿部 大吾
もちろん!
俺、前から鷹宮と
遊びに行きたかったんだ
男子生徒
ダメダメ
こいつ女としか遊ばない
タラシだから!
男とはつるまねーって!
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
あー、まあ……
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
(そう見られても仕方ねーよな……
色々説明すんのも面倒だから断っとくか)
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
やっぱ俺——
阿部 大吾
阿部 大吾
ちょっと待った!
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
え?
阿部 大吾
阿部 大吾
断るのはなしで!
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
はあ!?
阿部 大吾
阿部 大吾
まだ鷹宮がどんなヤツか知らないけどさ
俺は鷹宮と仲良くなりたい
明日は無理でも予定合わせていこーぜ!
阿部 大吾
阿部 大吾
俺ら親友になれそうだし!
男子生徒
会ったばっかで
親友とかねーだろ
阿部 大吾
阿部 大吾
時間なんて必要ないだろ
大事なのは俺が鷹宮と
仲良くなりたいってこと
———
——————
大羽 圭子
大羽 圭子
なにそれ好きぃ………
私は阿部くんの存在の尊さに、
顔を覆ってしばらくうち震えることしかできなかった。

鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
阿部はそういうやつなんだよ
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
まあ本人は救った気なんて
全然ないと思うんだけどな……
そう言って、少し嬉しそうに頬をゆるませた。
大羽 圭子
大羽 圭子
(そんな顔されたら
もう文句言えないじゃん……)
阿部くんの親友として、
ちょっとは認めてあげてもいいかもしれない。


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