第19話

オバケが見えるきっかけは… side:悠馬
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2026/08/31 09:00 更新
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
あれはまだ、物心がついてないくらい
幼い頃のことなんだけど……
 俺が3歳になった頃、弟の斗真が生まれた。

弟は生まれつき身体が弱く、両親は弟の病院通いにつきっきりで、俺は小さくてもお兄ちゃんだからと、
ひとりぼっちになることが多かった。

母親
ちょっと斗真の病院に行ってくるから
お留守番お願いね
鷹宮 悠馬
一緒に行っちゃだめ?
母親
はぁ……
あんたがついて来ると面倒なのよ
斗真が泣くから。
今日は早く帰ってくるわね

そう言って母は振り返りもせず家を出て行った。

広くて大きな家で一人で過ごすことが、
子どもの俺にとってはとても孤独だった。

だから俺は留守番の度に、
近所の公園に行くようになった。

そしてある日、とある怪しげなおじさんに出会った。

おじさん
キミ、いつも一人でいるけど
友達いないのかい?
鷹宮 悠馬
……うん
おじさん
お父さんとお母さんは?
鷹宮 悠馬
……いない
弟のところ
おじさん
そうか。
なら、とっておきの
友達をあげよう

おじさんは笑顔でそう言って、
俺にうさぎのぬいぐるみをくれた。

なんだか女の子が持ちそうな
可愛らしいふわふわの見た目だ。

鷹宮 悠馬
やっぱり、いらな……
あれ?おじさん?

返そうとしたら、
もうおじさんの姿はそこにはなかった。

ぬいぐるみ
ぬいぐるみ
おともだちに
なってくれないの?
鷹宮 悠馬
え?

突然、ぬいぐるみから声が聞こえたような気がした。

鷹宮 悠馬
今、しゃべった?
ぬいぐるみ
ぬいぐるみ
ワタシの声が聞こえるの?
鷹宮 悠馬
うん!
聞こえる、聞こえるよ!
ぬいぐるみ
ぬいぐるみ
ひとりぼっちは寂しいよね
でも、ワタシが一緒にいれば
寂しくないよね?
鷹宮 悠馬
……うん!

まさかぬいぐるみと会話できるとは
思ってもみなかった。

その日を境に、ぬいぐるみが俺の話し相手に
なってくれたのだ。

今思えば不思議な出来事だったと思う。
だけどその頃は少しも怖いと思わなかった。

だって、俺にできた初めての友達だったから。

毎晩一緒に寝た。

たとえ変な子だとからかわれても、
小学校にだって連れていくようになった。

ぬいぐるみさえ側にいれば、
家族から愛されない孤独を少しは和らげることができたから。




 しかし中学に進学した頃、とても大事にしていた
ぬいぐるみを母親に捨てられてしまったのだ。

母親
もう大人なんだから
あんなの必要ないでしょ?
鷹宮 悠馬
でも…大事にしてたんだ!
一言くらい何か言ってくれたって…
母親
ゴミ収集車に
回収されちゃったわよ?
もう諦めなさい

落胆したのも束の間、捨てたはずのぬいぐるみが、
なんと家に帰ってきたのだ。

玄関を開けると、まるで自分で歩いて
帰ってきたかのように足を真っ黒にして座っていた。

鷹宮 悠馬
帰ってきてくれたの!?
ぬいぐるみ
ぬいぐるみ
当たり前でしょ?
ワタシは悠馬の友達だもん

ぬいぐるみは、まっすぐ俺を見てそう言った。

だけど俺の両親は、
そんなぬいぐるみを心底不気味がった。

母親
捨てても捨てても帰ってくるなんて、
呪われてるんじゃないの!?
父親
近くの神社で
お焚き上げしてきたらどうだ?
鷹宮 悠馬
触るなよ!
これは俺のぬいぐるみだろ!
勝手に捨てるなんてどうかしてんだろ!
父親
親に向かって
なんだその口のきき方は!
貸せ、俺が捨ててきてやる!

両親に反抗したのは、この時が初めてだった。

ずっと我慢してきた弟へのえこ贔屓も、
ひとりぼっちだった寂しさもこの時一気に爆発した。

だが俺の抵抗も虚しく、
ぬいぐるみは神社のお焚き上げで焼かれてしまった。



 それ以来、家に様々な不幸が押し寄せてきた。

俺は幽霊が見えるようになり、悪霊に狙われるようになったのだ。

そして家族には不幸が降りかかり、ただでさえ病弱だった弟の病もみるみる悪化していった。

母親
悠馬のせいよ!
あなたが家にいるから
斗真がこんなにも苦しんで……!
父親
高校に進学したらこの家を出ていけ
そうすれば斗真の病気だって
少しは……

両親は当然のように俺を責めた。
俺が全ての元凶だと言った。

そして言い争うことさえ諦めた俺は、
進学とともに家を出ることを決めた。



鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
ってなわけで
俺は今ここにいるってこと!
案外壮絶な人生だろ?

わざとおちゃらけてみるも、大羽圭子も霊媒師のばあさんもなんだか暗い顔をしていた。

シゲさん
シゲさん
きっかけは大体わかったよ
呪いの原因はそのぬいぐるみだね
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
神社でお焚き上げしたけど
それじゃ意味なかったのか?
シゲさん
シゲさん
きっとまだそのぬいぐるみは
焼かれてないんだよ。
稀に呪力が強いものは、
火で焼いても燃えないことが
あるからね
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
え……まじかよ
大羽 圭子
大羽 圭子
よし!
じゃあ、みんなで実家へ行こう!

突然、大羽圭子がとんでもないことを言い始めた。

鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
嫌だ……俺は行きたくない!
大羽 圭子
大羽 圭子
私たちがついてるから
大丈夫だよ
何かあったら守ってあげるし!

いや、そういう意味じゃなく。
俺はあの両親に会いたくないんだけど……。
シゲさん
シゲさん
兄ちゃんのその呪い
ワシが解いてやるさ!
そうすれば、厄介な悪霊からは
もう逃げなくてもいいんだよ
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
でも……
大羽 圭子
大羽 圭子
大丈夫。
お父さんとお母さんが
何か言ってきても
私が守ってあげるよ
大羽 圭子
大羽 圭子
だって守護霊だから!

大羽圭子が真剣な顔でそう言った。

鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
守るってそっち?
大羽 圭子
大羽 圭子
あ、そっか
もちろん悪霊からもね!
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
……あ〜〜!
ったく、わかったよ
このアホ面の守護霊が着いてきてくれるなら、
実家に帰っても大丈夫な気がした。


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