目を開けると、いかにも疲れていそうな
スーツ姿の男が立っていた。
いや、宙に浮いていたという方が正しいか。
おまけに私も宙に浮いていた。
男は淡々とそう告げ、自分を死神と名乗った。
思考が現実に追いついてこなかった。
自分が死んだなんてこと、信じたくないから。
だけど男の背中には大きな黒い翼が生えており、
彼がこの世の者ではないことを証明している。
そして、ちらりと下を見てみると
凄惨な事故現場が広がっていた。
運転席のトラック運転手は、
フロントガラスに頭を打ちつけたまま動かない。
そして轢かれたであろう私の身体も、
血を流して道路に倒れていた。
淡々とした事務的な返答は、
まるでさっさと仕事を終わらせたがっている
社畜のようだった。
だけどそれが妙にリアルで、
やっと現実味がおびてきた。
死神さんは、気だるそうに言う。
死神さんからは、
ぼやきのようなものが聞こえてくる。
私の心にあるのは、
阿部くんへの伝えられなかった想いだけ。
正直なところ「推し活」なんて言い訳して、
告白から逃げていただけだった。
でも死神さんが言っていたタイムリミットは49日。
まだまだ時間はあるし、
最後にどんな形でも阿部くんに想いを伝えなきゃ。
ふと、「ピリリ…」と着信音が鳴り響く。
どうやら死神さんが持っている、スマホのような端末から鳴っているようだ。
死神さんは、電話越しの相手にぶつくさと小言を言いながら、大きな翼で飛び立っていってしまった。
私はその場にポツンと取り残されてしまった。















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!