第2話

死ぬ前に告白しておけばよかったな
1,357
2026/05/04 09:00 更新
 目を開けると、いかにも疲れていそうな
スーツ姿の男が立っていた。

いや、宙に浮いていたという方が正しいか。
おまけに私も宙に浮いていた。
死神さん
死神さん
残念ですが、あなたは死にました
今すぐ天界へとお連れします
大羽 圭子
大羽 圭子
……はい?今なんて?
男は淡々とそう告げ、自分を死神と名乗った。
大羽 圭子
大羽 圭子
ま、まさかぁ〜!
死神なんているわけないじゃないですか!


思考が現実に追いついてこなかった。
自分が死んだなんてこと、信じたくないから。

だけど男の背中には大きな黒い翼が生えており、
彼がこの世の者ではないことを証明している。


 そして、ちらりと下を見てみると
凄惨な事故現場が広がっていた。

運転席のトラック運転手は、
フロントガラスに頭を打ちつけたまま動かない。

そしてかれたであろう私の身体も、
血を流して道路に倒れていた。
大羽 圭子
大羽 圭子
……あ、あれって私ですか?
死神さん
死神さん
はい
大羽 圭子
大羽 圭子
あはは……
これは夢かなにかですか?
ただの悪夢ですよね?
死神さん
死神さん
いえ、まぎれもなく現実です

淡々とした事務的な返答は、
まるでさっさと仕事を終わらせたがっている
社畜のようだった。

だけどそれが妙にリアルで、
やっと現実味がおびてきた。
大羽 圭子
大羽 圭子
本当に死んじゃったんですね
でも私まだやり残したことが……
死神さん
死神さん
あ〜〜
もしかして未練がある感じですか?
困るんですよね、最近多くて
死神さんは、気だるそうに言う。
死神さん
死神さん
未練のある魂は49日間、
天界に連れていけない規約でして
死神さん
死神さん
……正直、面倒なんですよ
大羽 圭子
大羽 圭子
規約?
そんなのあるんですか?
死神さん
死神さん
ええ、お迎えが
二度手間になるじゃないですか
だから我々死神の仕事が増えるし、
ただでさえ人手不足だっていうのに……
死神さんからは、
ぼやきのようなものが聞こえてくる。
死神さん
死神さん
とにかく49日後に迎えにきますので
それまでは浮遊霊として
生前の未練を断ち切ってください
大羽 圭子
大羽 圭子
未練かぁ……
 私の心にあるのは、
阿部くんへの伝えられなかった想いだけ。
大羽 圭子
大羽 圭子
(こんなことになるなら、
死ぬ前に告白しておけばよかったな……)
正直なところ「推し活」なんて言い訳して、
告白から逃げていただけだった。

でも死神さんが言っていたタイムリミットは49日。

まだまだ時間はあるし、
最後にどんな形でも阿部くんに想いを伝えなきゃ。

大羽 圭子
大羽 圭子
あれ?
でも私って今、浮遊霊だよね?
こんな姿でどうやって未練を
断ち切れば……

ふと、「ピリリ…」と着信音が鳴り響く。

どうやら死神さんが持っている、スマホのような端末から鳴っているようだ。
死神さん
死神さん
天界から魂が脱走した!?
それは死神業務の
管轄外じゃないですか?
死神さん
死神さん
まったく、わかりましたよ
これじゃ今日も残業確定じゃないですか!
残業代は出るんでしょうね?

死神さんは、電話越しの相手にぶつくさと小言を言いながら、大きな翼で飛び立っていってしまった。

大羽 圭子
大羽 圭子
ちょっと待って!
私これからどうすればいいのーー!?


私はその場にポツンと取り残されてしまった。



プリ小説オーディオドラマ