目を開くと、私は鷹宮悠馬の身体に憑依できていた。
久しぶりに幽霊ではない身体を動かす感覚は、
なんだか重くて不便に感じた。
ふと、上を見ると鷹宮悠馬が霊体としてふわふわ浮いていた。
身体には魂が2つ入ることはできない。
口から別の魂が入れば、元々入っていた魂はお尻から出るという、なんとも原始的な寸法である。
そう言って意気込んではみたものの、
そう簡単にうまくはいかないもので。
翌朝、私は朝練で校庭にいる阿部くんの元へと
向かった。
だけど、気持ちが早まったせいで
おバカなミスを犯してしまったのだ。
ニカっと笑って、親しげに肩を組んでくる阿部くん。
嬉しそうに笑う阿部くんを見てやっと気づく。
霊体でケラケラと笑う顔が、なんとも憎たらしい。
早朝の告白は失敗に終わり、私は仕方なく阿部くんが
一人きりになる機会を伺うことにした。
しかし、人気者の彼の周囲にはたくさんの
人が入れ替わり立ち替わりやってくる。
そこで私は、部活終わりに阿部くんを呼び出すことにした。
阿部くんは毎日部活終わりに、
近所の神社に寄って帰る。
だから待ち合わせ場所もそこにしたのだ。
今度こそ間違えず、
自分の名前を書いて阿部くんに渡した。
そう言えば、私ってまだ欠席扱いになってるんだっけ。
鷹宮悠馬のフリをすると、
どうしても受け答えがぎこちなくなる。
だけど、これできっと誠実な阿部くんは神社で
『大羽圭子』の話を聞いてくれる。
信じてくれるかわからないけど、私は鷹宮悠馬の姿で告白することを決めた。
———そしてあっという間に放課後。
阿部くんは神社の境内に現れた。
大きな御神木の下で、私は阿部くんに手を振った。
真剣な表情を読み取ってくれたのか、
阿部くんは少し困惑した表情で私の言葉を信じてくれた。
やっぱり、阿部くんのこういうところが好きだ。
私は精一杯息を吸い込んで、気持ちを伝えた。
阿部くんはただ黙って、私の告白を遮らず最後まで聞いてくれた。
さわさわと優しく、風が葉っぱを揺らす音がした。
















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。