私が嬉しそうに反応すると、
鷹宮悠馬は慌てて目を逸らした。
彼の机の前に立ってみると、
あからさまに視線を合わせないように机に突っ伏してしまう。
ふぅっ!と耳元に息を吹きかけると、
小さな風がアイツの髪を揺らした。
ガタン!!と慌てて飛び起きた鷹宮悠馬は、
相当動揺した様子だ。
クラス中の視線が集まり、先生も訝しげに眉を寄せる。
先生の言葉でクラスの女子たちは
くすくすと笑っている。
だけど今の反応ではっきりとわかった。
コイツには私の姿が見えている。
私はちょっとしたイタズラ心で、
彼の目の前で浮遊霊っぽく宙に浮いてみせた。
すると声にならない悲鳴をあげ、
鷹宮悠馬は尻餅をついた。
そう言ってその場から逃げるように、
慌てて教室から飛び出していってしまった。
私はその様子を見て、しめしめとニヤついてしまった。
———その夜。
私はひとまず家に帰ってみることにした。
だけどいつも賑やかな家は、
父も母も不在でがらんとしていた。
うちの両親のことだ、きっと娘の死を受け入れられず泣いているに違いない。
お葬式で泣く両親なんて見たくはない。
あんな風に最後を迎えるなら、
普段からもう少し親孝行しておけばよかったと
後悔が押し寄せる。
沈みそうな気持ちを抑え込み、
私はそれ以上深く考えずに自分の部屋で眠ることにした。
もう浮遊霊だから眠くはないけど、
私はいつものように、ベッドに横になった。
今日は唯一私が見える人を見つけられて、
少しほっとした。
その相手が大嫌いな、
あの鷹宮悠馬であることはとても癪だけど。
でも、あわよくばあの光輝く阿部くんに近づくため、
協力してくれるかもしれない。
そんなことを考えながら私は目を閉じた。
しかしその後の数日間、鷹宮悠馬は頑なに私と目を合わせようとしなかった。
———学食。
———屋上。
———男子トイレ前。
コイツがなかなか認めないせいで、
執拗に追い回し話しかけるようになった。
その度、頑張って無視しようとしているみたいだけど
表情豊かな反応が漏れ出てしまっているのがなんとも面白い。
時には怯え、時には苛立ち、
時には泣きそうな情けない顔。
大嫌いな鷹宮悠馬をからかうのが、
いつしか毎日の楽しみになっていた。
そして、運良く放課後の誰もいない教室でアイツを発見した。
じりっと近づこうとしたが、何やら様子がおかしい。
真っ黒なモヤを身体に纏った幽霊らしきものが、
鷹宮悠馬に覆い被さっている。
まるで首を締めようとしているように見える。
アイツは真っ青な顔で目に大粒の涙を溜め、
助けを求めていた。
















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。