第7話

カルい男でいる理由
1,185
2026/06/08 09:00 更新

 鷹宮悠馬から離れられなくなってしまった私は、
仕方なくコイツの住む家にお邪魔することになってしまった。

学校からすぐ近くのアパートに一人暮らししていて、
合鍵はいくつもあり、誰でも出入り自由な場所らしい。

鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
いつ女の子が来てもいいように
鍵は配ってんだよ
大羽 圭子
大羽 圭子
はぁ……
私はどうしてこんなヘラヘラした
女タラシの守護霊なんかに……
大羽 圭子
大羽 圭子
それも5メートル以上離れられないとか
何かの拷問?ここが地獄ですか?
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
おい、全部聞こえてるぞ

 アパートにつくと、こぢんまりとした
小さな6畳ワンルームが広がっていた。

生活感がありながらも、
しっかりと整理整頓された部屋だ。
大羽 圭子
大羽 圭子
へぇ、思ってたよりも綺麗だね……
彼女さんたちが掃除とかしてくれるの?
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
ちげーよ
家事は全部俺がやってるし
で、何か食う?
大羽 圭子
大羽 圭子
料理もできるの!?
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
出来なかったら
一人暮らしなんてしてねーよ
そう言いながら手際よく冷蔵庫の中身を確認している。

ひょいと後ろから覗いてみると、
いくつもの惣菜がタッパーに詰められ、
きれいに並んでいる。
大羽 圭子
大羽 圭子
(すごい……こういうところが
女子にモテるのか?)
思わず感心してしまい、慌てて話題を戻す。
大羽 圭子
大羽 圭子
私はご飯食べなくても大丈夫だよ
この身体になってからは
お腹がすかないんだよね
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
それもそうか
金かからなくて便利だな
カレンダーにはびっしりとバイトの予定らしきものが書き込まれていた。

てっきり親から仕送りをもらっていると思ったが、
もしかして家賃や生活費を自分でなんとかしているんだろうか。

そう考えると、一気に私よりも大人びて見えた。

大羽 圭子
大羽 圭子
バイトいっぱい入れてるんだね
土日なんて深夜まで入ってるし
帰宅部っぽかったから、
毎日女子と遊んでるのかと思ってた
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
言い過ぎだろ
俺のことそんな奴だと思ってたわけ?
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
ま、バイト以外は女の子と遊んでるけどねっ☆
フライパンを器用に捌きながら、
ウインクを飛ばしてくる。

なんだ、やっぱりいけすかない。

鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
けど本音はさ……
誰かと一緒にいないと怖いんだ
深夜バイトも、一人で寝るよりかは
誰かと働いてた方がまだマシだし
ああ、そうか。
なんだかわかった気がする。

この男はオバケの類が寄ってくる奇妙な体質と付き合いながら、臆病で怖がりな性格を必死に隠してきたんだ。

そのために、一人になる時間を少しでも減らそうと、
今のようにカルい女たらしになったのかもしれない。

大羽 圭子
大羽 圭子
(私、ちょっと誤解してたかも………)
一面だけを見て、人となりを判断するなんて、なんて馬鹿だったんだろう。


———ピンポーン。

アパートのチャイムが鳴り、鷹宮悠馬は返事をしながら玄関へと向かった。

ドアを開けるとそこには、いかにもチャラついてそうな派手めの女が立っていた。
派手な女
やほー
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
あ、今日だっけ?
チラリと私を一瞥した鷹宮悠馬は、少し考えた後、
派手な女を追い返した。
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
わり。
今日から1ヶ月ちょいは一人で寝れるから
必要になったらまた呼ぶわ
派手な女
え〜そんなぁ〜〜
久しぶりに悠馬に会えたのにぃ〜〜
まあいっか。別の男んとこ行くわ
派手な女は案外あっさりと帰っていった。
大羽 圭子
大羽 圭子
やっぱり、ただれた関係……
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
なんだよその汚物を見るような目は!
あの子は添い寝担当だよ
別に隣で寝てくれてただけだって
大羽 圭子
大羽 圭子
(添い寝担当?
じゃあ別の担当もあるってこと……?)
私はそれ以上考えるのをやめた。
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
それに、しばらくはあんたが
守ってくれるんだろ?
だから今断ったんだからな
なぜかぶっきらぼうにそう言って、目を逸らした。

 それから時間が経ち、夜も深まってきた頃、
私は守護霊がどれほど過重労働なのかを思い知ることになる。

鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
風呂は脱衣所までついてくんなよ
大羽 圭子
大羽 圭子
はいはい
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
やっぱそこにいて!
シャンプー中だけは見守ってて!
大羽 圭子
大羽 圭子
はいはい
まるでわがままな子どものように、
遠慮のない要求に疲れてきた。

なんでも、排水口から悪霊が顔を出したこともあるそうで、それが怖いのだと言う。

大羽 圭子
大羽 圭子
ちゃんと見守ってるから
さっさと洗ってください
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
あ!じろじろ見んなよ!?
俺の身体はタダじゃないんだからさ
大羽 圭子
大羽 圭子
はいはい
見てろと言ったり、見るなと言ったり、
本当にどっちなんだ。

見るなと言われても、
これだけ近くにいたら自然と目に入ってくるものだ。

無駄に引き締まった身体もモテる秘訣なんだろうか。


 そしてしっかり1時間かけて長風呂を堪能した鷹宮悠馬は、満足そうにベッドに横になった。

大羽 圭子
大羽 圭子
では、失礼して
と、そっと横になり添い寝の体勢をとる。
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
な、なにしてんだよ!ばか!
あんたは幽霊なんだから浮いて寝てろ!
大羽 圭子
大羽 圭子
え?でも、私がいるからって
添い寝担当を追い返したんじゃ……?
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
そ、それとこれとは別だよ!!
なぜか顔を真っ赤にして拒絶された。
もしかして、添い寝の権利があるのは美人しか許されないのだろうか。

だとしたらとても失礼なやつだ。
大羽 圭子
大羽 圭子
まあ、そもそも
オバケは寝なくても大丈夫なので

ふわふわと浮遊しながら、
鷹宮悠馬の寝顔をじっと見守る。

少し彫の深い整った顔、
それに私よりも長いまつ毛になんだか腹が立ってきた。
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
(くそ……視線が気になって寝れね〜〜
てか、なんで心臓ドキドキいってんだ?)
大羽 圭子
大羽 圭子
(コイツなかなか寝ないなぁ
もしかして……そんなにオバケが怖いの?
可哀想に……)

鷹宮悠馬が眠りについたのは、
それから3時間も後だった。

プリ小説オーディオドラマ