俺が3歳になった頃、弟の斗真が生まれた。
弟は生まれつき身体が弱く、両親は弟の病院通いにつきっきりで、俺は小さくてもお兄ちゃんだからと、
ひとりぼっちになることが多かった。
そう言って母は振り返りもせず家を出て行った。
広くて大きな家で一人で過ごすことが、
子どもの俺にとってはとても孤独だった。
だから俺は留守番の度に、
近所の公園に行くようになった。
そしてある日、とある怪しげなおじさんに出会った。
おじさんは笑顔でそう言って、
俺にうさぎのぬいぐるみをくれた。
なんだか女の子が持ちそうな
可愛らしいふわふわの見た目だ。
返そうとしたら、
もうおじさんの姿はそこにはなかった。
突然、ぬいぐるみから声が聞こえたような気がした。
まさかぬいぐるみと会話できるとは
思ってもみなかった。
その日を境に、ぬいぐるみが俺の話し相手に
なってくれたのだ。
今思えば不思議な出来事だったと思う。
だけどその頃は少しも怖いと思わなかった。
だって、俺にできた初めての友達だったから。
毎晩一緒に寝た。
たとえ変な子だとからかわれても、
小学校にだって連れていくようになった。
ぬいぐるみさえ側にいれば、
家族から愛されない孤独を少しは和らげることができたから。
しかし中学に進学した頃、とても大事にしていた
ぬいぐるみを母親に捨てられてしまったのだ。
落胆したのも束の間、捨てたはずのぬいぐるみが、
なんと家に帰ってきたのだ。
玄関を開けると、まるで自分で歩いて
帰ってきたかのように足を真っ黒にして座っていた。
ぬいぐるみは、まっすぐ俺を見てそう言った。
だけど俺の両親は、
そんなぬいぐるみを心底不気味がった。
両親に反抗したのは、この時が初めてだった。
ずっと我慢してきた弟へのえこ贔屓も、
ひとりぼっちだった寂しさもこの時一気に爆発した。
だが俺の抵抗も虚しく、
ぬいぐるみは神社のお焚き上げで焼かれてしまった。
それ以来、家に様々な不幸が押し寄せてきた。
俺は幽霊が見えるようになり、悪霊に狙われるようになったのだ。
そして家族には不幸が降りかかり、ただでさえ病弱だった弟の病もみるみる悪化していった。
両親は当然のように俺を責めた。
俺が全ての元凶だと言った。
そして言い争うことさえ諦めた俺は、
進学とともに家を出ることを決めた。
わざとおちゃらけてみるも、大羽圭子も霊媒師のばあさんもなんだか暗い顔をしていた。
突然、大羽圭子がとんでもないことを言い始めた。
いや、そういう意味じゃなく。
俺はあの両親に会いたくないんだけど……。
大羽圭子が真剣な顔でそう言った。
このアホ面の守護霊が着いてきてくれるなら、
実家に帰っても大丈夫な気がした。

















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。