第12話

告白
1,329
2026/07/13 09:00 更新
 目を開くと、私は鷹宮悠馬の身体に憑依できていた。

久しぶりに幽霊ではない身体を動かす感覚は、
なんだか重くて不便に感じた。

大羽 圭子
大羽 圭子
すごい!
本当に憑依できた!
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
おい、これどうなってんだ!

ふと、上を見ると鷹宮悠馬が霊体としてふわふわ浮いていた。

鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
こうなるって知ってたのか?
大羽 圭子
大羽 圭子
あっごめん
言ってなかったっけ?
私がこの身体にいる間は
魂が抜けちゃうんだ
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
聞いてねーよ!
てか俺、ケツから外に
放り出されたんだけど!
俺の尊厳が……
身体には魂が2つ入ることはできない。

口から別の魂が入れば、元々入っていた魂はお尻から出るという、なんとも原始的な寸法である。
大羽 圭子
大羽 圭子
だ、大丈夫!
憑依は24時間で自然と戻るって
マリア様が言ってたから
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
24時間!?
丸一日俺の身体を乗っ取るつもりかよ
大羽 圭子
大羽 圭子
まあまあ!
告白は24時間以内に
なんとしてでも成功させるからさ!
 そう言って意気込んではみたものの、
そう簡単にうまくはいかないもので。

翌朝、私は朝練で校庭にいる阿部くんの元へと
向かった。

だけど、気持ちが早まったせいで
おバカなミスを犯してしまったのだ。
大羽 圭子
大羽 圭子
好きです!
阿部 大吾
阿部 大吾
ん?……なんだよ急に!
俺も好きだぜ?親友だもんな!
ニカっと笑って、親しげに肩を組んでくる阿部くん。

阿部 大吾
阿部 大吾
てか鷹宮も
素直なとこあんじゃん!
嬉しそうに笑う阿部くんを見てやっと気づく。
大羽 圭子
大羽 圭子
(あっ!そういえば私
見た目は鷹宮悠馬だった!)
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
あんた、バカじゃねーの?www

霊体でケラケラと笑う顔が、なんとも憎たらしい。

早朝の告白は失敗に終わり、私は仕方なく阿部くんが
一人きりになる機会を伺うことにした。


しかし、人気者の彼の周囲にはたくさんの
人が入れ替わり立ち替わりやってくる。

そこで私は、部活終わりに阿部くんを呼び出すことにした。
大羽 圭子
大羽 圭子
伝えたいことがあるので
今日の放課後に
神社の境内で待ってます
……大羽圭子、と!

阿部くんは毎日部活終わりに、
近所の神社に寄って帰る。
だから待ち合わせ場所もそこにしたのだ。

今度こそ間違えず、
自分の名前を書いて阿部くんに渡した。
大羽 圭子
大羽 圭子
これ、大羽から手紙だってさ
阿部 大吾
阿部 大吾
大羽さん?
最近学校休んでるけど
何かあったのかな?
そう言えば、私ってまだ欠席扱いになってるんだっけ。
大羽 圭子
大羽 圭子
(死んだことを学校に伝えないのは、
何か大人の事情があるのかな?)
阿部 大吾
阿部 大吾
てか、鷹宮って
大羽さんと仲良かったんだな!
大羽 圭子
大羽 圭子
ま、まあね……

鷹宮悠馬のフリをすると、
どうしても受け答えがぎこちなくなる。

だけど、これできっと誠実な阿部くんは神社で
『大羽圭子』の話を聞いてくれる。

信じてくれるかわからないけど、私は鷹宮悠馬の姿で告白することを決めた。


———そしてあっという間に放課後。

 阿部くんは神社の境内に現れた。
大きな御神木の下で、私は阿部くんに手を振った。
大羽 圭子
大羽 圭子
阿部くん!
阿部 大吾
阿部 大吾
あれ?なんで鷹宮がいるんだ?
俺、今日は大羽さんと
待ち合わせしてて……
大羽 圭子
大羽 圭子
ここにいるよ
阿部 大吾
阿部 大吾
え?
大羽 圭子
大羽 圭子
あの……
信じられないと思うんだけど
私は大羽圭子で
今この身体に憑依してるんです
阿部 大吾
阿部 大吾
鷹宮の悪い冗談?
……ではなさそうだな

真剣な表情を読み取ってくれたのか、
阿部くんは少し困惑した表情で私の言葉を信じてくれた。

やっぱり、阿部くんのこういうところが好きだ。

大羽 圭子
大羽 圭子
実は私……
交通事故で死んじゃったんだ
阿部 大吾
阿部 大吾
えっ……
大羽 圭子
大羽 圭子
だから今
鷹宮くんに協力してもらって
この身体を借りてるの
大羽 圭子
大羽 圭子
それで、阿部くんにずっと
言いたかったことを伝えに来たんだ
阿部 大吾
阿部 大吾
……うん

私は精一杯息を吸い込んで、気持ちを伝えた。

大羽 圭子
大羽 圭子
私、大羽圭子は阿部くんが好きでした!
中学の頃、名前でからかわれた時
助けてくれてありがとう!
大羽 圭子
大羽 圭子
たぶん阿部くんは
覚えてないと思うけど
あの時……私は救われたんだ

阿部くんはただ黙って、私の告白を遮らず最後まで聞いてくれた。

大羽 圭子
大羽 圭子
もう死んでるし
ただ感謝を伝えたかっただけ
付き合ってほしいとか
そういう話じゃないんです
大羽 圭子
大羽 圭子
ただ、阿部くんは
私の生きる意味でした……!

さわさわと優しく、風が葉っぱを揺らす音がした。


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