第4話

嫌いなアイツにだけ見える
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2026/05/18 09:00 更新
 
大羽 圭子
大羽 圭子
嘘……目が合った!?
私が嬉しそうに反応すると、
鷹宮悠馬は慌てて目を逸らした。
大羽 圭子
大羽 圭子
ねえ、今絶対に目が合ったと
思うんだけど……!
彼の机の前に立ってみると、
あからさまに視線を合わせないように机に突っ伏してしまう。
大羽 圭子
大羽 圭子
ふ〜ん、無視するんだ?
私のこと見えてないって言うなら
これでもくらえ……!

ふぅっ!と耳元に息を吹きかけると、
小さな風がアイツの髪を揺らした。
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
うわああ!
ガタン!!と慌てて飛び起きた鷹宮悠馬は、
相当動揺した様子だ。

クラス中の視線が集まり、先生もいぶかしげに眉を寄せる。
先生
なんだ鷹宮、どうかしたか?
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
どうって、そこに大羽圭子が……
先生
大羽なら今日は欠席だろ
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
なっ……それは、そうだけど
先生
居眠りして夢でも見たんじゃないか〜?
集中しろ〜
先生の言葉でクラスの女子たちは
くすくすと笑っている。

だけど今の反応ではっきりとわかった。
コイツには私の姿が見えている。
大羽 圭子
大羽 圭子
な〜んだ、やっぱり見えてるんだ
私はちょっとしたイタズラ心で、
彼の目の前で浮遊霊っぽく宙に浮いてみせた。
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
ぃぎゃっ……!!
すると声にならない悲鳴をあげ、
鷹宮悠馬は尻餅をついた。
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
すみません
俺、保健室……!
そう言ってその場から逃げるように、
慌てて教室から飛び出していってしまった。

大羽 圭子
大羽 圭子
大嫌いなアイツが
あんな怯えた顔をするなんて!
これは結構、楽しめそうだなあ……
私はその様子を見て、しめしめとニヤついてしまった。





———その夜。

 私はひとまず家に帰ってみることにした。

だけどいつも賑やかな家は、
父も母も不在でがらんとしていた。
大羽 圭子
大羽 圭子
そっか。
警察に呼ばれたり
お葬式の準備で忙しいのかな……
うちの両親のことだ、きっと娘の死を受け入れられず泣いているに違いない。
大羽 圭子
大羽 圭子
お母さん、お父さん……ごめんね


お葬式で泣く両親なんて見たくはない。

あんな風に最後を迎えるなら、
普段からもう少し親孝行しておけばよかったと
後悔が押し寄せる。
大羽 圭子
大羽 圭子
親より先に死ぬなんて、
最悪の親不孝者だ……
沈みそうな気持ちを抑え込み、
私はそれ以上深く考えずに自分の部屋で眠ることにした。

もう浮遊霊だから眠くはないけど、
私はいつものように、ベッドに横になった。
大羽 圭子
大羽 圭子
(とにかく今は、未練を断ち切るために
最善をつくさないと!)

 今日は唯一私が見える人を見つけられて、
少しほっとした。

その相手が大嫌いな、
あの鷹宮悠馬であることはとても癪だけど。

でも、あわよくばあの光輝く阿部くんに近づくため、
協力してくれるかもしれない。

そんなことを考えながら私は目を閉じた。



 しかしその後の数日間、鷹宮悠馬は頑なに私と目を合わせようとしなかった。




———学食。
大羽 圭子
大羽 圭子
ねえ、うちの学食のうどんって安いけどさ
いつも伸びてるよね?好きなの?
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
……



———屋上。
大羽 圭子
大羽 圭子
おーーい!
いい加減見えるって認めたらどう?
大羽 圭子
大羽 圭子
(というかコイツ、
また別の女子と一緒にいるし)
大羽 圭子
大羽 圭子
彼女さんですよねー?
この人、浮気してますよーー!
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
っ……!




———男子トイレ前。
大羽 圭子
大羽 圭子
流石にここまで
ついてくのはダメだよね……
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
……
大羽 圭子
大羽 圭子
あれ?トイレ行かないの?
なんで?私がついていこうとしたから?
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
……


コイツがなかなか認めないせいで、
執拗に追い回し話しかけるようになった。

その度、頑張って無視しようとしているみたいだけど
表情豊かな反応が漏れ出てしまっているのがなんとも面白い。

時には怯え、時には苛立ち、
時には泣きそうな情けない顔。

大嫌いな鷹宮悠馬をからかうのが、
いつしか毎日の楽しみになっていた。
大羽 圭子
大羽 圭子
だめだ!
このままじゃ永遠に平行線だ……
次こそは見えるってこと認めさせないと!
大羽 圭子
大羽 圭子
(いつも周りに人がいるから
ダメなのかな?)
そして、運良く放課後の誰もいない教室でアイツを発見した。
大羽 圭子
大羽 圭子
ラッキー!
今がチャンス……
じりっと近づこうとしたが、何やら様子がおかしい。
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
や、やめろ……!


真っ黒なモヤを身体に纏った幽霊らしきものが、
鷹宮悠馬に覆い被さっている。

まるで首を締めようとしているように見える。
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
うっ……く、くるしっ……
だ、誰か……!!

アイツは真っ青な顔で目に大粒の涙を溜め、
助けを求めていた。


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